8-2 領内の様子

 俺の領地経営の方だが、シタデレンスタッドの入植者はついに4万人を超えた。

 シタデレンスタッドは商人が集まる街になった。


 ここには新たに冒険者ギルドができて腕利きの冒険者も集まってくる。

 シタデレンスタッドは魔境の入り口であり、ここで活動する冒険者はある程度の危険は伴うが、稼ぎが大きい、いわゆるハイリスク・ハイリターンなのだ。


 魔石や魔物の素材が高く売れる。

 魔境は珍しい魔物が多数いる場所だ。


 但し、ここではめったにソロの冒険者はいない。

 残念ながら、魔境はソロで魔物を狩れるほど甘い場所ではない。


 中級以上の者でも徒党を組んで組織的にやらないと儲けにならないのだ。

 その辺の方法は実は俺が教え、導いた。


 パーティではなくって、クラン若しくはバタリオンの結成をギルドに推奨させ、軍隊式の集団での戦闘訓練を導入させたのだ。

 魔境に入る者はすくなくともC級以上の冒険者で、しかも30人以上のクランまたはバタリオンでなければならないという規則を作っている。


 シタデレンスタッドではそのためにジェスタ国では初の冒険者養成学校も設立させている。

 シタデレンスタッドで活動する冒険者や商人たちにとって特に利益効率が高いのは薬草採取である。


 魔境は魔素が多いために、薬草の含む魔素も良質であることから他で採れる薬草から作るものよりも一クラス上のポーションなどが作成できるのだ。

 一方でウィルマリティモの方は、意図的に入域制限をかけている。


 軍事的に重要な場所であるとともに、ジェスタ国の輸出品にもなっている塩の生産地であるからだ。

 塩の売買は商業ギルドに任せず、ジェスタ王国の専売としているので、商人の入る余地はないが、シタデレンスタッド若しくは王都でウィルマリティモ製の塩は入手できる。


 そうしてまた、ウィルマリティモの製塩業が軌道に乗った段階で、入り江の奥まった方向にある造船所が徐々に稼働を始めた。

 最初に建造したのはウィルマリティモが存在する入り江を守るための警備用の戦闘艦である。


 諸外国においてもようやく魔道具を使った木造の外輪船が出現し始めているが、軍船でも大型船では毎時15ケール(距離では約30キロになるが、地球の時速にすると約20キロ≒11ノット弱)と低速なので、風向が良ければ20ノット以上で走れる帆船が未だに主流だ。

 俺が造る戦闘艦はもちろん金属製である。


 カラミガランダの丘陵地でドワーフたちが掘る豊富な鉱石を利用して、錬金術で鋼板を造り、ミスリルで表面を覆う工夫をしている。

 推進器はもちろんスクリュープロペラで、原動機は馬なし馬車に利用している原動機を大きくして出力を上げたものを使う。


 このために、船体建造部門と機関製造部門とを分けている。

 工員には、有能な鍛冶師であるドワーフや錬金術師たちを採用している。


 一号艦は60イード(約99m)級の戦闘艦フェデレシアである。

 こいつにはメッキのようなミスリル薄膜塗装が施されているので魔法攻撃に強い船体なんだ。


 地球と違って火薬を使った銃砲が発達していない世界なので、これまでの海戦は専ら魔法攻撃がメインで接近戦ではバリスタや火矢が良く使われたようだ。

 俺が造る戦闘艦は全金属性だからバリスタや火矢は寄せ付けないし、魔法攻撃もミスリル薄膜にかけた二層結界で攻撃そのものをはじき返すから、ほぼ相手の攻撃を無力化できる。


 戦闘艦であるので武器を搭載するわけだが、地球の装備を搭載してはオーバーキルになるので、新たに開発した空気波動砲を四基を装備させた。

 こいつは魔石を使った魔道具でエアーバレットを発生する。


 射程距離は500イード程度なのでかなり目標に接近する必要はあるが、木造船に対する破壊力は極めて大きい。

 直径半イード(827mm)の空気の塊が高速で打ち出され、100イードの距離で厚さ15デミ(約25センチ)の三重の板壁をぶち抜く威力がある。

 もう一つファイアーバレット砲四基も装備しているので、バリスタよりも強力な火砲になるはずだ。


 こいつも射程距離は500イード前後だ。

 尤も遠くになるほどバレットが拡大して、500イード離れた距離では50イード級の帆船が炎に覆われる感じになる。


 一号艦フェデレシアは、建造開始から半年で出来上がった。

 次いで二号艦を建造し始めているが、同時に木造で外輪付き帆船も建造を開始している。


 こっちは貿易用で、竣工は半年後になるだろう。


 ところで、フェデレシアの建艦中に、アリスと言うか養女にしたリサとの結婚があった。

 リサは年頃になって輝くように綺麗になった。


 輿入れの日、本当にうれしそうなリサの笑顔が印象的だったな。

 思えば初めて会った時はすごい目つきで睨まれたもんだった。


 リサ(当時はアリス)は12歳の少女のままの姿で、亡くなった時の衣装を着けてはいたが、身体全体が透けていた。

 まぁ、ある程度は予想していたけれど、思いのほか理知的な美少女だったので驚いた記憶があるよ。


 俺の再生魔法で生身の身体を得て以来、栄養があるものを食べた所為か、身体もよく育ってボンキュッボンの女性らしい体つきになっていたよ。

 何で俺が知っているって?


 そりゃぁ、輿入れした夜に全部脱がせてしっかりと拝んだからね。

 リサの身体の隅々までよく知っているよ。


 リサも一生懸命我慢して初めての俺を受け入れ、女の歓びと言うやつを知ったみたいだ。

 初夜だというのに5回もいたしてしまったけれど、他の嫁sよりもちょっと多かったかも・・・。


 俺が生物年齢で20歳、リサが成人して16歳になったばかりなので、後ろめたい気持ちもないわけでは無いけれど、地球の年齢で言うと、生体年齢256か月は地球で言えば21歳を超えているからね。

 俺も生きている長さからすれば27か28ぐらいでもおかしくない。


 特に地球に行っているときは、こっちの世界が20分の1の時間で進むから、地球に居ればいるほど俺がその分歳を食った勘定になる。

 一月に一度わずかに4時間ホブランドから地球へ行っている間に、地球ではすぐに三日以上経過しているからね。


 かれこれ40回ほども出かけているから、それだけで120日以上も余分に生きている感じになる。

 何はともあれ9人目の嫁sが誕生し、多分、10か月後には俺の子がまた一人生まれるのだろうな。


 これまで8人が皆そうだった。

 百発百中なんて、俺がオークになったみたいで、何か変な気分だけれど、まぁ、仕方がないよね。


 することしたら、できちゃうのが本来の姿なんだから。

 まぁ、リサの近況はさておいて、領内の状況に戻ろうか。


 カラミガランダとランドフルトの領地経営は順調だ。

 特に新たに興した産業はいずれも好調で領内の収益の大部分を稼いでいてくれている。


 そのために商人の流入はもとより、職を求める移入者の流入が多いのが特徴だ。

 カラミガランダとランドフルト双方で3割以上の人口増大になっている。


 現状で、ランドフルトで2万3千、カラミガランダで4万2千の人口を抱えている。

 労働力はいくらあってもよいのだが、同時に繁栄のおこぼれにあずかろうとする胡乱な人物の流入も多く、領軍である騎士団とは別に新たに設けた警察組織が治安維持に大活躍している。


