5
「行ってしまわれたわ」
カトリーナは金髪の男性の姿が見えなくなると、頬に手を当てて首を傾げた。
「大丈夫かしら?」
ふらふらと足元もおぼつかない様子だった。酒に酔ってしまったのだろうか。酔っているようには見えなかったけれど、気分が悪いと言っていたから心配だ。
カトリーナは彼を地獄に突き落としたのが自分だとはちっとも気がつかずに、彼が消えた先をしばらく見つめていたが、いつまでもここにいても仕方がないと立ち上がる。
そして、彼がカトリーナのために敷いてくれた白いシルクのハンカチに気がついた。
「まあ、どうしましょう」
ハンカチを忘れて帰ってしまわれたようだ。
カトリーナはハンカチを持ち上げると、その隅にひまわりの小さな刺繍を見つけて微笑んだ。
(ひまわりがお好きなのかしら? 可愛らしい方)
カトリーナは持ち前の能天気さで「きっとそのうち会えるわね」と、ハンカチを大切に畳むと、次に会ったときに返すことにした。
そうして、次のときめきを探しに会場に戻ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます