50話 神槍とヴィオラの報せ

「……あれ? なんか今入ってきたら駄目なタイミングだった?」


 あまりにも一斉に集まった在室者の視線に首をすくめ、じわりと廊下へ後ずさるサシャ。


 シルヴィエとオルガは残念な子供を見るような生暖かい視線を向けてきているし、ヴィオラとイグナーツは意味ありげにサシャに頷きかけてきている。なんだか非常に入っていきにくい空気である。


「あー、まあそんなことはないよ。いいから中にお入り」


 そう言ってその場を打開してくれたのは、世事に長けた齢二百を超えるダークエルフのオルガだった。ありがとうオルガお婆ちゃん、サシャはそう内心でこっそりお礼を言いながら室内に足を踏み入れていく。


「ふむ、だいぶ元気を取り戻したみたいだな。それならそれでいい」

「サシャさま、お腹はもう大丈夫なのですか?」

「え……ま、まあ、完璧じゃないけどぼちぼち元に戻ったとか、そんな感じかな?」


 部屋に入るなり口々にかけられてきたシルヴィエやらヴィオラの気遣いの言葉に、サシャはとりあえず笑って曖昧に答えた。


 あれから厨房で片端から生魚の血を啜りつくし――味は二度と思い出したくない――、ようやく三割ほど泉を補充させることに成功したのだ。まだ本調子ではないが、全身を苛んでいた倦怠感はすっかりなくなっている。


 ちなみに、後にそれらの魚を調理しようとした料理人のチェニェクがその完全なまでの血抜き具合に首を傾げることになるのだが、そして見事なまでに生臭さが抜けたその魚料理が絶賛されることになるのだが、それはまた後々のこと。


「あれ、バルトロメイさんはいないの?」

「ああ、熊公は騎士団に呼ばれてね。<連撃の戦矛>の体力自慢の連中に、夜の歩哨を手伝って欲しいんだと」


 見事に女性ばかりしかいない部屋を見回して首を傾げたサシャに、オルガが早く座れと言わんばかりに隣の椅子を叩いた。ひょっこりと肩掛け鞄から顔を覗かせたカーヴィ―が、何をしているの、と言わんばかりにとととっとその席に駆け登っていく。


「ほら、いつまでも部屋の中で突っ立ってるんじゃないよ。話し合わなきゃいけないことが山ほどあるんだからね。さっきも言ったけど、あんたって子は次から次へと厄介ごとを引き寄せるんだから」

「えー、そんなことない……よね?」


 席に座りつつ、若干不安そうに周囲に同意を求めるサシャに真っ先に答えたのは、その人形のように可憐な顔でふわりと上品に微笑むヴィオラである。


「はい。サシャさまはザヴジェルに訪れた厄介ごとを解決する手伝いをしてくださっているだけです。ですよね、イグナーツさま?」

「……そういうことになるな。期待しているぞ、使徒殿」

「はい?」


 思わずサシャの声が裏返った。


 これまで微妙に距離を感じていたはずの寡黙な樹人族剣士のイグナーツが、いつの間にやらヴィオラと同じ陣営になっていた。いや、むしろもっと酷い。なにせ口を開くなり「使徒殿」である。


 自分がいない間にどんな話がされていたか知る由もないサシャだが、使徒とはなんぞや、というのが正直なところである。話しかけてくれるぐらいに距離が縮まったのは良いことなのかもしれないが、ただの孤児にそんな畏まった物言いをされてもやり辛いだけ。


「……ええと、そういうことなの?」


 サシャはとりあえず、なんだかんだ怒られつつも気楽に接してくれるシルヴィエに助けを求めてみた――が、よく意味の分からない曖昧な頷きで片付けられてしまった。


「えええ……」


 そんなサシャの窮地に、ここでもまた話を進めてくれたのは、やっぱり年の功を持つオルガだった。


「まあ厄介ごとって言っても、ここに向かっている時はあんたの癒しの方を心配してたんだよ。ほら、一回金貨一枚ってやつさ。まあシルヴィエがついてたから酷いことにはならないとは思ってたけど、こんな前線に来て、あんたにとんでもない数の負傷者が押しつけられてやしないかと心配してたのさ」