 俺の造った領地条例に違背して、重罪を犯した者は、場合により死罪もあるが、そのほとんどが犯罪奴隷となっている。

 こうした犯罪奴隷の多くは、魔道具の首輪をつけられ、シタデレンスタッド若しくはウィルマリティモで肉体労働者として有効に活用されている。


 特に年少者の犯罪があった場合は、犯罪奴隷とせずに(まぁ、少年院かなぁ?)に入れて根性から叩き直して、できるだけ社会復帰させるようにしている。

 特別訓練所には、俺が見出し、訓練して育てた闇属性魔法の使い手である教師が数人いて、精神面から少年少女たちを支えている。


 意外と素直な連中が多いから、ちょっとした誘導で真っ当な道に戻れる者が多いのだ。

 但し例外はどこにでも存在する。


 精々1%程度なのだが、どうしても社会復帰できそうにない輩は犯罪奴隷にして鉱山送りにする。

 やっぱり更生ってのは難しいもんだよ。


 生まれ育ちの環境で影響を受けやすい子供たちだが、環境を変えるのが遅いと手遅れになってしまう。

 だから、俺は学校や孤児院の増設に力を入れているんだ。


 俺の領地からはスラムを産み出さないことを目標にしている。

 代官や町の有力者たちとの会合もできるだけ頻繁に行って、その時々の目標や現状把握の情報共有を図っているところだ。


 そうした中で不穏な動きをする者が居ることに気づいた。

 いわゆる聖職者と呼ばれる者の一人だ。


 ジェスタ国内の宗教はアルノス教会が主流であるが、他の宗派の布教活動も領主の許可により許している。

 俺もアルノス幼女神様には感謝はしているものの特別に信仰しているというわけでは無いから、どちらかというと、どこかの宗派に肩入れすることは無い。


 従って、具体的な活動方針を示した布教活動の申請があれば、条件を付して許可を与えている。

 条件と言うのは四つ。


 1 いたずらに人心を乱してはならない。

 2 布教活動において喜捨を強制してはならない。


 3 聖職者も信者も領内の条例に従うこと。

 4 聖職者又は教会が奴隷売買に関与し、また奴隷を使用してはならない。


 この四つの条件は、本来の人の生きる道を教える教会であれば守るのに左程の難しさは無いはずだ。

 だが、どこにでも狂信的なカルト信者を抱える教団はあるものだ。


 ホブランドでは、カルデナ神聖王国がそうである。

 カルデナ神聖王国では法王を教祖とし、カルデナ神を唯一絶対の神として信仰し、他の神の存在を否定し、それら異教の信者を弾圧する。


 為に、どの国でもカルデナ神聖王国の教会の進出は拒否しているところが多い。

 但し、何故かジェスタ王国では、カラミガランダの東隣の領地である中道派リグレス伯爵領で唯一布教が許されているのだ。


 リグレス伯爵領ではアルノス教会もあって、一応共存しているのだが情報によれば、二つの教派の間で何かと不協和音が絶えないようだ。

 リグレス伯爵領でカルデナ教団が布教を許されているのは、伯爵の御母堂様が、カルデナ神聖王国出身者であったために、領主邸の中に礼拝堂の建設を許したのが切っ掛けであり、礼拝堂の宣教師としてカルデナ教団が送りこんだ司祭が発端であったようだ。


 領主館で発言力を付けた司祭は、領内の町中にも教会を造ることにこぎつけ、以来、リグレス領内に居座っているようだ。

 そのハミュエル司祭とやらからも俺の領内での布教活動の申請が出されていたが、俺は却下している。


 何となれば、他国での評判が非常に悪い上に、当該ハミュエル司祭が奴隷を抱えているからだ。

 ハミュエル司祭はそのことを隠しているが、修道女三人と侍祭二人は巧妙に隠してはいるが首輪をつけた奴隷であり、自分の意志に関わらず司祭の命令に従わざるを得ない立場にある。


 おそらくは殺人を命じられても実行に移すだろう。

 通常、奴隷につける首輪は犯罪行為を指示しても受け付けないようにしているのが多いが、司祭の使っている奴隷は、その制限が外されていることが俺の直接の調べで分かっている。


 従って、今後ともカルデナ教団には布教の許可を与えないつもりでいる。



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 12月12日及び7月20日、一部字句修正を行いました。

   By @Sakura-shougen

 


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