第14話 オーク軍団、巨大ガエルを捕獲する
「足だー!足を狙え、くそったれども!」
「隊長!すばしっこすぎます!やつの動きを止めて下さい!」
「この脳なしめ!そのために足を狙えといっとるだろ!切り落とすか折るかしろ!」
「無理です!やつの動きが速すぎます!」
「おい、16号がやったぞ!」
「よっしゃ!カエルの背中にしがみついたぞ!」
「よくやった!手を離すんじゃないぞ!」
「うぎゃあぁああ!」
「ギャハハハハ!天井に潰されてら!」
「誰か先回りして、カエルの動きを止めろ!おい、そこの29号!お前が行け!」
「なんで俺が!くっそー、30号と33号のやつめ、一体どこへ逃げやがったんだ!畜生め!」
「いいか役立たず!どんなことをしてでも、カエルを止めろ!」
「あっ!29号が食われたぞ!ギヒヒヒ!29号がカエルに一呑みされやがったぜ!イヒヒヒヒ!」
「笑ってる場合か!今のうちに足を全部切り落とせ!」
「だって隊長、グハハハ、29号のやつがエヘヘヘヘ、パクリと食われちまったんだぜ!こりゃ愉快だギヒヒー!」
「隊長!カエル野郎の足を切り落としたぜ!これでもうジャンプは出来なくなったぜ!」
「よくやった!火を燃やせ!ランプの油でこいつを丸焼きにするぞ!」
「隊長!バカな29号のやつが、腹の中に入ったままですぜ!イーッヒヒヒ!」
「かまわん!一緒に焼いて食っちまおう!おい、37号と38号。下から酒をたんまり持ってこい!宴会がはじまるぞ!」
「エヘヘ了解しました。でも、わしら分の肉も残しといてください。」
「やわらかいところをやろう。それより早く酒とってこい。」
「了解でさぁ!」
「隊長!丸焼きは時間がかかるんで、剣で肉を切り取って焼きましょうぜ!」
「よし、丸焼き中止!好きなだけカエルを切り刻んで食ってよし!目玉はミノタウロス様に献上するから、傷つけるんじゃないぞ。」
「皮はおいしくねえから、ひん剥こうぜ。しかし、分厚い皮だぜ。」
「おい、まだヒクヒク動いてるぜ!」
「活きがいいってことよ!新鮮な巨大ガエル肉なんて、そう味わえるもんじゃないしなぁ。」
「ありゃ、この動いてるのって、もしかして29号じゃないのか?エヘヘへ!まだ死に切れず胃袋の中で暴れてやがるぜ!ガハハハハ!」
「こいつは愉快じゃギヒヒヒヒヒ!」
「エへヘ、隊長、29号のやつ、どうしましょうか?」
「イヒヒヒ!胃袋切り裂いて、出してみよう。生きていたら褒美にクモ女を抱かせてやろうか。なんたって自分を犠牲にしてまで大手柄をたてたのだからのう。ギヒヒヒヒ!」
「よっしゃ!慎重に切れ目をいれるぞ。よしその調子その調子!」
「うわぁあ! 29号が転げ落ちてきたぞ!久しぶりじゃ29号!カエルの中の旅はどうじゃった?わしらにおみやげ買って来てくれたか?イヒヒヒヒ!」
「ギャハハハハハ!」
「29号のやつ、痙攣してやがるぜ!イヒヒヒ!白目で魚のように激しく痙攣してやがる!ギヒヒヒヒ!わしらを笑い死なすつもりなのか!」
「ガハハハ!こりゃたまらん!わしらが先に笑い死ぬか、29号が先に死ぬかのどっちかじゃで!イーヒヒヒ!」
「うわっ!29号のやつ、ゲロ吐いたぞ。くっせえな。目もしっかりしてきた。意識が戻ったのか?」
「おい29号!返事をしろ!」
「た、隊長。はい。こ、これは今どういう状況でしょうか・・・」
「おお、気が付いたか。29号、お前はよみがえったのだぞ。死から復活したのだぞ。」
「死・・・?たしか巨大ガエルと戦っていたような・・・」
