第5章 ママ、私は女武神!
「だめだ、絶対だめだ!」
アルウィの突然の決断に、彼女の母はとても怒っていた。
「どうして——!?」
アルウィは足を踏み鳴らして、ぷんぷんとして母を見ていたが、母は少しも譲歩する気がしなかった。
母娘二人は正室の食卓の両側を回っているが、母は反対しながらも、娘をどう勧めたらいいのか分からない。 目下双方が相対峙して譲らないで、そばに座って本を読んでいた男主人は、とてもストレスを感じて、場を丸くしようとする。
「アルウィ、今、外の世界は乱れて不安な状態にあるな。帝国と連合軍はいつでも戦争になるかもしれない。 そして、その日君はタニルとグランの三人で、帰ってきた時は、血まみれになった……その日、村外でも多くの兵士が死んだ。」
タニルとグランはそばに立っていて、グランはタニルより身長が一つ頭多い高さだ。 二人は慎重に食卓の周りの雰囲気を観察していた。 アルウィの父の話を聞いて、二人は項垂れた。
「分かってる! でも!!」
アルウィは葛藤していた。 父の言うことは筋が通っているが,彼女は反論する気があるにもかかわらず。
アルウィの一家の口げんかを聞きながら、タニルは右手を上げ、自分の手のひらを見下ろしている――彼が思うなら、今の彼は、一般人を超える力を使うことができる。
この前の事件の結果は――
それは戦いとは言えず、オーガは簡単に切り裂かれた。
タニルが気がつくと、魔女リアはすでにどこへ行ったのか分からず、兵士達も負傷者を背負って離れようとしていた。 そして、アルウィに憑いていた光の女神の意識が消えたようで、アルウィも昏睡状態に陥った。
昏睡状態のアルウィはタニルとグランに背負われて家に帰り、夜になってようやく目が覚めたが、目覚めたアルウィは光の女神憑依していた間の記憶がない。 二人の説明を経て、アルウィはその時の状況をやっと理解した。
「…だから、光の女神という神様がいるよ。 ママも知っているだろう、お年寄りたちが信奉しているあの女神様! 彼女がタニルとグランに言った、世界は危機に陥るぞ!」
アルウィは頑張って論争しているが、母は取り合わない。
「という話を、今朝から言っていたね。 もう聞きうんざりした」
両親もあまり信じていない様子を見て、アルウィの心の中は更に焦り、すべて顔に書いていた。
「本当だ! 信じないなら、見てみろ!“
アルウィは急にまっすぐに立って、目を閉じた。 続いて、彼女が脳の中でどのような瞑想をしたか知らないのは――銀白の長い槍が、どこからともなく彼女の右手に現れた。
暖かいようで、冷たいようで。 突然現れた乳白色の霧と微光を発する武器に、アルウィの両親はびっくりして、無意識に身を退いてしまった。
「この槍は、『全知の銃』だ。そして私は女武神。 わかったか、ママ?」
アルウィは深く信じて言って、母の理解を期待している。
アルウィの手にした煙が上がっている槍を見て、タニルは昨夜のことを思い出した。
昨夜は――
アルウィが目を覚ました後、夜明けにはもう一度、光の女神が彼女の身に憑いて現れた。
今回、光の女神は多くのことを説明した。
例えば、勇者は悪を懲らしめ、善を上げることで、『心のエネルギー』というものを得る必要がある――勇者の能力の向上や、聖剣の修復に役立つと言われていた。
例えば、アルウィは……
「はあ? 私の娘は聖剣の破片の生まれ変わり?」
母はアルウィの言葉に笑いを誘った。
「あなたの腕はどこから習ったのか分からないが。 金属の破片が生まれ変わり、生き人間になるなんて……奇想天外すぎる!」
「私は冗談じゃないのに!!」
アルウィは大きな声で反論した、とてもまじめに。
「まあまあ、母さん、アルウィを信じてくれ。 せっかくアルウィが本気なんだから。 もしかしたら、うちの娘は本当に出世したのかもしれない」
父の言い分がうまくいったらしく、母は考えた末に、いくつかの譲歩をすることにした。
「わかった。 アルウィ、あなたを信じているよ。」
母はそう言ったが、両腕をもっとしっかりと抱えていた。
「しかし、あなたが女武神であっても、外に出て冒険することは絶対に許されません! 非常に危険なことです!」
