転生したら悪役令嬢に…敵対している国の王子に溺愛されたので逃亡しました

@natsu39

第1話 それが運命

いつも窮屈だった。

私が、駄目な子だからこんなことになっているのかもしれない。

周りは張り詰めたような笑いを見せてくる。

他人が信用出来ない。

〇〇さんは凄いねと投げ掛けてくるものばかり。

そんな世界終わらせてやろうかと考えて、思考をめぐらす日々。

きっと、終わりのないこの世界。変化も訪れない窮屈な日々。

それは、突然に終わりを告げた。


目が覚めると知らない天井が見えた。

真っ白な天井に、ふかふかのベッド。家のものとは違う感触に驚きを隠せなかったが、その感触以外にも違和感を覚えた。

いつも感じている目線より低い。

子供の目線と言うものだろうか……周りに見える景色がいつもより低く見える。

「セレナ様!!やっと起きられましたか」

見知らぬ女性が手を掴み強く握った。

女性はどうやら使用人のようで、メイド服を着ている。

「セレナ……?」

「そうですよ!セレナ様は木から落ちられたので、強く打たれたので私含め皆心配していました」

「……木から?落ちたってどういう事」

「セレナ様は突然木に登られて、木から落ちたのですよ」

セレナとは誰の事だろうか?どこかで聞いたことある名前だ。そして、そのセレナは馬鹿なのか。

「心配下さってありがとうございます。以後気をつけますね。迷惑かけてごめんなさいね」

私は状況把握が出来ず、その言葉を投げ掛けるしかなかった。

「セリア様……お優しい」

メイドは泣きながら言うのだった。

それから暫くして、部屋から出て探索をする事にした。

探索して判った事だけど、この世界は私の住んでいたところとは全くの別世界。そして、何故か私は令嬢。

状況が理解できない……。

考えふけっていると、庭園に着いていた。

庭園は広く、色々な花が咲いていた。

庭園には先約がいたようで、小さな影が可愛く踊っている。

「貴方は誰?」

私はその影に声をかけてみた。その影はオドオドしながら、周りをウロウロと見ていた。

「……お姉様僕を虐めるですよね……今日は何を……」

「へ??虐め?」

小さくて可愛らしい少年だった。髪は金髪で眼は深紅の瞳。何かを見透かすような強い眼差しをしている。少年は私を見た途端に脅えていた。

少年の態度が気に食わないが、怯えられる理由が判らない。

「虐めないわよ、ところで貴方の名前を聞いてもいいかしら」

私はその小さな頭を撫でる。

「……お姉様……撫でてくれた。いつも話して下さらないのに……。僕はクライン。お姉様の義弟」

少年は少しだけにっこりと笑みを浮かべた。

義弟……クライン……あ……全てが繋がった。この世界は私鷹城梓がプレイしていた乙女ゲームの世界だ。作品名までは思い出せないが、登場キャラは覚えている。その世界ならセレナは死んでしまう。クラインが脅えていたのにも覚えがある。

まさか……転生??

有り得ない。でも、この状況は転生以外に何があるのだろうか……私は死んでしまったのか。覚えがない死に恐怖を覚えた。

死に脅えていたら、この世界を生きられない……今度こそ窮屈な世界から脱出したい。

私自身の人生は終わってしまったけれど、セレナの人生は変えることが出来る筈。

変えてみせよう。

「……お姉様考え事ですか……?」

クラインはオドオドしながら私に声をかける。

どうやら、クラインを放置して考えに老けていたようだ。

「クラインそんなに怯えなくても大丈夫よ。私は何もしないから。後ねお姉様呼びじゃなくてもいいのに」

「……いえ……お姉様は僕より位の高い方なので……名前呼びは下の人間である僕がしていいものではありません」

「……そんなもの気にしなくていいのに。クラインと私は同じ人間じゃない。位とか関係なく家族でしょ。家族なのに畏まられたら窮屈過ぎてイライラしてしまうわ。だからね、お願いだから名前で呼びなさい」

「……いいのでしょうか……僕がお姉様の名前を呼んでも」

オドオドしたその態度にイライラを覚えてか、私はクラインの頬を叩いた。

バンっと強い音が響いた。

「……」

「オドオドすんな。男でしょ。そんなに私が怖い?確かに今までの私は貴方が傷つく事をしてきたかもしれない。だけどね、そのオドオドした態度気に食わないわ」

「……」

クラインは状況を理解できていないのか叩かれた頬を手で抑えていた。

「さあ、言いなさい」

「……呼び捨ては出来ません。何と呼べばいいのですか。僕には判りません」

「……そうね……姉さんでもいいけど、出来れば名前呼びがいいわね」

「……姉さんの方がまだ、難易度低くていいです」

クラインは納得していないのかやや不服そうな顔をしている。

「姉さんでいいわ。これからよろしくね」

「……よろしくお願いします、姉さん」

私はくらいに向けて飛びっきりの笑を見せた。

クラインも笑顔を少しだけ浮かべた。

セレナは傲慢でワガママな悪役令嬢。義弟のクラインにすらワガママを振りかざしていた。

そんなセレナに虐められた記憶しかないクラインは物語終盤でセレナを殺してしまう。そしてヒロインとハッピーエンド。

私がセレナとして生きる以上バッドエンドは許せない。

これが運命と言うのなら、運命を変えてみせる。

その後、待ち受ける運命なぞ知らないまま。

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