第一章 転入生

聖ブリジッタ女子学園山陽校


 二〇〇一年四月六日の金曜日、山陽のある県庁所在地に校舎を構える、聖ブリジッタ女子学園山陽校の正門前に、一台のタクシーが止まりました。


 入学式の三日前の昼下がり、早春のやわらかい日差しの中、眩いばかりの美少女三人が降りて来たのです。


 部活に出てきていた少数の女生徒は、視線が釘付けになってしまいました。

 三人は人間離れした美しさで、特に年上の二人は威厳の様な物も漂わせています。


 聖ブリジッタ女子学園山陽校の制服を着ているので、生徒とは思われますが、誰一人として知らない少女達です。


 三人は事務室に入っていき、そのまま事務員に案内され校長室へ入っていきます。

 しばらくして三人の女教師が呼ばれ、さらにしばらくすると、三人の美少女は帰って行きました。


 今度は会議室に校長と教頭、三名の女教師、事務長、そして東京から来ていた学園長が集まっています。


「本当にこの成績なのですか?」

「間違いないとのことです」

「三名とも全科目満点ですか……」

「しかも三名とも五分ぐらいで解答し、一度も書き換えなかったようです」


「天才姉妹……しかも危険なぐらいの美しさ……転入を認めるのですか?」

「転入試験を満点とった以上、拒絶は出来ないでしょう」


 学園長が、

「吉川三姉妹の在籍は一年です、一年経てばアメリカへ行くそうです」


「こんなことを言うと不謹慎かも知れませんが、ご両親から絶大なご寄付をいただいています」

「多少のことは目をつぶるつもりでしたが、何処にもアラがありません」


「特に高校生の二人は尋常で無いのは、本人たちに会ったのでお分かりでしょう、しかも運動も万能だそうです」

「お母様のいわれるには、すこし変わり者とのことでした」


「あれだけ美しいと、生徒たちに悪い影響がおこりませんか?」

「しかし美貌を理由に転入拒否はできません」


「十日よりの転校を要請していますので、九日の入学式の後、クラスメートになる生徒たちに、よくいっていたほうがいいと思います」

「そうですね、それとなく伝えておきましょう、転入試験満点の件ぐらいは、言っておかなくては」


 入学式当日、それぞれの担任の授業で、

「そう言えば皆さん、明日、転校生が来られます、仲良くしてあげてくださいね」


「先生、その方って六日に来られていた三人の方ですか?」

「信じられないほど綺麗だったらその方でしょう、三姉妹だそうです」


「あまり似てなかったわね……」

「お母さんが違うとか……」

「聞けないわよね……先生、どうなのですか?」


「プライバシーについてはしゃべれません、でも一つだけ言っておきますが、三名とも転入試験は満点だったそうですよ」

「えぇぇぇぇ!」


 それぞれのクラスで、此の様な会話が繰り広げられたようですね。


 そして、いよいよ転校の日、朝から聖ブリジッタ女子学園山陽校は、なんとなくそわそわした雰囲気が覆っていました。

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