「どうして!!!?」
アルウィは再度大きな声で尋ねた。さっき彼女が母に努力に説明したが、ほとんど無駄になってしまった。
母はついに見向きもせず、振り向いて食卓を離れた。
「ふん!! もう二度とママと話さない!!」
母にひどい言い放つと、アルウィも踵を返して去っていく。 母と娘は気まずい思いをして別れまった。
タニルは目の前のどたばた劇を見て愕然としたが。 グランはもう耐えられなかった、
「アルウィ、ちょっと待って!」
グランは何か言おうとらしく、アルウィの肩に手を伸ばした。
だが、アルウィは抵抗してグランの手を叩き離れ、「ふん」と言い、正室を後にしまった。 タニルとグランの見送られ、彼女が廊下の曲がり角に消え、トントンと階段を駆け上がった。
「タニル、」
心配そうな顔をして、男エルフはそばにいる仲間の方を振り向いた。
「アルウィのことに……君を頼むよ」
時間は夜になった。
タニルは家の裏庭で、アルウィを見つけた。 昼間は一日中、アルウィは彼女の部屋に閉じこもっていた。
「アルウィ、何を見ているの? うちの裏庭は、夜にはあまり良い景色がないよ?」
タニルはそう言いながら、ごく自然なふりをして近づいて来ている。
しかし、アルウィはずっと自分に背を向け、何も答えなかった。
そして、タニルはアルウィの後ろから、アルウィの側へと歩いていった。 けど怒っているアルウィも首をひねった。
「アルウィ、確かに…俺たちはそんな能力を突然得た。 でも、『魔剣』とか『封印』とか『危機』とか… そんなこと、君はどう思う?」
「私がどう思うのか、重要ではないでしょう?」
アルウィは明らかに母親との喧嘩に怒っていて、タニルの初歩的なコミュニケーションの試みはうまくいかなかった。
「実は、君の本音知りたいだ。 俺から見れば、伯母さんも心配…」
アルウィは冷たい目でタニルを見た。
タニルが口にしたばかりの言葉を、また飲み込んでしまった。
タニルでは、二人の関係が少し危険になっていると意識したとき。 これから長い間、 アルウィは彼と話したがらないかもしれない。 此処の沈黙がちょうど長い間続いていたとき。
アルウィは沈黙を破った。
「行けないなら……これ全部を忘れてしまえばいい。」
タニルが努力して、どう応えるべきかを考えていた時、
アルウィは一人で離れた。
「おい!!」
タニルはすぐ後ろに続いて。 そしてアルウィは足を速めた。
「しかし、聖剣は砕け、一部は海底に沈んだとはいえ。 海底の聖剣の破片はどう探して?――光の女神はまったくヒントを与えなかった!」
「その時になら分かるでしょう。」
アルウィは足早に裏庭から部屋に入り、右に二歩歩き、すぐに背を向けて左に歩いて、タニルを振り払おうとしている。
しかしタニルはフォローをやめず、説明もやめない。
「けどどうやって生計を立てるのか? そもそも、冒険の目的地はどこだ?」
タニルがそう言うと、アルウィは怒ったように振り向け、タニルをにらみつけた、
……
が、答えられなかった。
すると、大粒の涙がアルウィの目から込み上げしまった! アルウィももう逃げず、しゃがみこんで、 梨花や雨のような泣き顔を、白く柔らかい両腕の中に埋めた。
アルウィが低い声で泣いているのを聞いて、タニルは愚かにも彼女の前に立ってて、何をすべきか分からない。
「タニル……君も、グランも、父を母をいない。」
予想外に、アルウィは口を開いた。
タニルはきょとんとしたが、すぐには何の驚きもなく、ただ辛抱強く聞いていた。
「外の世界には、君たちのような人はまだ、きっとたくさんいるの。 私はただ、時々考えだった。 もし……みんなが幸せになれたら」
少女の泣き声で、アルウィはとぎれとぎれに、この話を言い終えた。
それを聞いて、タニルは心を暖かずにはいられず、優しく笑って、そしてもしゃがんた。
アルウィは単純で善良――タニルはよく知っている。
彼女はやってみようとしたが、一体どうすればいいのか?
「じゃ、 駆け落ちしましょう。」
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