第45話 地下5階 パーティは再出発する
結局マットは全てのゴルラン金貨を預かった。
自分では使うつもりがなかったが、だからといって、ここに捨てておくのはもったいなさすぎるではないか。
そのことには、ロイも同意した。
半分受け取ってくれと、マットはロイとシカルに言ったが、1枚も受け取らなかった。
ユキは、金貨には興味がなかった。
ユキは手裏剣を探したが、ミノタウロスに突き刺さっていた手裏剣は、血で溶けていた。
ロイとユキは、中央広間に置いておいた荷物を確認した。
宝箱だけが動いていた。
爆風で動いたのではなく、誰かが動かしたが重くて途中であきらめたようだ。
封印箇所も無事であったが、床には指が5本落ちていた。
河童の指だろう。
封印を破ろうとして、指を落としたのだろう。
ロイは宝箱を背負い、重さを確かめると安心する。
「大丈夫だ。何もとられてないだよ。」
ユキは薬草と桃の入った木編み袋を腰に下げた。
酒にやられていたジェイコブの内臓が治り、薬草はもう必要がないのかもしれないが、大事に持って帰るつもりだ。
河童のいた部屋の扉は閉じていた。
気配はなかったが、藪をつついて蛇を出したくはない。
パーティはもうこれ以上、新たな戦いを望んではいなかったので、背後からの襲撃を警戒するだけにした。
こうして我らのパーティは、奇跡的に地下6階での戦いを切り抜けて、地下5階へと上っていくことが出来たのであった。
――地下5階――
ご存じのように、地下5階は城の頂上である。
新鮮な水の巨大な貯水タンクがある。
はるか上からしたたり落ちてくる水をこの貯水タンクに貯め、城のあらゆるところへ新鮮な水を送っているのだ。
城の中で水が汚れ、それは下水となって地下10階の下水池へ、さらにそこから川の下の洞窟の最深部の貯水池へと流れ、最後は地下の奥深くの水脈へと流れ込んでいく。
我らのパーティは、今や新鮮な水が貯めてある、貯水場の前までやってきた。
治癒の魔法陣で全快したパーティの健康は、この水のように新鮮だ。
シカルは思う。早く屋敷に帰って、こんな新鮮な水で体を綺麗に流したいと。
しかし同時に、ミノタウロスの滝のような小便のことを思い出してしまい、嫌悪感で頭を振るのであった。
城の頂上には、坑道とつながる橋がかかっている。
我らのパーティの目には、オークの死体が映る。ジェイコブたちが殺したオークだ。
ロイはこのオークとの戦いのことを、はるか昔のように感じた。
そういえば、今は何時だろう?外の世界では、今は深夜から朝くらいだか?そうすると、2日前くらいだか。いやはや、まるで1年くらい経ったような感覚だ。
この橋を渡れば、いよいよ城ともお別れとなる。
橋から下を見下ろすと、暗闇の中に小さな明かりが見える。
地下10階の下水池辺りだろう。
そして橋を半分も渡れば、城の全貌を再び視野に入れることが出来た。
改めて、この壮大な光景には驚かされる。
城の内部に広がる「街」も記憶に新しいだけに、何か感慨深い思いがある。
我らのパーティは橋を渡り終えて、最後に城を見納めると、ついに坑道へと戻った。
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