第7話 地下1階 直線に進む大坑道

「はやくジェイコブたちに追いつかなければな。」


マットが早足で隊を進める。


「火を持ってないだろうから、真っ暗闇の中そんなに進めてないはずだよ。」シカルの足も負けじと速くなる。


「壁にランプが掛けてあるな。


この坑道も、以前は明るく照らされていたってことか。」


マットはシカルの返事を気にかけず、まわりを観察する。




昔はトロッコが走っていたレールの上を、今は3人が急ぐ。


すると、呆気なく早くも昇降機が見えた。その先は突き当たりだ。




「ジェイコブたちは、先に地下に降りたようだな。


岩で入り口を塞ぐ前に、太陽の微かな光を頼って、この下に降りたんだろう。」マットは手動式の昇降機のあたりを観察しながら言った。


「あるいは、小さなランプを持っている可能性が高いと思うよ。


いくら闇に慣れているからと言っても、全く明かりがなくちゃどうにもならない。猫じゃないんだからね。」シカルが推測する。


「そうかもな。さて、昇降機の横に階段があるぞ。


木で出来ている。丈夫そうだが、1人ずつ慎重に降りようぜ。


悪いがロイは最後だ。重みに耐えられないかもしれないからな。」


「わかっただ。」


マットの言葉に、素直に従うロイ。


こうして、3人はいよいよ地下へと足を踏み入れた。




――地下1階――




シカル、マット、ロイの順で地下1階へと続く階段を降りた。


作りは頑丈であり、軋む音ひとつもしない。




「この階段と昇降機が、最下層までつながっていれば楽だったのにね。」


地下1階の地を踏みしめ、シカルがつぶやいた。


「まあな。しかし、銀脈とやらは天の邪鬼で、好き勝手に延びているらしい。


人間たちの効率に合わせてくれないのさ。」


マットはあたりを照らし、坑道が一方向へしか伸びていないのを確認する。


「俺たちが午前に行った、あの谷間の方角へ伸びている。


下へ降りるだけじゃなく、走って来た距離を戻るわけだから、大変な距離だぞ。」


「うわあ。そう言われればそうだった。


結局僕たちは、地下を通ってあの断崖まで戻らなくちゃいけないのだったなぁ。」


シカルの言葉が力なく響く。




坑道は、天井が低いせいで少し圧迫感がある。


低いといっても、大男ロイの頭の上にはまだ余裕がある。


その代わりに横幅が広く、人が10人横に並んで歩けそうなくらいだ。


トロッコ用のレールが敷いてあるので、それに沿って進めば、地下2階への階段に辿り着けそうである。


壁には等間隔にランプが設置されており、火をつければこの坑道の美しさが見られよう。


しかし、マット、シカル、ロイのパーティはそんなことで時間を無駄に使わず、自身の持つ松明の明かりだけで満足のようだ。


最後尾を歩いていたロイが、ふと止まって天井を照らす。


マットとシカルも何事かと振り返り、天井を見る。




コウモリ・・・?




3人は無言のまま、しばし1羽の動かぬコウモリを観察する。


そして、コウモリの夢を邪魔してはならぬとばかり、またレールに沿って歩き始めた。




パーティがしばらく進むと、横壁に小さな坑道をちらほらと見かけるようになった。


興味があるのか、マットがそのうちの一つに入り、火で小坑道の先を照らすと、




バタバタバタ




コウモリたちが騒ぎだした。


シカルの非難するような視線を受け流しながらも、マットは坑道に戻り、先頭を切って歩みを速めるのであった。




彼らの行進は速さを増し、小坑道や天井のコウモリでさえ、二度と彼らの歩みを止めることが出来ないようだ。


そしてレールに沿った一直線は、ついに突き当たりへと辿り着いたのであった。




「結局ジェイコブたちとは合流出来なかったな。


まあ、地下2階では会えるだろうよ。」


マットは新たな昇降機と階段を確認し、自らが一番に階段を降りて行くのであった。


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