第3章 高貴と勇気の花

「チッっっ」


 文句の声をあげて、騎士は馬上から上半身を起こし、再び二人を幾つか瞥して、意地悪をしないことにした。今、あの女を確実につかむことがより大事なことだ。


ドーンとーー!!


 林の中で大きな音がして、川のほとりのすべての人を引きつけました。


「兵士たち、見に行けーー!!」


 帝国騎士は直ちに命令した。兵士たちは彼に従って、声が来る場所へ急いで馬を走らせた。


「アルウィだ…まさかアルウィに何かあったのか!?」


 タニルは慌てて、目の前の荒廃した野炊場もかまわず、すぐに立ち上がった。


「タニル、君は武器を持っていない! そこに行くのは危険だ!」


 グランは阻止しようとした。彼自身は弓矢を持っているが、役に立つ保証はない。


「もう時間がない――!!」


 タニルは焦って叫んだ。




 林の中で、大きくも小さくもない灌木が倒れた。


 変なお姉さんの両手からの紫の光弾がかすかに震えている。さっき彼女はこれを使って、アルウィの命を奪おうとした。


 幸いアルウィ反応が早いので、間一髪のところで攻撃をかわしたら、が、そうでなければあの木よりも惨めな末路になるだろう。


 相手は再び魔弾を投げ、今度は魔弾が地面に叩きつけられ、また少なからぬ爆撃が発生した。


「ひゃっっ!!」


 相手はただ遊んでいるようだ。アルウィは頑張って寝返りを打つか、避けたが、太ももを地面にこすりつけ、皮膚を破って血を流した。


 そのとき、帝国騎士とその兵士たち、そしてタニルとグランの二人が、声を追ってここに駆けつけた。


「「アルウィ!!」」


 二人の仲間はほとんど同時に声を叫んだ。グランは弓と矢を手に、タニルは料理用の鉄のスプーンを握りしめていた。


「タニル!! グラン!!」


 アルウィはとても喜んだ。


 一方、この余分な少女を気にせず、帝国騎士は魔剣を背負った謎の女をじっと見ていた。


「貴様だろ? 『魔剣のリア』!……やっと俺に貴様に出会って、本当に大功労だ!!」

「はあ…」


 リア呼ばれる女は、騎士の前を歩き、無関心に平気で両手を広げた。


「こんなに情熱的で、私とデートするのかと思っていましたね。 あなたを断ったのに、まだ分かりませんか?」

「バカなことを言うな。 貴様のような恐ろしい女……ブライトン全国で、貴様を指名手配されているんだ!」


 義憤に燃える口調だが、内心の狂喜に耐えられなかったかのように、騎士は獰猛な顔に見えた。


 騎士とリアが対峙する間に、グランはアルウィとタニルの肩を叩いた。


「彼らに放っておいて、撤退しよう!」


 グランに合図されて、二人の仲間もすぐに身を起こした。


バンーー!!


