49話 特別な朝

 忘れられない一夜が明けて、私とファルムは脱力しながらもお互いをしっかり抱きしめ、幸せな気持ちに包まれながら余韻に浸る。

 目が合えば自然と頬が緩み、引き合うように唇を重ねた。

 一睡もしなかったから眠気や疲労感がすごいけど、それよりも満足感の方が遥かに強い。


「シャワー、浴びに行こうか」


「ええ、そうね」


 リノとサクレを起こさないよう、静かに布団を出る。

 脱ぎ捨てた衣服を持って、リビングを後にした。


「ファルム、これからもよろしくね」


 ベトベトになった体を洗い終え、バスチェアに座るファルムをそっと抱きしめる。


「もちろんよ。なにがあっても、あたしたちはずっと一緒よ」


 鏡に映るファルムの優しい微笑みが、言葉と共に私の心に溶け込んでいく。


「ところでカナデ、思いっきり乳首勃ってるわよ。セックスしたいなら大歓げ――」


 聞き終わるより前に、私は浴室を離れた。

 バスタオルを手に取るや否や、ファルムが浴室から慌てて飛び出す。


「カナデっ、怒らないで! 悪気はなかったのよ! 確かに、いまのは配慮が足りなかったわ! たとえ揺るがぬ事実だとしても、あえて言葉にするなんて野暮だったわよね!」


 早口でまくし立てながら後ろからギューッと力強く抱き着いてきて、なんの脈絡もなく私の胸を揉む。

 突然の刺激と快感に思わず声が出そうになったけど、どうにか堪える。


「お、怒ってないよ。ちょっと呆れただけ」


「よかった。嫌われたんじゃないかって心配しちゃったわ」


「私がファルムを嫌うわけないよ。そんな心配、二度としなくていいからね」


 体勢を変えてファルムと向き合い、身を屈めて目線を合わせる。

 心から安堵する様子が、実にかわいらしい。


「大好き」


 短く愛を囁いてから、最愛の恋人にキスをする。

 それはとても甘くて、濃厚で。

 いつまでもこうしていたいと思えるほど、心地いい。

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