短編ホラー「白光」

棗りかこ

短編ホラー「白光」(1話完結)


その光に包まれて、人は死んでいく…。

祖母の言っていた光の正体を、ミステリーハンターの伊尾季は、追い続けていた。


臨死体験者へのインタビュー。

今日も、インタビューの帰りだった。


すーっと、白い光が、右横を過ぎった。あっ、と、伊尾季は、これが、その光かと、思った。

だが、その光は、すばやく、伊尾季の傍を通り過ぎて、いく。

インタビューの効果かと、伊尾季は、意を強くした。


「白い光に包まれたんです。」老女は言った。


そこで、ここで、死ぬと、思った時に、家族の声が聞こえて、その光が消えた途端に、気を失っていたのだと、老女は、話した。


その帰り。 すーっと、白い光が、左横を過ぎった。


だが、白い光は、伊尾季を包もうとはしなかった。

何だろう?このノスタルジックなまでの、自分のこだわりは…。


自分を可愛がってくれた祖母。祖母が召される時も、白い光に包まれたのか。


伊尾季が、ふと何かの気配を感じて、振り返ると、今度は、白い光が、伊尾季の後を、すっと、過ぎった。

お祖母ちゃんかな…。自分に会いに来たのかとも、考えた。

不思議と、そう考えると、白い光への、恐怖はなかった。


今日も、祖母の気配を感じる…。伊尾季は、今日も、あの白い光を見るだろうと、確信していた。


ミステリーハンターとしての、仕事は、順調だった。

数々の、不思議に立ち会ってきた。

伊尾季の記事は、ミステリー雑誌「オー」の、花形記事ともなっていた。


また、頼むよ、と、電話で言われ、次は、臨死体験をレポート中なので、と、答える。

面白いね、と、電話口の声は、答えた。


だが、一向に、白い光は、過ぎるだけで、伊尾季に、近づいては来ない。

平凡なインタビュー記事になることは、伊尾季は、我慢できなかった。


白い光…。白い光…。 伊尾季は、念じ続けた。


お祖母ちゃん、よろしく頼むよ…。 伊尾季が、そう念じた時、また、白い光が現れた。

今度は、前方に、光っている。 今だ!伊尾季は、その光の中へ飛び込んでいった…。




ホームは、人が特急電車に飛び込んだと、大騒ぎになった。


ミステリーハンター伊尾季の、悲惨な死は、「オー」で、報道され、一か月後、雑誌葬が、ファンを交えて行われた。


その帰り道。ファンが、目を凝らすと、白い光が、過ぎっている。


何だろう…?


ファン達が、その正体を知ることは、なかった…。




-完-

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短編ホラー「白光」 棗りかこ @natumerikako

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