第7話 俺と推察と年上カノジョ
「翔、出て行きましたね」
「だな。
で、コウキ。お前なんで塾とか嘘ついてんだ?
今どきそんなの小学生の断り文句だぞ?」
やっぱり、あっさり見破られている。
この人はなんというかすごい大人の人だと思った。
「言葉濁してましたけど・・・もう大体翔の告白の実情は掴んでるでしょ?」
「まぁな。聞いてどうする?」
「もちろん翔が傷つかない方に誘導しますよ?」
「まぁ確かにお前ならやれんだろうが・・・正直、どうするか悩んでる」
と言うのも。
源朱里という人物は現在男子に嫌気がさしているらしい。
勝手に写真や動画がとられたりして困って居たり、
告白されて付きまとわれてみたり、
電車で痴漢に遭っていたり、まぁ結構酷い目に会っている感じで
そろそろ本人的にノイローゼになりそうな時だったらしい。
どうも、いつもと違う恰好をしていたらしく、
さらには女子高生が米袋持って項垂れていた。
そこに助けるために現れたのが翔である。
そこで、彼女は意識し始める。
同じクラスの人だということで3か月かけて見続けて
偽装の恋人となってもらおうとあの告白になったらしい。
「相変わらず可笑しい精度の情報っすね」
「情報化社会ってやつは楽でいいな。
セキュリティなんてもんがあるが結局それを破るのは人間だ。
本人がパスをばらすフィッシングに、
覚書でそこかしこに保存してりゃせわねーよ?」
「簡単にそんな事ができるのがすごいんすけどね」
まぁ他の『アスガミ』のメンツが協力しているのだろうけど。
ただ、今回それを言わずに言葉を濁したという事は何か考えがあるということだ。
「で、引っかかてるのは何なんっすか?」
「それんだがよぉ。偽装って言ってるが、ひょっとするんじゃねーかとおもってよ」
「ああ、分かったすよ。で、翔に偽装彼女を作らせリハビリすると?」
「そうも、思ったんだが・・・これマジに惚れられてんじゃねーかとも思うんだよ」
さすがに人の心の中までは情報つかめねーけどよ。
と言っていた。
「逆に翔が彼女を好きになって付き合えばいいと考えてるんすね?」
「そう言う事だ。今の翔のやつ恋愛恐怖症だからなぁ。
否定からはいんだよ。どうにかしてぇとこだったからちょうどいいかと思ってよ」
「それに関しちゃ俺にも責任の一端はあるっすからね。協力しますよ」
「別にコウキのせいじゃねぇよ。まぁ心が純粋過ぎたんだよな。
だからこんなバカな事やってあいつのやられた事が
まぁどこにでもあるような些細な事だと思わせたかったってのもあるな」
「毒を猛毒でって感じっすね。荒療治もここまでくると笑えないっすけど」
「わかってんだよ。だからよぉ。今回の件が良い方にこばねーかと思ってなぁ」
「人の心はさすがに操れないっすけど、
そういう方向に持っていく事はでそうっすね。
ちょっと様子見ながら検討しますよ」
そう言って翔の叔父さん家を後にした。
そのままスマホでセフレの一人である真美の所に電話を入れる。
数コールすると女性の声が帰ってきた。
「真美さん?今電話大丈夫?」
「今家だから大丈夫よ。電話してくるって事は家来るの?」
「うん、ご飯とかいいっすかね?
実は親友に塾行くって嘘ついちゃって。
行くとこ無いんすよ」
「ふふふっ。塾って言って私の家で何をお勉強する気かしらね?」
19歳の社会人である真美さんはまぁ俺から見ても大人の女性に見えた。
少しくらいアドバイスを貰ってみようかと思っている。
あれ以来同学年の女と付き合う事を辞めたのだ。
だからと言って女が要らない訳じゃなかったので大人をナンパしてて捕まえた一人。
割り切った付き合いであり、ある程度は気心が知れていた。
家は学校の最寄り駅から田舎に二駅ほど離れた所にあるアパートだ。
駅に下りて連絡を取り家へと招き入れられた。
既に18時過ぎていたが、帰宅間もなくと言った感じで迎えてくれた。
ひと段落して俺はちょっと聞いてみたくなった。
「真美さんさ。男に惚れる時ってどんな時?」
「どんな時って、そうねぇ。
まぁ、男らしい所見せられたりとか、
言葉で愛を語られたりとか?
