第6章 グランの部屋

「えーー!!? 」


 タニルが突然口にした言葉に、アルウィは自分が誤解しているのかもしれないと思って、顔を真っ赤にした。


「あ!……つまり、私たち三人、一緒にここを出て、冒険に行く! 勇者、女武神、精霊などだから、やりたいことはできるのではないだろうか?」


 タニルは言葉遣いを間違えたことに気づき、あわてて弁解した。


「ああ……そう、そう!…そうですね!…そういう意味だったのか…」


 誤解を解いた後、アルウィは徐々にリラックスしてきた。


「さっきの問題については、今グランに行きましょう。 三人で一緒に何とかしよう。」


 同じようにほっとしたタニルはこう言った。




 二人がグランの部屋に来ると、相手はもう長い間待っていたようだった。 二人の説明を聞いてから、


「そうか、家を出たのか… 確かに、伯父さんと伯母さんにはあまり良くないが、今のところ、冒険旅行に乗り出す唯一の方法だな。 」


 背が高く、ハンサムで、髪の少し長いエルフの少年、今は片手で顎を支えていた。


「生計を立てるには、大胆なアイデアがある。 実は簡単で、もともと私は弓を射ることができて、今では三人とも戦闘スキルを身につける――狩りと商売で、旅に必要な費用を稼ぐことができる。

食べ物と睡眠はもちろん。私たちのピクニックは初めてではない。」


 グランの分析はわかりやすく、アルウィは両眼を両眼がきらきらしていた。 タニルは注意深く耳を傾けたが、何とか話したくてやめた。


「どうしたの、タニル? 」


 グランはタニルの異様な反応に察知した。


 アルウィは不思議そうな顔をして、二人をあちこち見たが、まばたきをした。


「いや、別に……」


 タニルは言葉を左右にして、すぐにまた言った、


「ところで、冒険するなら。 旅の最初の目標として、どこへ行けばいいんだ?」

「王都!! 」


 アルウィは突発的な奇想のようで、二人の表情を楽しみにしていて、


「王都はどうだ? 王都、一度も行ったことがないよ。」

「小さい頃から村の周りを回っていただけで、どこにも行ったことがないだろう! 限り遠くても男爵様の城を見ただけだろう!」


 なぜか大都市への憧れに突然満たされたアルウィを、タニルはすぐにツッコミを入れた。 アルウィは不機嫌そうに彼の頭を撮った。


 そばにいたグランは微笑んだ後、一人で考えてい。


「王都はいいアイデアだが、『悪』を倒すには、もっと辺鄙な場所に行ったほうがいいだろう?」


 グランは真剣に分析した。 アルウィも意味ありげにうなずいた、


「確かにね… 私たちは悪を懲らしめ、善を行いて…何か『心のエネルギー』を手に入れなければならないよ?」

「でも、『心のエネルギー』とは何なの? 私もタニルも、光の女神から聞いただけで、自分の目で見たことがない。――『心のエネルギー』というものは存在しないのかもしれない。」