 結局、オルガのその心配は杞憂に終わった。


 サシャの癒しの力が死蟲を撃退する鍵となることで、本来の癒しの用途はすっかり二の次になっていたのである。その代わり、死蟲の撃退やらそっちの方面で多大な貢献を期待されてしまっているのであるが――


「その代わりにほら、さっきの会議で癒しの神剣の増産を頼まれただろう? まさか忘れたとは言わせないよ。いつまた奴らが押し寄せてくるか分かったもんじゃないし、出来るにしろ出来ないにしろ、まずはそれをしっかりと確認しないといけないじゃないか。そのためにこの部屋に集まったんじゃないのかい?」

「……そうだっけ。まあ、そうとも言うか」


 部屋に集まった直接的なきっかけはなんだかちょっと違う気もするが、オルガが言う神剣作りも急ぎで進めなければいけない案件ではある。


 なにしろ高級ポーションを乱用するという非常手段を除けば、今まともに死蟲と戦えるのはサシャ、それと自前の神剣が死蟲に通用したヴィオラとイグナーツ、そしてサシャが力任せに癒しの力を注いだ槍を持つシルヴィエ――この四人だけなのだ。


 サシャがどんどんと癒しの剣を増やしていけば、それだけ戦力が増強されるのは分かりきったこと。……分かりきったこと、なのだが。


「んー、でもなあ。正直なところ、シルヴィエの槍にしたのと同じことをするの、しばらく無理っぽいかも。あれ、今思えばかなり無茶したんだよね。オルガにもう少し効率的なやり方を教われるんであれば、それはそれで今後の無駄にはならないとは思うんだけど」

「はあ、やっぱりそうかい。あんたが会議の場で言葉を濁してたからね、そんな事なんじゃないかとは思ってたよ。まあ、それはあの場の誰もがそう思ってただろうけど」

「……ごめんね」

「謝ることじゃないさ。あんたが率先して戦ってくれ、さらにシルヴィエにも死蟲と戦う術を与えてくれた。それだけでもこの領壁にいる全員が感謝しているさ。で、あたいが今後、その癒しの神剣作りのアドバイスを出来るかどうかだけど――」


 シルヴィエ、ちょっとあんたの槍を見せておくれ。


 そう言ってオルガは、シルヴィエが大切に自らの馬体の上に沿わせている槍を指差した。当初の輝きは弱まったとはいえ、未だ青く静謐な光を放っているそれ。オルガはシルヴィエから無言で受け取ると、眉間に皺を寄せてじっくりと眺めはじめた。


 その様子に自前の神剣を持つヴィオラとイグナーツも席を立ち、シルヴィエの槍に興味を隠せないといった顔で観察を始める。昼間の戦いの最中はどこかに隠れていたカーヴィも、オルガの肩に飛び乗って一緒に眺めはじめている。


「ど、どうだろうか。わ、私は素晴らしい槍にしてもらったと思っているのだが――」


 シルヴィエがなぜか自分の宝物を値踏みされている子供のような顔でおろおろし始めたが、それを見たサシャも落ち着かない気持ちになってきた。


 シルヴィエが大切にしている愛槍に変なことをしたつもりは毛頭ないが、なにせこうしてためすがめつ眺めているのは本物の神剣の持ち主たちと、シルヴィエ曰く付与魔法の第一人者である。


 なんだこりゃ!