 力強い一撃、さっきよりも速い魔法。アルウィの前の足元に、黒こげの泥の穴が突き刺さった。


「どこにも行きたくないですよ。」

「……」


 リアの警告のため、三人はおとなしく林の中にいて、リアと馬上に乗った男たちとがさらに対峙しているのを見ていた。


「騎士様!『魔剣のリヤ』は危険な女だと聞きました! それに先程の魔法を見てください、やっぱりやめましょう!」


 一人の兵士は、誠実に騎士を勧告した。 確かに、武器と鎧を外せば、彼らはただの普通の人間だ。


「お前ら……腰の剣は何のためだ? 弓は何のためだ?」


 臆病な手下を教訓にしながら、騎士は馬から飛び降りた。目の前で魔法を使う邪悪な女と戦えば、馬に乗るのは多くの不便をもたらすだけだ。


「援護すれ!!」


 騎士は剣を持って突進した。


 リアの前に出ると、騎士は猛烈な攻撃を展開した。しかし、相手は遊びのように、なんともいえない微笑みを浮かべ、そのたびに狡猾に避けていた。


「貴様だけ手管が……できると思うな!」


 ソードカットがもう一度外れた後、騎士は身体を回転させ、リアの首に掛かっているものを掴み。 それをぐいと引き離した。


「おっと!……これは何だ?」


 騎士は手にしたペンダントを揺らし、ペンダントは金属でできていて、形は花であった。


「私の『タイム麝香草』!」


 リアは声をあげて叫んだ。


「『タイム』って言うんだか、アハハハー!!」


 騎士は調子に乗った。『魔剣のリア』と戦って、手軽に優位に立つことができたのは、が最初かもしれない。 少なくとも彼はそう思っていた。


 リアは表情を曇らせ、冷ややかに騎士を敵視している。

 騎士はペンダントをしげしげと見てから、さりげなく口を開いた。


「どんな魔法がついた道具だと思思ったんだけどね……どうやら、ただのくず鉄のようだ」


 騎士は皮肉を言うと同時に、リアの表情の変化にも注意して、この女のいつでも展開できる反撃を警戒していた。


 なぜリアがぐずぐずして前に進まないのか、彼は疑っている時、相手は暗い顔をして、黙って背中の魔剣を外し、軽く前の地面に挿し込んだ。


 騎士は後悔する時間がなく、相手は魔剣に纏わる古い包帯をわずかに緩めた。


 傍観者たちは皆呆然としていて、これから何が起こるかわからない。 ただクランが驚きの声をあげている、


「これは!……これは何だ!?」


 ハイエルフとして、クランは本能的に、その変な大剣の周りに異常に流れる魔力を感じていた。


 そして次の瞬間、彼だけでなく、その場にいた全員が、抑圧された力に震え上がって、数歩よろめいた。


「それは……魔剣?!」


 恐ろしい圧迫を実感したタニルは、心臓が飛び出そうと感じた。 彼は片手を後ろのアルウィをかばい、リアの前の魔剣の変化を見つめていた。


 地上に挿したというよりは、地面に浮いていて、魔剣の剣の先は地面と接触していなかった。解放された包帯も地面に落ちず、刀身をまわり、ふわりと浮いていた。


「ゲロロっっ、ゲロ。」


 嘔吐のような声をあげた。 騎士の瞳は白くなり、まっすぐに見ていのは、魔剣なのかリアなのか分からない。


 さっきまで冷たい顔をしていたリア、今は、愉悦的な顔をしていた。


「俺は、騎士……である。 俺は……いっ……たい……な……」


 屈強な姿の騎士が、震える声で言った。


 リアは少し曖昧に彼を見ている、


「もっと素直に、自分に直面しなさいっっ?」

「女は金に汚い……男はエロ好み……」


 騎士は独りでつぶやいて、呆然としている。


「アルウィ、下がって! この男はおかしい!」


 声が激しいタニルが後ろを振り返ると、アルウィおとなしく何歩か後退し、戸惑ったような顔をしていた。


 ガチャンと!! 音が響いた。 タニルは急いで再び前方に注意すと、騎士が手にした長剣を地面に捨てたのを見た。


「うっっげぇっっ」


 続いて、騎士の身体が、肉眼で見えるスピードで変異している! 肌の色が灰になり、体が大きくなり、身についていた騎士鎧も、暴騰した体に突き放されていた。


オーガ人食い魔!……あれは人食いのモンスターだ!」


 一部の兵士はこの怪物を知っている。 明らかなのことは、騎士はもう人間ではない。


「でも、なぜだ……」


 まだ人間の騎士であるときの意識を持っているようとが、このオーガは、理知があるようには見えない。 それは鋭い爪をした巨大な掌のひらを二回振った。 その状況をまだ理解していない兵士たちは、慎重に後ずさらなければならない。


「……なぜ皆どいつもこいつも、俺をバカにするんだ!」


 オーガは狂おしく咆哮するように叫んた。


 周りの驚く人々の中から、タニルが率先して口を開き。


「一体何をしたんだ?……リア!?」


 質問に対し、リアは扇子を畳むような優雅な動きで、包帯を自動的に巻いた魔剣を収め、また背中に戻した。


「何もしていませんね。 私はただ、この男を、彼の心の本当の欲望に従わせただけだ。 ふふふっ!」


 リアの妖しい笑い声とともに、オーガは獣性がわく、周囲の兵士――彼のかつての手下たちに対して、無差別な攻撃を展開していた。


 何人かの兵士は剣が飛ばされた、体が血を流している。何人かのは馬から落ちて、骨を折ったかもしれない。何人かのは恐らく……


「ふんふん。 では、あなたはどうしたいのですか、この少年?」


 リアはさり気無くタニルを目をやった。 ちらっと見ると、彼はいつのまにか前に出て、騎士が先ほど地面に落とした長剣を拾った。


 リアの質問にタニルは答えず、長剣を両手に握るだけだ。


オーーッッ!!


 オーガは低い声で咆哮し、ますます人間である時の理性を失ったようであった。突然、オーガはタニルの方を見た。


 いいえ、タニルの後ろだ。 タニルの背後で何かが、オーガの注意を引いているようだった。


「おい、アルウィ!?」


 何故か分からないか、後ろのグランが叫んだ。


 嫌な予感をして、タニルは振り返って見る――


 アルウィという少女は今、目を閉じている。 体には明らかに異常が生じてあった――白く、淡い黄色をかった微光が放たれていまった。

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