第10話

 夢を見ていた。

 夢の中で修太郎君は、ゆっくりと、飛行機に乗り込んでいた。


 ー修太郎君、行っちゃダメ。行かないでー


 私の声は、修太郎君のところまで届かない。


 私は後悔していた。


 ー日本は戦争に負けちゃったとか、外人さんにも家族がいて悲しむとか、どうして言っちゃったんだろう。

 せめて、悪い奴をやっつけるために行くんだって思わせてあげた方が、彼の為だったかもしれないのに。。。

 修太郎君は、今、どんな思いで行こうとしてるの?

 ねぇ。。。どうして。。修太郎君は死ななきゃいけないの?

 修太郎君だけじゃない。

 みんな。。。

 みんな若くて、未来があって、愛する人や、家族がいて。。。

 それなのに、どうしてみんな戦争なんかで死ななきゃいけないの?

 何のための戦争なの?

 どうして。。。どうして。。。。ー


 そして泣きながら目を覚ました時。。。もう彼はそこにいなかった。

「修太郎君。。。修太郎君。。。。」

 いないとわかっていながら、探さずにはいられなかった。

 声に出して名前を呼びたかった。

 でも。。。そこには恐ろしく長い静寂があるばかり。


 ー彼の為に買った服も。。。彼の為に用意した食器も。。。他にもいっぱい、想い出が残っているのに、ここには思えいっぱいなのに、どうやって忘れられるの?

 忘れられる訳ないじゃない。ー


 どうしようもない寂しさが一気に押し寄せてきて、胸に大きな穴が開いてしまったようでそこに立っている事が出来なかった。

 床に伏せて、子供のように泣きじゃくった。

 でも。。。その時。。。

 どこからともなく草笛の音が聞こえてきた。

 あの時、最後に聞かせてくれた曲。

「修太郎君?」

 私の体が、温かい光に包まれているような気がした。


 ー修太郎君。。。そばにいてくれてるんだねー


 不思議だけど、修太郎君が、、そばで見ていてくれてるんだって、私には、はっきりと感じ取る事が出来た。


 ー修太郎君、私。。。がんばって生きているいくよ。だから。。。ずっと見ててねー

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