こう大事にされてる~って感じるときとかかな?」
正直、曖昧過ぎてわかるような解らないような感じだ。
「言い方が悪かったかなぁ
俺が知りたいのは惚れるっていうか恋愛するきっかけみたいなヤツね?」
「うーん、どうだろう。
ある程度良いかなと思えばデートするし、
告白されて別に好きじゃなくてもオーケーする事もあるし、
何となく、雰囲気に流されてこんな男と今いるし?」
こんな男とは失礼な。
まぁ実際俺はロクデナシなのは間違いない。
家族とそりが合わずに今も逃げて真美さん家に居る。
帰るのは家族に顔を合わせる事もない深夜だ。
家を出るのも無言で出てくる。ただ眠るだけの家だ。
そんな拗ねた詰まんないやつを相手する理由もこの辺りなんだろう。
だけど。
「わっかんねー」
「まぁ感覚の違いじゃないかなぁ。
女ってさこうフィーリング重視なとこあるのよ」
そう言われるともう何も参考にならない。
仕方ないので別口から切り込んでみる。
「じゃぁさぁ、真美さんって告ったことあるの?」
「告った事はないよ。告られる方だからw」
そう言う事じゃなかったが・・・。
まぁ美人OLさんを地で行ってる人だから事実だろう。
「マジ参考になんねぇ~」
「何それ?聞いといてソレ?告白でもすんの?
純愛に目覚めたとかいっちゃたりするの?」
何やらニヤニヤしだして俺が告白するとでも?
今更純愛なんてもんに興味があるとでも?
イイカンジに俺も壊れてんだけどなぁ。
「全然ちがつうーの。
なんつーか、親友がなぁどうも告られたんだけどね。
たださ、ほんとに付き合うつもりはないらしくって。
その娘、偽の恋人を作ろうってしてるらしい」
「いや、それフツーに酷い女ね」
まぁ、ここだけ見ればそうなんだろう。
そんな話をしながら食事の用意が整っていく。
1Kの狭いアパート暮らしの彼女は実は料理が上手い。
事前に連絡しておく必要はあるし、材料代は毎月入れているので
今日のような場合によく使っていた。
「まぁそうなんだけど。そうさせた切っ掛けが解らないって事。
わざわざ俺の親友を何で選ぶわけ?
クラスメイトの3か月間特別何かあった訳でもないっぽいしさ」
そして今日はとんかつらしい。
自分でも胃袋掴まれかけているのは分かっているが、
あくまでドライな関係。
「うーん、告った本人に聞けばいいんじゃない?
それか告られた親友君がまあイケメンだったとかじゃないの?
見た事ないから判断難しいわね」
コウキの親友だしイケメンなのよ。と言う。
個人的にあまりイケメンでは無いと思っている。
仕方ないので、スマホにある写真を見せた。
ついでに相手の源さんも見せてみる。
「騙しやすそうっていうか騙されそうって言うかコウキの言ってる意味が分かったわ」
「だろ?絶対なんかあるよな?」
「こんな美少女がネクラそうな男子に告白とかするなんて・・・
まぁ単純に考えればその親友のコウキ狙いよね?」
まぁ、よくある話で付き合った相手の友達が好きになりました~
っていうお花畑な頭脳の持ち主だったらあり得る話だ。
ただ、それなら俺に何らかのアプローチがあってもおかしくはない。
「そんなわけで・・・。
もしかして本当は好きなんじゃないかと思ったわけだけど、
その切っ掛けが解らないんだよ」
「だったら話は早いわよ。
まぁこの男の子を好きになるにはまず外見ではありえないわ。
中身ね。
お人よしとか、頼まれたら断れない人なんじゃない?
そう言うのを見越しての彼氏役の候補と考えるとつじつまが合うんじゃない?
つまりその娘は彼氏が居ないと困る状況なのよ」
ご飯を食べ終わる頃には何となくそう言う方向で結論が付いた。
そう言う意味ではこちらもある程度近くで観察する必要がありそうだ。
風呂上がりの彼女は最後に「今日は泊ってくの?」とうるんだ瞳で聞いてきた。
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