 グランは理性的に質疑したが。 アルウィはすぐに反論する。


「あの光の女神が救ってくれたんだよ! 私は間違いなく光の女神を信じている。 私も自分のを信じている――女神の意志を持ち、聖剣破片の転生だと。」


 アルウィは自身の胸を軽く叩いた。――ちょっとおもしろいが、光の女神は彼女に憑いていたので、彼女は光の女神と直接交流したことはなかった。


「でもそれなら…」


 タニルはそれを少し信じられない、


「もし聖剣が修復されたら、アルウィ消えるのではないか!? 光の女神はできないと言っていたが……万が一には?」

「そうでなければ、もう一度光の女神に会いましょう?」


 グランは提案した。アルウィも頷いた。


 そして、タニルは小さく叫んだ。


光の女神アルウィに憑依者!…」


 すぐに、タニルの期待で、アルウィの意識が再び取って代わられ、体はかすかに光って、ふわりと浮き上がっていた。


「何を聞きたいですか? 勇者タニルくん。」


 再び現れた女神の意志は、まだ優しさに満ちていた。


「実は… アルウィのことが心配です。」


 タニルが直言した。 その後、グランは引き継いだ、


「光の女神様、私の心配はタニルと同じです。 改めて尋ねるのは無礼に思えますが――聖剣が修復されたら、 聖剣破片の転生のアルウィ、本当になくならないでしょうか?」

「もちろんできません。」


 光の女神は肯定的に答えた。


「聖剣の修復合成は、女神の意志の能力を聖剣に移すだけです。 それと同時に、アルウィは私を呼び覚ます媒介者として利用されません。

しかし、アルウィあの子は相変わらず、 特別な女武神であり、獲得した魔法の能力は消えません。」

「そうですか… それはよかった。」


 光の女神の解釈は、グランとタニルを安心させた。


 しかし、タニルもこの機会に、同じように重要な問題を提起した。


「でも、私たちはどこに行けばいいですか? 聖剣の破片がどこに沈んだかはともかく。 冒険の最初のステップで、どこに行くべきですか?」

「リア――、」


 タニルの疑いに、光の女神はその魔女について言及した。


「あちこちで人の心をかき回し、紛争を起こした人。 それがリア。 彼女を探して、阻止するのはいい選択です。」

「リア?あの怪しいやつ?」


 タニルは昨日の出来事を思い出した。 魔剣、騎士、オーガ――その魔剣を背負った邪悪な女が、すべての原因になっているようだった。


「彼女はいったい何者だ?」


 淡い黄色の微光がタニルとグランの顔に映っていた。二人が見守る中、アルウィに憑依した光の女神は冷ややかに言った。


「闇の神の人間の代理人だ。 魔剣が封印されて以来、闇の神はこの世界に姿を現すことができない。 リアの過去については……闇の神が時空を障害しているので、私も知りません。 」


 光の女神はまだ話し終わっていないようで、二人は静かに、真剣に聞いていた。


「闇の神が作った神器、魔剣は、多くの強力な力を持ち、その中にタイムスリップを含む。 リアはこれによって混乱を引き起こします。」

「タイムスリップ!? 」


 グランは怪訝そうに、光の女神の言う、認識を超えた言葉に疑問を呈した。


「……それは過去に戻り、未来に行くということですか?」

「そうです。 同様に、私達も過去を修正することができまる――このような方法で、リアの非行を阻止します。 だが、完全な聖剣の力がないため、魔剣に干渉された時空に連れて行くしかないです。」


 穏やかな顔をした光の女神が、二人のこれまでの常識を破った発言を次々と口にした。


「そうか… でも、リアはどこに行く可能性がありますか?」


 タニルは困惑を申し出た。


「これについては、簡単にヒントを与えます。 けど未来には無数の可能性があり、最終的には自分を信じることしかできません。 今回に至っては、私の予測では、リアが一番行きそうなところは、月の都です。」

「月の都?」


 タニルがそれを聞いたこともなく、質問を続けようとしたとき。アルウィの体の光芒は急に薄れ、また元の姿に戻り、空中に浮いていた体も次に下がった。


 タニルはアルウィを受け止め、しばらくして、相手が目を覚ました。 前の二回に比べて、彼女の目が覚めた時間は大幅に短縮された。


「さっき、光の女神は何を言ったの?」


 アルウィが憑依された時の記憶がなくなり、タニルは懸命に説明した。 彼女がやっとタニルの説明を理解してから、壁に寄りかかっていたグランは呟いた。


「月の都だとはな…」


 先ほどから驚いたような顔をしていたグラン、今は何かを考えて頷いた。


 アルウィ顔には好奇心がいっぱい書かれていた。


「月の都? それはどこ? …タニル、聞いたことある?」

「ないんだ。」


 タニルは首を横に振った。 そこでグランは説明した。


「月の都は空に浮かぶ島の都市で、曲がった月のような形をしているため、その名前がついた。」

「空に浮いているの?!!」


 アルウィは興奮してきた。


「なにそれ?! 超行ってみたい!」


 アルウィの反応に、二人は思わず笑った。 でもグランはすぐに不安そうな顔をした。


「月の都に行くなら、そこにあるものは高価だと言われていた。 どこに住んでも問題になる。」


 グランの言葉は、アルウィを現実に戻しまった。 さっきまで興奮していたアルウィが、今かなり落胆している。


「君たち二人とも、ちょっと待ってて」


 タニルが突然口を開いた。


「ちょっと行ってくる。」


 続いて、アルウィとグランの知らない目の中で、タニルはグランの部屋を出て行った。 そしてしばらくして、タニルはまた戻ってきた。


 二人の好奇心に満ちた視線の下て、タ二ルは手に、非常に重いように見える布袋を持っている。勇者になった後、力が強くなるようだった。 


 彼はふらふらとグランの部屋に入ると、背中を使って部屋のドアを閉めた。


 布袋を開けたら――中には貨幣と他の財物がいっぱい入っていた。


「たくさんある!……」


 布袋の中の財物を見て、二人は思わず息を呑んだ。 やがてアルウィは疑いの表情をした。


「タニル。 これらのものを、まさか君は……犠牲になった兵士達から、捜索したのか?」


 ずばりのようだって、タニルは少しばつが悪くて、ちょっと頷いた。


「ねえ……タニル?! どうしてそんな事をすることができて、何の勇者なのか?! 本当に怒ってる。 返せ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る