第15話 【わたしたち】

 誰かに呼びかけられた気がして、わたしは空を見上げた。

 淡い色の夜空に、たくさんの星が流れている。

 何だろう?

 ステーションから地上に降りたわたしたちは、仮住まいのキャンプ地で、それぞれの受け入れ先に出発するまでの日々を過ごしていた。

 かなり人は減っているけれど、それでもまだ見知った顔がたくさん近くにいるのは、安心感がある。

「凄い眺めだな」

 サカガミ君が話しかけてくる。

 彼とは、地上に降りてから、少し話をするようになった。

 ユータとの事を、気遣ってくれたのだと思う。

「一人で突っ立ってないで、こっち来なよ」

 その先には、ユータと同じ島国出身の人たちが集まっている。

 焚き火をしているようだ。

「夏なのに、焚き火?」

 わたしは聞く。

「俺達の国ではさ、この時期にはこうやって、ご先祖様の魂を迎える習慣があったんだよ」

 わたしたちは、火を囲んで地面に座る。

 揺らめく炎を、無言で眺める。

「歌ったり、踊ったりはしないんだね」

「キャンプファイヤーじゃないからな。でも、悪くないだろ」

 わたしたちは揺らめく炎をじっと見つめた。

 見上げると、最後の流れ星が、夜空を貫くところだった。



                             〈了〉

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フラワルド cokoly @cokoly

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