46話 サクレの成長
ここ数日、サクレが本格的に発音の練習を頑張っている。
ファルムとリノによると、私が学校に行っている間も懸命に取り組んでいたらしい。
以前のままでも意思疎通は可能だったけど、サクレがもどかしさを感じているのは傍目からでも分かる。
今朝バイトに行く前に聞かせてもった早口言葉は、見事なものだった。私だったら絶対に噛んでいたことだろう。
そして、意外な発見もある。
「ふふんっ、今度は余の勝ちだな。負け続けていた分、ここから取り返すぞ。せいぜい覚悟しておくがいい」
夕方になって四人で大富豪をしていると、数試合ぶりに勝者となったサクレが喜びと意気込みを露わにする。
声や態度は変わらないとはいえ、以前と比べて明らかに饒舌だ。
口数が少ないタイプなんだと思っていたけど、それは完全な勘違いだったらしい。
あと、話し方も想像の斜め上を行っている。甘く幼い声質とのギャップが、なんともかわいらしい。
「いまのうちにほざいてなさい。ここからはあたしの独壇場よ!」
「まぁ、勝つのはボクって決まってるんですけどね~」
ファルムも強気な姿勢を見せ、リノは挑発的な態度を取る。
かく言う私も、ここまで一度として大富豪になれていないので、密かにやる気の炎を燃やす。
夕食後。食器を洗う私の隣では、いつも通りサクレがタオルできれいに水気を拭き取ってくれている。
ファルムとリノはリビングで対戦型アプリゲームに熱中しているので、ここでの会話は耳に届かないはず。
それでも念には念を入れて、声を抑えてサクレに話しかける。
「サクレって、リノのこと恋愛対象として見てるよね?」
「っ!?」
真相がどうしても気になって訊ねてみたら、どうやら図星のようだ。
恋バナに憧れていたので、いろいろと話を聞きたい。
けど、あんまりしつこいと迷惑だよね。
ウザいと思われてしまうかもしれないし……内容を絞って、一つだけ質問させてもらおう。
「告白する予定はあるの?」
「……す、すぐは無理だけど、いつかするつもりだ」
横から見ても顔が真っ赤なのが分かる。
偉そうなことを言える立場ではないけど、初々しい反応が実に愛らしい。
いつかWデートしてみたいねと言うと、サクレは優しい微笑を浮かべてコクリとうなずいた。
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