34話 ロリコンという言葉は私に効く

「ふと気になったんだけど、カナデってあたしの体を見て興奮するのかしら?」


「ぶぇっ!?」


 リビングでくつろいでいるときに発された唐突な質問に、驚愕を隠せない。

 深呼吸を挟んでから、質問について真面目に考える。

 ファルムに興奮するかどうか……。

 長く繊細な黄金の髪、幼くも非常に整った容姿、傷一つない色白の肌、抱きしめれば折れてしまいそうなか細い体躯、耳が幸せになるかわいい声、ほのかに香る甘く爽やかな匂い。

 微かな胸の膨らみは確かな柔らかさを秘めていて、体毛のないつるつるな体は触っていて心地いい。


「し、しないと言えば、嘘になる、かも」


正直に言っていいことかどうか分からず、歯切れが悪くなる。


「つまり、カナデはロリコンってわけね」


「うぐぅっ!」


 容赦のない強烈な一撃が私の心を抉る。

実際に痛みはないはずなのに、心臓が締め付けられるような感覚を覚えた。


「背が低くて胸もお尻も小さい未成熟な体にムラムラしている、と」


「う、うん」


 見えない刃が、心にグサグサと突き刺さる。


「それって、この世界だと犯罪になるのよね? 趣味を公にしただけで、非難は免れないのよね? 異世界出身のハイエルフであるあたしなら問題なくても、その辺の幼女に手を出したら社会的に死ぬわよね?」


「そ、そう、だね」


 私のライフはとっくにゼロなのに、ファルムの攻撃が止まらない。

 うぅ、生きててごめんなさい。


「あたしは人間に似てるけど、耳だけでなく体内組織や内臓の働きとか、明確に異なる点があるわ。それを承知の上で、情欲を催せる? 種族が違うからって、気持ちが萎えたりしない?」


「うん」


 隠してもごまかしても意味はない。素直に即答する。


「やったわ! 特別なことをしなくても、あたしはカナデのことを興奮させてあげられるってことよね!」


「え? あ、うん、そうだね」


 ロリコンであることを叱責されるのかと思いきや、ものすごく喜ばれた。

 ファルムの好意に気付かないほど無神経な鈍感ではないと自負しているけど、いまの流れでこういう反応に至るとは想像もしていない。


「本当によかったわ! 実はけっこう不安だったのよね。あたしの手で気持ちよくなってもらうことができても、見た目はカナデの好みに添えてるのか、って。興奮できるってことは、あたしの容姿が好みってことよね! ねっ?」


「う、うん、好きだよ」


 そう言えば、ファルム本人にはきちんと伝えていなかったかもしれない。

 一目見た瞬間に、ファルムの容姿に惹かれていた。

 いまでこそ外見なんて関係ないと思えるほどの信頼を寄せているけど、たとえばファルムが異性であったなら、あのときの私は興味や関心なんて微塵も抱かずに通り過ぎていたはずだ。


「ふふっ、これでまた一つ懸念が消えたわ。セックスする日も近いわよ!」


「それはどうかなぁ」


 苦笑しながらも、心中は穏やかじゃない。

 ファルムは着実にヘタレを克服し、今日だってことあるごとに私の体に触っている。

 私はまだ高校生で、ファルムは年齢こそ地球より上だけど見た目は子どもだ。

 なんとなくお決まりの話題ぐらいに捉えていたけど、いよいよ本格的に現実味を帯びてきた。

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