第十二章 異世界探訪
12ー1 始まりの街?
新たな異世界トロイジェムでサバンナの水辺の周辺に拠点Aを置き、更に海岸線にも拠点Bを置いてそれぞれ4万番台のδ型ゴーレムをディアトラゾ空間に配置、周辺監視を続行させるとともに、大型軍用ステルスドローンを周辺に放つことにした。
地球産の大型ステルスドローンの航続距離は長いし、滞空時間も長い。
時速500キロほどの速度で24時間の滞空時間がある。
但し、こいつのデメリットは離着陸に比較的長い滑走路を有することだな。
最低でも長さが500m程度の平坦な滑走路が必要なんだ。
仕方が無いので作業用のゴーレムを送り込んで舗装された長さが800mの滑走路を十字型に作ったよ。
無論、掩体壕も作ったが、近距離で誰かに見られたら一発で人工物とわかる代物だが、取り敢えずはそのリスクもやむを得ない。
用済み後は文明に近い方の滑走路を撤去して元に復す予定ではある。
滑走路が出来上がると取り敢えずは、各拠点を中心に大型ステルスドローンで渦巻き状の策敵を開始させた。
高度1万5千mからの監視で得られる地表面積は、見渡すだけで670平方キロを超えるが詳細に調査するには、直近上空から調査する必要がある。
速度500キロで、幅100キロの渦巻き線を描いて12時間飛ばすと、概ね直径600キロの円内範囲がかなり詳細に確認できることになる。
徐々に索敵範囲を広げて行けば広範囲に調査が可能だろう。
4日掛けて実際に活動している都市を海岸拠点の北方に見つけた。
都市があるのは東西に250キロ、南北に160キロ程度の比較的大きな島であり、周囲を高い城壁で覆われた城塞都市だ。
居住地は高い丘陵地帯にあり、北部海岸には港もあるようだが、方位的に俺が作った拠点方向には帆船が動いている様子はない。
帆船は一本マスト若しくは二本マストに三角帆を掲げるダウ船のような形状だ。
概ね北方、北東方向、北北西方向の三方向に帆船が活動しているので、その方向に交易場所があるのだろうと思う。
地球ではダウ船は中東で活躍していたんだが、この海洋はある意味で地球の地中海若しくはインド洋的な雰囲気なのかもしれない。
文明があると分かったので飛空艇でトロイジェムに乗り込み、静止軌道上に8基、周回軌道上に12基の衛星を配置した。
上空からの監視結果だけで見る限り、どう見ても地球の15世紀程度の文明にしか見えないので、衛星を投入することにしたんだ。
静止衛星と周回偵察衛星を送り込んだことで、このトロイジェム世界の惑星地図ができあがった。
惑星の直径は赤道付近で13,250キロほどなので、地球よりほんの少し大きい程度かな。
重力加速度も、9.8102m /毎秒の二乗と殆んど地球と変わらないが、海洋比率が少し大きい。
地球の場合は7対3だったはずだが、トロイジェムの場合8対2にまで広がる。
大陸は二つだけ。
北方大陸(仮称)と南方大陸(仮称)で、北方大陸の方がやや大きい。
北方大陸と南方大陸の間に陸地でつながる地峡は無いが、南方大陸の西部と北方大陸の東部に大きな半島が突き出ており、両大陸とも向き合った海岸線がややへこんでいるために、地中海のような周囲が陸地で囲まれた海洋が間にある。
この地中海は北方大陸沿岸において多島海であり、南方大陸は不毛な砂漠状の海岸線が広がっているだけだ。
北方大陸の西方二千キロほどのところに比較的大きな島があるが、そこに文明圏は無い。
一方で、南方大陸の場合は、南方はるか沖合に島があるがこちらは極地に一部入り込むために不毛の大地である。
南方大陸には、今のところ海岸部近くの廃墟以外に文明の兆しは認められないので、現状でトロイジェムの文明圏は北方大陸だけと推測している。
文明圏の人口については未だ集計中だが、少なくとも2億程度はあるものと思われる。
俺は、別に考古学を専攻していたというわけでは無いんだが、古い文明や異なる文明というのは何となくロマンを感じさせるので昔から好きだったな。
その意味ではこの世界もなかなか面白そうだ。
今度は最初から適当な場所に秘密の拠点を設けて生活の根拠地はそこにしようと思っている。
セカンダリオのように妙に精神が疲れやすい世界でなければ良いんだが、こればかりは中に入り込んでみなくてはわからない。
いずれにせよ、衛星投入の際には最初に見つけた都市部にδ型ゴーレム二体を配置し、拠点A及びBについては廃棄、滑走路も撤去して元に復した。
この惑星の地軸の傾きは8度程度なんで四季はあるものの、季節の移ろいは左程大きなものではないかもしれない。
最初に拠点を置いた南方大陸海岸線及び水辺の近くは赤道に近い熱帯若しくは亜熱帯に当たるだろう。
緯度線で言えば、北緯5度から北緯10度近辺かな?