 なんて言われた日には、シルヴィエにも槍を贈ってくれたというシルヴィエのお父さんにも申し訳が立たない。採用試験を受けた新人傭兵の時のような、徴税官の厳しい検査を見守る農民のような、そんな心境で槍を眺めるオルガの反応を待っていると。



「――へえ、こりゃたいしたもんだね」



 オルガがため息と共にそう口を開いた。


「神力の付与自体は偶然に近い力任せだけど、ここまで神力に染まっていれば立派な神具だよ。それにシルヴィエ、噂に名高いあんたの父親の神槍とそっくりじゃないかい」

「ですね、オルガさま。わたくしもそう思います。本当に神々しい槍」

「……ああ、これは間違いなく神具だ。まさかこんなものが人に作れるとは、私もこの地に来た甲斐があるというものだ」

「わ、私も神槍と思わなかった訳ではないぞ。けれどもそんなの、その、畏れ多いというか、私ごときが烏滸がましいというか」

「何を言ってるんだい。サシャがここまで神力を惜しげもなく注いだのは、あんたのためじゃないか。胸を張って使ってやりな」


 ――だけど、この不安定な付与が持続するかが心配だねえ。


 誰にともなくそう続けたオルガが、話の流れから置いてけぼりになっていたサシャに向き直った。そのダークエルフならではの暗銀色の髪が、未だ手にしたままの槍から零れる青光を反射して鈍く輝いている。



「サシャ。これは……あれかい? 例のラビリンスで皆であれこれ話していた力をこうしたと?」



 その場にいなかったイグナーツの方へひくりと眉を動かし、コアから力を譲られたという部分をぼかして質問をするオルガ。


「うん? ああ、そうそう。時間もなかったし、片っ端から注ぎ込んだよ。そういう意味では、あれがなかったら最後まで戦えてなかったねえ」

「ほう……」

「ふむ……」

「まあ……」


 事情を知らないイグナーツを除き、オルガ、シルヴィエ、ヴィオラの三人が三人とも驚きと安堵の声を漏らした。


 そういうことであれば、サシャがラビリンスで譲り受けたという青の光は、文字どおり聖なるものであったということに他ならない。


 そしてそれは、あの時の「サシャはザヴジェル史上稀にみる災厄、歩くラビリンスの再来では?」という最悪の懸念が全くの見当違いだった、そう証明しているということでもあるのだ。


「……けどそうなると、それはそれでラビリンスって物はいったい何なのさ、って謎は深まっちまうねえ。本当に訳が分からないよ」

「あの、サシャさま。あの時のことをイグナーツさまにお話してもよろしいかと。きっと力になってくれると思うのです」

「ん? そうねえ……」


 ヴィオラの言葉にサシャがシルヴィエとオルガの顔を見ると、二人とも反対ではないらしい。むしろヴィオラがそう言うならそうしておけ、とでも言いたげな表情だ。


 まあ、サシャとしてもその二人が賛成するなら別に構わない、というのが正直なところ。ザヴジェル人の歩くラビリンスへの忌避感を一番知っているのはその二人だし、その二人がここまでも、サシャの為を思って色々と考えてくれてきたのは紛れもない事実だからだ。


 その二人が特に反対しないのであれば、きっとイグナーツという樹人族剣士は信頼できるのだろう。そもそも一緒に死蟲と戦った仲間だし。


 そうサシャが決心して頷くと、ヴィオラが「ありがとうございます」と微笑んで、シルヴィエと一緒になってイグナーツに説明を始めた。


 イグナーツはその節くれだった長い腕を組み、一心に耳を傾けていたが――




「……ふむ。何とも興味深い話だ。里の古い言い伝えに、ヴラヌスは仔を創りてラビリンスとなし、ラビリンスは無限の歳月を閲してヴラヌスとなる、そんな一節もある。あながち間違いではなかったのやもしれないな」




 ――驚きもせずにそう感想を漏らした。


 それに真っ先に反応したのはシルヴィエだ。


「ちょ、ちょっと待てイグナーツ殿。先ほど貴殿はそのヴラヌスはこの世界だと、そう言っていただろう。となると今の言い伝えは、この世界がラビリンスを作り、そのラビリンスはやがて世界となる……そんな解釈になってしまう」