「そうじゃ。お前のおかげでしとめることが出来た。今、酒を取りにやらせておる。おい8号、下からクモ女たちを連れてきてくれ。酒と肉をただでやるといったら来るじゃろう。29号、お前は好きなだけ飲んで、好きなだけ食って、好きなだけ抱いていいぞ。」
「た、隊長・・・。ありがとうございます!恩は決して忘れません!」
「よっしゃあ!29号の復活祭じゃ!一番柔らかい肉を隊長と29号のために焼くぞ!」
「おー!」
「俺たちもクモ女抱けるかなぁ?」
「何匹来るかによるな。8号の腕しだいさ。」
「そういえばローザを見かけたけど、あいつめ逃げやがったからな。」
「ヘヘヘヘ!ローザはお前なんかじゃ落とせないさ!まあ俺にまかせときな。お前にも乳くらいは揉ませてやるさ。」
「まさか、30号と33号のやつめ、仕事をさぼってローザを追って行ったんじゃなかろうな。」
マットたちはオークたちの会話を、明かりの少ない小坑道で、息を潜めて聞いていた。
オークの祝宴は、突き当たりの大坑道で行われていたが、マットたちの小坑道は、誰も気にとめていなかった。
オークたちは奇声を上げて、巨大ガエルを解体し、その肉を焼いた。
カエル肉の脂が激しく燃え上がり、煙がマットたちのところにも立ちこめてきた。
「ここにいたら、空気がなくなっちまって、あのバカ共と一緒に俺たちまで死んでしまうぞ。」
マットはそう言って立ち上がり、オークの少ない左の方へ進んだ。
「そうだね、今がチャンスだ。煙にまぎれて、先に進もう。」
シカルも、早くここを立ち去るべく足を踏み出した。
ロイは煙の中のオークに軽蔑の視線を送りつつ、無言で2人についていった。
カエル肉の匂いを乗せた煙は、大坑道に充満し、濃霧よりもひどい視界状態となっていた。
オークらはお互いの姿が見えない中、罵声を響かせていた。
マットたちは、人間である自分たちの姿も、足音も、においも、一切気付かせることなく、進むことが出来た。
それどころか、あまりにも煙たすぎて、大坑道では自分たちの姿さえ見失うおそれがあったので、シカルはマットの服を、ロイはシカルの服をつかまなければならなかったほどだ。
先頭を行くマットは、まさに手探りで大坑道の横壁を探り当て、壁づたいに左方向へと進んでいった。
「いてっ!このクソ野郎、肉が欲しけりゃてめぇで焼きやがれ!」
マットは煙の中でオークとぶつかってしまったのだ。
一瞬マットは沈黙したものの、
「誰がお前の焼いた肉なんか欲しがるかよ、ケツの穴野郎め!」
と、オークの声真似をして言い返した。
オークの方も一瞬沈黙した。
「聞きなれねぇ声だな。てめぇは一体誰だ?」
煙の中マットは、オークの首にムチを巻き付けた。
オークは激しく暴れながら、声を絞り出そうとしたが、ムチの締まりで呼吸さえ不可能な状態だ。
オークは苦し紛れに、カエル肉を突き刺したままの剣を振り回したが、それは肉と一緒に剣もロイにつかまれ、オークの手からもぎとられてしまった。
それでもオークは、バタバタと両足で宙を蹴り、そして両手は締め付けられているムチをほどこうとして首根っこを掻きむしっている。
しかし、急に激しい痙攣を起こしたかと思うと、ぐったりと手足をぶらさげ、全く動かなくなった。
マットがムチを解くと、オークの体がドスンと地面に落下した。
3人は煙の中を抜けて、キレイな空気のところに出ると、目の前には大坑道が横切り、その右手には門が見えた。
それが、地下5階へと続くものであることは、簡単に推測できた。
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