蒸し暑いかどうかは別として地表面の輻射温度は日中で45度以上になる地域だからヒトが住むにはあまり適していないことは確かだな。
一方の都市のある島の方だが、緯度から言うと沖縄の石垣島辺りに該当するから多分亜熱帯なんだろうね。
今は公転軌道と地軸の傾きから言うと晩春若しくは初夏辺りに相当するんだが、左程地表の輻射熱は高くは無さそうだ。
始まりの街(仮称)の人口はおよそ15万人ほどの様だ。
中世という時代を考えればかなり大きい都市だと思う。
魔法や武装については今のところ何とも言えないな。
δ型ゴーレムの40001号は、都市の中心部付近にある公園内に配置して監視をさせているんだが、まぁ、普通公園内で魔法をぶっ放したりはしないよね。
もう一体の40002号は、城壁の外に配置して適宜移動しながら調査をやらせているんだが、少なくともこの町の軍人らしき者の武装については、剣と槍と盾はありそうだ。
所謂馬も居て、騎士らしき存在も確認できているらしい。
都市の防衛機能の一つだとは思うのだが、大型の
広場では三日おきに市場が開かれており、そこで取引されている品物を見る限り、山海の食料に恵まれているとは思う。
城壁の外には放牧と農耕が行われていて、島の山岳部を除いて半分程度が農地になっている様だ。
家畜が広範囲に放牧されているところから、少なくとも魔物が居るような雰囲気では無いな。
騎士や兵士は居るんだが、さほど多くいるようには見えないな。
人口15万に対して精々5000人程度じゃないかなと思う。
尤も海軍があって、ガレー船のような船が港内には二隻配置されており、海につながる洞窟がブンカー(地下基地)となっていて、そこにはさらに4隻が隠されているようだ。
海軍力としては6隻?
まぁ、大した戦力ではなさそうだな。
それでも若し魔法が使えるならそれなりの戦力にはなるはずなんだ。
但し、俺の領内でもそうなんだが軍の中で魔法師の一団は、日ごろの練習で鍛えておかねば万が一の際に攻撃ができないから、定期的に魔法の発動練習を行う。
それには練兵場的な広い場所が必要なんだが、この都市にはそう言った攻撃魔法の練習ができるような場所がなさそうだ。
都市部だから無いということでは無くって、そもそも強力な攻撃魔法が使える者が居ないと見ても良いのかもしれない。
この島で見る限り銃砲は未だ出現していないな。
風車もあるし、水車も有るので相応の加工技術はありそうだ。
建築物の状況から見て大理石等を使った建築技術が優秀だ。
山間部に樹林があって、木造建築物も多数有るから、木工もそれなりに盛んのようだ。
都市部の市場に出て来る食料も安定的に供給できているようなので、総じて平和な中世という感じはするな。
今少しδ型ゴーレムの監視を続けてから、市内に潜り込んでみたいと考えているところだ。
因みに、始まりの街と俺が勝手に名付けたこの城塞都市の名は、「フロバリオン」というらしく、この島全体がフロバリオンの縄張りにあるようで、都市国家といえるようだ。
住んでいる種族はヒト族のみのようだ。
モスクに似た教会のようなモノが存在するので宗教はあるようだ。
普通の馬車はあるが、ローマ時代の戦車は無い。
有料の図書館があるので、δ型ゴーレムの一体に頼んで、夜間に一時拝借するようなことをして、書籍をコピーしているところだ。
三千冊を超える蔵書があるようなので、結構な図書があるわけなんだが、全て手書きであって印刷技術は発展していないようだな。
例によって俺はコピーする傍らで即座に頭の中に情報を入れているから、相応の情報を仕入れていることになる。
フロバリオンは公選で選ばれる僭主制をとっているようだ。
国王は居ないが、
往々にして
都市の中央に王宮ならぬ
王侯貴族とは言わないが相応に贅沢な暮らしをしている様だ。
資料から見る限り、
ある意味では民主主義に近い専制君主制度と言ったところだろうか?
他の地域に関する資料も有るんだが、百年以上も前の日付となっているために、現状では異なっているかもしれない。
いずれにしろ、このフロバリオンの北側に大陸が広がっており種々の国家がひしめいている様だ。
その中には、グリム王国、サルディア帝国、メルボルド王国のような大きな国もあればフロバリオンのような都市国家もあるようだ。
現状で紛争中かどうかは不明だが、中には国家同士が戦争を行っているところもあったらしい。
周回偵察衛星で見る限り大陸中央部で二か所ほど平原で戦争をしている場所があるとは思われるな。
偵察衛星の解像度が非常に上がっているので、人同士が戦っている場面も上から静止画像で確認はできる。
衛星の移動速度が速いから、戦闘シーンの動画撮影は流石に難しいが・・・。
まぁ、平和な世界ではないことがわかっている。
ついでに、戦闘シーンには獣人らしき姿もあったな。
エルフやドワーフが居るかどうかは不明だ。
因みにフロバリオンには冒険者ギルドも魔法師ギルドも無いようだ。
商業ギルドや薬師ギルドはあるし、鍛冶師ギルドもあるんだが、錬金術師ギルドはなさそうだ。
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