第2話 告白された。だが断る!

「ねぇ。橋場くん私とお付き合いしない?」


放課後の教室で帰り支度をした後席を立つと言われたのだ。

周りは騒然としていた。

そう言った言葉を何度か受けた事はあった。

中学のはじめくらいまでは外見に気を配り、

女子にモテたい普通の男だったからだでも。


「唐突だね。お断りするよ」


僕は告白してきた彼女、源 朱里(みなもと あかり)に対して

クラスメイト以外の何の感情も持ち合わせていない。

目の前の女子が学年トップレベルの容姿を持つ美人でも

3か月そこらでその人の事が解る物ではない。

大抵は外見から入る物だ。

僕の叔父さんは言っていた。

「外見に良い女に男はあっさり騙されるもんだ」と「まぁ俺も騙されるんだが」

「多少は裏切っても誤れば許されると思ってる」と「まぁ許しちゃうんだがかな」

「だからまずは最低3回は断れ」

叔父さんは僕に色々と教えてくれるが一族からは疎まれている。

話では高校時代に1か月行方不明になり、

帰ってくるなり暴力を振るうようになって高校退学。

それからは親とはなれて喧嘩屋みたいな商売をしていたらしい。

だけど、この叔父がものすごく強いのだ。

子供ながらに憧れそれだけで僕は懐いてしまい、

叔父さんの教えを受けて今では喧嘩無双できるレベルになった。

可笑しな叔父さんは今年で28歳だそうで一人暮らしをしている。

まぁそんな叔父さんの教えだ。

「え?断るの?」「マジかよ!」等の外野の声が聞こえる。


「そう、私は振られたって事?」


「まぁ、そうだね。

 よく知りもしない人を好きにならないし、

 僕にそう言ったアプローチは無かったよね?」


そう言うと彼女は黙った。

実際、クラスメイトとしてしか認識していないであろうと言う事と、

俺のイケメン親友が目的なのだろうと思ったからだ。

間を取り持ちそのうち俺を切るつもりだと簡単に推測できた。


「わかったわ、今日はこのまま引き下がるけど

 できればこれから友達になってほしいの」


「友達なら構わないよ。僕みたいな地味で面白みもない人間でよければね」


そう言うと僕は席を立って教室をでた。

待ち合わせていないのに教室に来ていた親友の遠海 幸喜(とおみ こうき)が


「さっすが、モテモテじゃないか?」


「茶化すな、どうせお前目当てだよ」


「そうか?まぁいいか、

 今日は超美人振った記念になんか食ってかえろうぜ?」


それに了承する地味眼鏡の僕。

このイケメンはとあるきっかけで仲良くなった。

現在は彼女がおらず、フリーだと認識されており、

告白されまくっているらしいが断っているらしい。

断り文句が「大抵は好きな人がいるから」と言っているらしい。

その「好きな人」が自分かもと思ったやつが告白突撃してくるらしかった。


帰りに買い食いしつつ親友と叔父さんの家へと向かう。


「おい、お前ら毎日俺んちきてんじゃねーよ」


「今回の相談は翔っすよ?別にいいじゃないっすか?」


「なんだ?あっちの依頼が入ったんじゃねーの?」


「実は今日、超美人告白されたんだけど、・・・断った。

 叔父さんが3回断れと言うから」


「あん?好みのタイプじゃなかったのか?」


煙草を吸いながらPCをいじっている。

どうも以前の『依頼』の動画をアップするために編集しているようだ。

一体どうやって録画しているのかさっぱりわからないが。


「好みかどうかなんてもうわかんないって

 ただ、綺麗な子だなとはおもったけどさ」


「かあー!おめーもよぉ、そろそろ童貞捨ててもいいんじゃね?

 アンだけやれんだから、美人局来ても逆にボコれんだろ?」


「あーそれはわかるっすね。童貞臭ハンパないっすもん翔は」


「おい、コウキ!なんて事言うんだお前は!

 てか匂ってんの?僕そんな匂いしてる?」


「例えばの話だよ。

 まあ腐ってヤリまくってた俺がいうのもなんだが、

 もうちょっと男になろうぜ?」


「いや、まぁさすがに甥っ子を不良にしちまったら兄さんにぶっ飛ばされかねん。

 ここに来るのもやめるように言われてんだし」


「で、どうするっすか?

 今回の『依頼』はまだ告ってきたくらいだけど、

 相手がちょっと悪かったっす。

 1か月で10人切りの美人女子で下手したらイジメ的な報復があるかもっす」


叔父さんは少し考えて


「あぁ、『アスガミ』の『依頼』も入ってねーし、遊びがてらやるか?」


「ちょっと、叔父さん!遊びってなにさ!下手したら僕の正体ばれるじゃん!」


「いや、報復きまってねーだろうが?相手が誠実に対応してくる事もある」


「どうっすかねぇ。

 衆人環視の中の堂々の告白からのバッサリお断りだったんで、

 普通に考えたらかなりアウトかもしれませんよ?

 多分、本人断られるなんて微塵も思ってなかったとおもうし」


「だから様子見がてらカワイイ甥っ子の面倒みるんだよ。遊び半分な?」


今や『アスガミ』として動画配信の作業を行っていた手を止めて

こちらに向き直っていた。

小学生以来ずっと懐き続けている、

叔父さんにとって家族と呼べるのは僕だけなのかもしれない。


「まぁ当然だがメンツ招集すんぞ。あいつらに金払ってんのは俺だし、

 多分、『ショウ』がおもしれー事になってんぞって言えば速攻くんぞ」


そのお金がどこからきているのかは全く解らない。

動画配信する独身男の叔父さんの生活は謎だらけだ。


「で、写真とかの資料はあんのか?」


「ちょ、叔父さん!本気でやる気じゃない?」


叔父さんの目が真面目モードだ。


「あるっすよ?

 相手入学から速攻有名人で裏で写真かなり回ってますからね。

 いくらでも手に入れられます」


「いいぞ、コウキ!さすがは俺の二番弟子!

 うんじゃ早速化けの皮ひん剥いてくか?

 うちの甥っ子に手を出したらどうなるかわからせてやんよ?」


ギラつく目をしてニヤリと口元をゆがめる。

すぐに『アスガミ』のメンバーへと流れていく情報達。

メンバーである僕にも当然流れてくる。


「ちょ、だからまずいって叔父さん!

 僕の平穏な学園生活を壊さないでよ!」


「何もしねーって、心配すんな!

 第一、相手何かして来なければ何もおきねーさ」


それは逆に何かしてきたら何かが起こってしまうと言う事でもあった。

これは平穏な学校生活の為にも彼女には何かしらの方法で

納得してもらうしかなさそうだ。


「明日からどうなるんだよこれ!」


それと意味が解らなかった美人局って何っとコウキに聞いたら教えてくれた。

それを聞いて酷い世の中だと思った。

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