第6話 魔王の話
魔王の羽で魔王城へ帰るのに、たいした時間はかからなかった。魔王城へ帰ると、魔王の従者らしき人が涙目で待っていた。
「魔王様…誰にも伝えずに外出するのはやめてくださいとあれほど…。」
魔王様にかなりの下から目線で注意する従者は、私に気づき、彼女は誰ですかと尋ねた。
「…さあな。これから決める。」
どういう意味だろうか?これから客人が邪魔者が決めるという意味だろうか…。
「二人にしろ。」
「は、はっ。」
従者らしき人は下がっていき、魔王と二人きりになった。
「話って?」
私から話を切り出す。話とは、いったいなんなのだろうか。
「……おまえ、俺のこと好きなのか?」
「……は?」
意味がわからない。確かにかっこいいだとかイケメンだとかは思った。でも、好きだなんて一度思っていないし、よく知りもしない人と添い遂げたいだなんて思わない。
「そうか。それは失礼した。」
「……え?」
もしかして、心の声が漏れてる?
「読心術だ。おまえは使えないのか?」
急いで確認してみると、どうやら使えるようだ。この世界、なんでもありなんだな……。
「確かに、嫌いではないけれど……。
」
「では、俺の妻になってくれないか?」
「……は?」
嫌いではない。けれど、いきなり妻になれと言われれば流石に驚くものだ。先ほどから、は?や、え?ばかりの会話で申し訳ないが、本当に意味がわからないのだ。
なぜ、と理由を聞いてみると、帰ってきたのは納得の理由だった。
「あまり強くないものを嫁にしたくないのだ。」
それなら納得だ。魔王たるもの、見合うものでないと従者たちが反対するのだろう。
「すでに候補は挙げられているのだが、あまり好みではなくて……その、ちょっと性格が……。」
なるほど。強さとか身分を重視した結果そうなったと……。
「けれど、お前ならいい。俺は、お前が好きだ!」
「え、まじでなんなの?本気?正気?」
「本気だ。そして気は狂っていない。」
魔王の目を見る限り、確かに本気のようだ。真剣な表情をしている。
「ど、どこに掘れる要素があったの……?」
私がそう聞くと魔王は私の手を取り答えた。
「身の危険をおかしてまで俺に人間の王のことを知らせにきてくれたことだ。」
「うん、もうどうでもいいから手、離してくれない?」
なんか、もうどうでも良くなってきた……。
「どうでも良くなってきた!?では、俺と結婚してくれるのか!?」
な、なんか乙女ゲームみたいになってきた。
私は異世界に来て、冒険がしたかったのお!恋愛ゲームがしたいんじゃないのよお!
「そうか、では旅に出よう。」
「もういやあ!」
勇者の裏切り〜なぜか魔王と恋することになりました!?〜 空月 若葉 @haruka0401
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