「その解釈で問題ない。里一番の古樹より古い言い伝えなのだ、シルヴィエ殿。真偽のほどはもちろん定かではないし、途中で歪んだり欠けたりして伝わっていることも否定できない。ただ、今聞いた話と奥底で繋がっている、そう思っただけだ」

「……繋がっている、というと?」


 シルヴィエの率直な疑問に、奈落に滅びし樹人族の里の禰宜は深く美しい声で説明していった。


 ラビリンスのコアから譲り受けた力が、奈落の先兵、死蟲を屠る力となったということならば。


 通常の剣も魔法も通用しない奈落の先兵、その源たる奈落を、世界を蝕む病とするならば。


 ラビリンスがこの世界によって創られ、やがて新たな世界となるものならば。



「――この三つを併せて考えると、こうなる」



 イグナーツは右手で立てた三本の指を左手でひとつに包み込み、静かに結論を述べていく。


世界ヴラヌスの幼生、若き世界とも言えるラビリンスの持つ原初の力。それは、この滅びつつある世界ヴラヌスを蝕む病を打ち払えるものであっても、さして驚きはしないということだ。違うか?」

「……違うか、と言われても。確かにその部分だけなら筋は通っているように思う。ラビリンスは中に入れば独自の世界を持ち、独自の太陽すら持っている。これを若き世界と想定するのも、まあ理解はできる」


 考え込むように話しながらも、大きく頷いてみせるシルヴィエ。


「だが、それならばなぜ百年前に<歩くラビリンス>はザヴジェルを襲ったのだ? ヴラヌスやラビリンスが世界ならば、天空神クラールの関係は何だ? そしてそもそも、サシャの聖光が人を癒せもするのは何故だ? ……すまないが、ますます訳が分からなくなってきた」


 納得はしつつも更に深まる謎に、シルヴィエは大げさに天を仰いだ。


「その辺りは私にも分かりかねるな。私はただ、ラビリンスの力と里の伝承には通じるところがある、そう感じただけだ」

「ああ、イグナーツ殿を責めている訳ではもちろんない。ただ、神々やら世界やらが絡むと途端に話が複雑になって、思わず途方に暮れてしまっただけだ。イグナーツ殿の話自体は非常に興味深い内容だったとも。すまなかった」

「頭を上げてくれシルヴィエ殿。こちらも責めている訳ではない。神々については私もよく同じことを感じるのだ。気持ちはよく分かる」


 互いに謝罪しつつも仄かな苦笑を交わし合う二人に、ヴィオラが声をかけた。


「お二人とも、難しく考えすぎなのです。何ごともシンプルに、本質だけ見据えていけばよいのですわ。この流れで聞くべきことは、ただひとつ――」


 そう言ってヴィオラは、難しい話に思考を放棄していたサシャにぴたりと視線を合わせた。


「――サシャさまは、なぜザヴジェルに来たのですか?」

「え? なぜって。……そうだねえ、ラビリンスとか色々あるし、一度は行ってみたかったから?」

「ええと、質問を変えますね。実際にザヴジェルに行こうと決めた時、なにかこう、ささやきのようなものが聞こえなかったですか?」


 サシャは素直にうーんと考え込み、ぽん、と手を打った。


「うん、そう言われてみれば何か聞こえてたかも! 頭の中で何かが閃きを助長させるように繰り返し、繰り返し。あれはザヴジェルに行け、ザヴジェルに行けってしつこく言っていたような気がするんだけど、それのこと? 掠れたおじいちゃんみたいな声だった」

「そう! それこそ天空神クラールの神託ですわ! わたくしはもう少しはっきり聞き取れましたが、やはりかなり御力が弱まっているのですね。けれどもサシャさまはやっぱり、わたくしと同じに神々に導かれているのです!」


 嬉しそうな笑い声を上げたヴィオラが、シルヴィエとイグナーツの視線に気づいてコホンと上品に咳払いをした。


「――え、ええとですね。今のはつまり、こういうことですわ。やはり神々はサシャさまをご指名で、わたくしたちはそれを全力で補佐していけばよい。難しく考えたりしなくても、そこを間違えなければ全てが上手くいく、そういうことなのです!」


