45話 カナデがかわいすぎる byファルム

 カナデがエロい。

 本人に自覚はない。

 ただ、無自覚だからこそ、余計にエロい。

 カナデは以前あたしがプレゼントしたナイトブラを愛用してくれていて、布団に入る直前に欠かさず身に着けている。

 逆に言えば、それまではノーブラ。

 入浴を済ませ、薄地のパジャマに身を包み、ボタンを上から三つほど外して肌色の渓谷を晒している。


「お風呂気持ちよかったね」


 リビングに戻って腰を下ろすと、カナデは正面に座るあたしに柔らかく微笑みかけた。

 火照ってほんのり紅潮した頬が色っぽく、屈託のない笑顔に見惚れてしまう。


「そうね、心身ともに癒されたわ」


 平静を装いつつ返答するも、頭の中はカナデのことでいっぱい。

 ふと、視線が胸元に向く。

 圧倒的質量を誇る爆乳の迫力は言わずもがな。平常時でも存在感の強い先端部分が、薄い生地の内側から己の形をクッキリと主張させていた。


「ファルム、ギュッてしてもいい?」


「ふぇっ!?」


 恋人になってからというもの、カナデの方からスキンシップを求めてくることが増えた。

 もちろん、断る理由はない。

 突然の申し出に驚いたのも束の間、あたしは高速で首を上下に振る。

 カナデは嬉しそうに口角を緩め、絶妙の力加減で抱きしめてくれた。

 甘い香りがふわっと漂い、強く押し付けられた胸が二人の間で大きく形を変える。

 極上の感触に、思わずゴクリと生唾を飲む。

 情欲が無尽蔵に湧き上がるものの、不思議と心は穏やか。

 他の一切を意識から切り離し、カナデとの抱擁を存分に楽しむ。

 しばらくして、カナデが尿意を催してトイレに向かった。

 名残惜しく思いつつも、さすがに引き留めるわけにもいかない。

 飲ませてほしいと頼んだら、顔を真っ赤にして断られた。




 就寝時、カナデと短い口付けを交わす。いわゆる、おやすみのキスというものだ。

 ちょっと唇を重ねただけなのに、強烈な多幸感と快楽に脳が蕩けそうになる。


「おやすみ」


「おやすみなさい。しっかり寝なさいよ」


 あたしの魔法があれば学校やバイトを辞めても不自由なく生活できるのに、カナデは決して楽をしようとしない。

 疑問に思うこともあるけど、その真面目な生き方には素直に尊敬の念を抱かされる。

 目をつむって思い浮かぶのはカナデのことばかり。


「ファルム、大好き」


 不意に耳元で愛を囁かれ、ハッとなって隣を見る。

 月明かりに照らされたカナデの顔は、わずかに紅潮していた。

 はにかんだような笑顔が実にかわいらしく、胸の中に熱いものが込み上げてくる。

 この子を守りたい。大切にしたい。幸せにしたい。いつまでも一緒にいたい。

 悠久の時を生きてきたけど、カナデと出会ってから初めて覚えた感情は数え切れないほど多い。


「あたしも大好きよ」


 世界を埋め尽くすほどの膨大な想いを一言に凝縮し、目を見て伝える。

 すると、カナデはますます頬を赤らめた。

 丸い瞳を大きく見開き、なにかを堪えるように唇をキュッと結んでいる。

 あたしは万物を創造し、概念すら歪曲させる力を持つ。

 だけど、最愛の恋人にキスしたいという衝動を抑えられる自制心はないらしい。

 おやすみのキスが一回という決まりはない。

 翌朝に支障を来たさない程度に、あたしとカナデは互いの唇を味わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る