君が好き
1
夢を見た。
ずいぶんと、久しぶりに見た夢だった。
夢の中のカトリーナは五歳の誕生日をむかえる前で、庭で一人でブランコを漕いでいる。
危ないから高く漕いではいけないと父であるアッシュレイン侯爵がいつも言っていたが、カトリーナのそばに大人は誰もおらず、ブランコを高く漕いでも咎める人は誰もいない。
カトリーナは嬉々として高く高くブランコを漕ぎはじめ――、気がついたときにはブランコはかなり高いところまで振れていて、カトリーナは急に怖くなった。
ブランコのロープを持っている手が震えて、力が入らなくなる。
「おねがい、とまってぇ……!」
泣きべそをかいたが、そんなことでブランコが止まってくれるはずもなく、とうとうカトリーナの小さな体は宙に放り出された。
「いやあああぁーっ」
カトリーナは悲鳴を上げたが、放物線を描くように放り出された体は、そのまま地面に向けて落ちていく。
カトリーナは衝撃を覚悟してぎゅっと目をつむった。しかし――
どん、という衝撃は確かにあったが、覚悟していたほどの強烈な痛みは襲ってこず、カトリーナは恐る恐る目を開く。
そして、どんぐりのように丸い目を、さらに丸く見開いた。
王子様がいた。
金色の髪に、青い瞳。カトリーナを見つめて、ふんわりと優しく微笑んでくれた、王子様。
「天使が落ちてきたのかと思ったよ」
王子様はカトリーナの下敷きにされていたのに、楽しそうに声をあげて笑った。
優しい優しい、思い出の王子様。
そう――、どうしてその顔を忘れていたのだろうか。
ずっと探していた初恋の王子様は、すぐそばにいたのに。
彼は、レオンハルトだったのに――
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