ブラック&ゴールド

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第1話 ブラック&ゴールド

背の高いイケメン男がネオンの光がまばゆい場所で腰に手をまわした女にささやく。


「なぁ、いいだろう?」


その場所には看板がありご休憩やら一泊やらの文字が並ぶ。

もちろんラのつくホテルだ。

男の方はこれからしけこむ気まんまんだった。


「うん、もちろん」


当然のように女は返事をした。さもうれしそうに。

これから行われるのはそういう行為で間違いがない。

男の方は幸せの絶頂へと向かうために足を進めた・・・、


だがそこで待ったがかかった。


「はいは~い、おにーさん達ぃぃぃぃ?ご機嫌うるわしゅうぅぅぅ!!」


イカれた声を発する男が立ちふさがったのだ。

黒いパーカーに黒のジーンズ。全身黒いがただ一つ髪の毛が金髪である。

そしてぞろぞろと同じような服装の男達が現れる。


「な、なんだお前ら!!」


「ちょ、なんなの?」


女は男にすがるように抱き着くと、それを男が安心でもさせるようにぎゅっときつめに抱き寄せた。

明らかな不審な集団。普通の感覚なら警察を呼びたくなるだろうが。


「ねぇねぇ~? おねーさんさぁ?」


子供っぽい声にイカレタ喋り方をする金髪の男はまだ少年みたいな顔であるが、その手には大量のどくろの指輪が並ぶ。

首からは逆さの十字架が揺れていて、極めつけはタトゥーだ。

そのタトゥーは黒い炎を左手と頬まで纏っているどう見ても一般人とは程遠い悪人ある。


「坂本朱里だろ?」


急にテンションが変わりドスの聞いた重低音で問われる。


「そ、そうだけど?」


「お前ら朱里に何の用だ!!なんかしてみろ?ケーサツ呼ぶからな!」


男は半分怯えながらそんな事を言う。


「別に?何か危害を加える気はないですよ?

 あーー、先にイっときます!この会話は録音中でーす! ははっ!」


笑いながら金髪男は筒状のICレコーダーを自身のこめかみに当て舌をベロンと出す。


「そして~これが~録音した声です!」


そう言うと、金髪男が反対手をまるで執事が差し伸べるように出し再生ボタンを押す。

その顔には悪魔のような笑顔が八重歯と共にある。

そして再生されたICレコーダーの中身は女の声だった。


『あんたこの間ブランドバッグ貰ってなかった~?』

『あー貰ったわぁ。なんかお金持ってんのよねぇ、あの不細工』

『ひっど。それで本命の進藤君だっけ?うまくいってるの?』

『当たり前じゃない、優斗は将来性あるからねぇ~キープしてるわ』

『これもひっどい話だよ。まぁ私も大学ではそんな感だけどさぁ ぎゃははは』

『たださぁ、バレそうだからそろそろお金持ちくんは捨てるつもり~』

『あんた絶対刺されるって~www』

『ないない、そんな度胸あるワケ無いし?私の演技力抜群だし?ぎゃははは』


「やぁやぁ、ゆうとくんと言ったかい。そこの君。ケーサツ呼んで見る?ぎゃははは!!」


押し黙ったままの優斗の腕から力が抜けていく。

こんな女だと知らなかったと見える。

イケメンでどこぞの有名大学の学生さんだ。すでにこの内容の意味は理解しているだろう。


「そして~この方が今回の依頼者たるお金持ちくんだよ~?」


そう言うと金髪男の後ろから一人冴えない男が出てきた。


「朱里さん・・・あんまりだ・・・」

「隆士くん・・・ち、ちがうの!これは何か別の話で!!」


何かを恐れたのか坂本朱里は取り乱し始めた。


「ショウさん。こいつに復讐をしてくれ!!僕は頑張って好かれようとしたのに!

 大切だと思って気持ちも一緒にプレゼントしたのに!

 お金だって頑張ってバイトして食費だって削ってやってたのに!

 こんなのって・・・

 こんなのって無い・・・」


「わかる。わかってるぜ。同志。女ってのはキタネーイキモンだ。

 信じちまった俺らが馬鹿だったってだけだが・・・

 バレちまったらその報いってのは受けるもんだ?」


隣の彼氏はすでに離れてしまった。

ショウは最後の断罪を行う。


「アンタの事は今この瞬間、大学の掲示板に張り出されネットの拡散された。

 あんたの友人にもな。個別で送らせてもらってる。

 これからは誰にも相手にされないだろうさ。

 就職だってどうかな?誰も知らない地方にも行けばいい?

 ネットを甘く見ない方がいい。誰が何処で見ているかなんてわかったもんじゃないぜ?

 今更反省して心を入れ替えました?で通じる世の中だったらいいなぁ?クソ女! 社会的にシんどけや?」


この映像さえも撮影されネットに拡散される。

『アスガミ』というチームの名前で。

そのリーダーである「ショウ」以外は誰もその素顔を見せはしていない。

最低でも5人はいるチームである事や、頭のおかしい連中である事や

一度も警察を呼ばれた事もなく「悪を断罪」するだけで終わる事。

それらはすでに世間に広まりつつあった。

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