 抜けるような白磁の肌をやや赤らめつつ言い切ったヴィオラに、シルヴィエもイグナーツも、そしてオルガまでもが「まあ方向性としては間違っていないな」と温かく同意を示した。


 サシャは一人、あの念仏じみたおじいちゃんの声が本当に神託だったのか、そこからして大いに疑問を感じているところである。けれどもここは空気を読んで、あれだけ喜んでいたヴィオラをこの場でこき下ろすことはするまいと、大人ごころで見送る所存だ。


 他にもそんなに買いかぶらないでほしいとか、絶対に勘違いしているとか、言いたいことはたくさんある。


 けれどもまあ、何の因果かサシャの青の力が死蟲撃退に実際に役に立ってもいるし、ヴィオラもヴィオラでザヴジェルを守ろうと純粋無垢に頑張ろうとしているのも分かるしで、本当の神託の人物が現れるまでは一緒に頑張ればいい、そう思うようになってきたのだ。


 そして本当の神託の人物が現れたら――


 それまでの勘違いを責めることはせず、それからも一緒に奈落と戦えばいい。どのみちこの世界で生きていくには奈落と戦うしかないのだし、ザヴジェルにも一緒にいるみんなにも愛着が湧いている。結局やることは変わらないのだ。


 うんうんうん、とサシャが一人で納得している間に、ヴィオラは上流階級の社交術を発揮して、上手に話題を変えたようだ。


「それと昨夜、出発前に<幻灯弧>のクランハウスに持ち込んだ通信の魔道具で、わたくしの実家と連絡を取ったのですが――」


 ヴィオラの実家。それは紛れもないこの地の領主、ザヴジェル嫡流の一族である。


「――サシャさまのことをかいつまんで説明させていただいたところ、それはそれは大変喜んでおりました」


 ぶはっ。

 思わずサシャはその場に崩れ落ちそうになり、机に両手をついて体を支えた。


 何たることか。

 やっぱりヴィオラとは一度きちんと話し合った方がいいかもしれない、そんなことが頭をよぎっていくが、もはや手遅れである。


 よくよく考えてみれば、ヴィオラはこの領主一族の話の前にも、どうやってか樹人族のイグナーツを自分の神さま理論に引き込んでいた。


 純真無垢な性質がなせる求心力なのか、お姫様パワーなのか。


 サシャはぐいと体を起こして、これ以上の放置は危険だとその紫水晶の瞳でヴィオラを正面から見据えた。唐突なサシャの動きにカーヴィが逃げ出したが、ヴィオラは話に集中しているせいか、どんどん話を進めているようだ。


「そしてそのお返しという訳ではないのですが、ひとつ朗報を教わりました。以前お約束いただいた、一族の者とサシャさまとの会談にも絡むお話ですが」


 そこでようやくヴィオラは言葉を切って、にっこりとサシャに微笑みかけてきた。


「――もっと適任の方々が、ちょうどこの地に救援に向かっているそうですわ。到着はおそらく明日の後半、そこできっと驚くべき出会いがあることでしょう」


 うふふ、と楽しそうに微笑むヴィオラ。


 その姿だけ見れば文句なしの可憐な美少女なのだが、サシャの背筋にはなんだかたらりと冷や汗が流れている。どう言葉を返すか決めあぐねているうちに、シルヴィエが更なる救援という言葉に食いついた。


「援軍というなら我々も無関係ではないな。誰だか教わっても?」

「うふふふ。シルヴィエも喜んでください。その方々は」


 ヴィオラはその花咲くような微笑みをさらに満開にさせ、こう続けた。





「その方々は、かつてのカラミタ禍からザヴジェルを救った英雄たち――。シルヴィエのお父君フーゴさま率いる<青光>傭兵団と、天人族のダーシャさまです」




 カラン、と嫌に大きな音を立てて床に落ちたのは、いつしかシルヴィエの手に戻っていた青く輝く愛槍だった。



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