第3話 リンゴを丸飲みしたお姫様

    夢のように腹黒く

    あなたの血は緑色




 むかしむかしあるところに「黒炭のように黒い髪、血のように赤い唇、そして雪のように白い肌」というのが売り文句のお姫様を生んだとして国中に恐ろしがられているお妃様がおりました。

 後の二人の対立から継母だという説もありますが、実のところ実の母です。

 お妃様は今日も王様に、おねだりに余念がありません。

「新しいドレスを買ってくれないとわらわイヤです」

「イヤって言ってもお前……この間十二着作らせたばかりだろう。あのダイヤのドレスはどうしたね」

「わらわ一度袖を通したものを二度着るような、そんな侮辱には耐えられません!!」

「侮辱ってお前……」

 王様は病弱だったせいで弟に王位がいき、その弟王が戦争で死んでしまったために再び担ぎ出された身の上でした。王位についてから結婚したためお妃様との年齢の差はふたまわり、昔はわがままも可愛いものよと髭を撫でていたのですが、十年も経つとこの我が儘さが疎ましくてなりません。

 それよりなにより。


「姫さまのおなり~」

 ぷっぷくぷーとラッパが鳴ります。親子の対面にいちいち大仰なことをして金をかけるのが王家の格式というものだというお妃様の主張により、王様にとってははがゆいばかりの華燭の典が繰り広げられます。

 姫は深紅のドレスを着ておりました。彼女は母親と違い質素倹約を好むたちで、贅沢は敵だと日々修道女のような生活をしています。

 この姫が王様お妃様の間に生まれた唯一の子供でした。

「お父様、お母様、今日この日我が日我が君に大神の加護のございますことに万歳万歳万々歳を申し上げますとともに」

「よいよい、白雪。可愛らしい口でそんなに長い礼をするのは大変だろう、許すからこっちにおいで」

「はい」

 姫は非の打ち所のない美少女でした。たとえ姫がなんの麗質ももたなかったからといって王様は姫を可愛がることをやめなかったでしょう。遅くにできた一人娘は孫に匹敵するのです。

 姫はしずしずと王座にちかづいていきました。

「お父様、わたくし昨日は法律のお勉強をいたしました。一番好きなのは経済なのですけれど、法律も好きです。そして、わたくし、色々と考えてみましたの。王家の一人のものとして陛下に奏上いたします。どうぞお納め下さいませ」

 可愛らしくリボンを結んだ書類を小さな手から渡されて、王様は酢を飲み込んだような顔をしました。

「おお、我が娘ながらなんと才長けた。これからの女は美貌だけではありません、政治見識にも長けていなければ。すばらしいですよ、白雪」

「ありがとうございます、お母様」

 王様は二人の会話を片耳で聞きながらそばにいる大臣にちらりと流し目をくれました。大臣は片手を握りながらひとつうなづきます。元気づけるかのごとくに。王様はごくりと唾を飲み込み、姫の書類を開きました。

 するとそこには。

しらゆきのほうりつ計画その1


1 基本的人権のはい止

2 じゆうけいざいのはい止

3 はたらきバチ制度のどうにゅう

4 ・・・・・

 王様は手がぷるぷるするのを止められませんでした。

 大臣は心配そうに眉を八の字にして固唾をのんで見守っています。

「……白雪や」

「はい、お父様」

「これはいったいどういう了見、いや、つもりかね」

 姫は静かにはい、と答えました。

「書いてあるとおりです」

「どうかいたしましたの、あなた。まぁ、白雪が考えた法律になにか文句でもおありなのですか。どうなすったの」

 王様は最近動悸がしてならないのですが、胸を押さえながら意味なく首を振りました。

「いや、そのね、わしはただこの、いや、白雪の法律の教師は誰なのかな、なんてね」

「そんなことどうでもよろしいではありませんか! 法律といえば、あなた。この前の増税の話はどうなっておりますの」

 びくっ! と背筋を伸ばす王様でした。王妃は増税が趣味なのでした。ついでに、

「今度はあのガラス頭のところに攻め込んでやるつもりですわ」

 隣国侵攻も趣味でした。王様はいたって平和主義者だったので、王妃様のそのような傾向を止めようと必死なのですが。

「ガラス頭って、ちゃんと彼女にはシンデレラという名前があるじゃないかね」

と、論点がズレ気味です。王妃様は高慢に胸を張ります。

「あんな趣味の悪いガラスの靴を履いてるやせっぽちの女など、ガラス頭で十分ですわ。あの女、この前書状でいいやがりましたのよ。うちには息子が三人娘が四人いますって。ふん、どうせうちには一人しかおりませんよ! ……おぉ白雪! あなたに文句があるのではないのですからね、許して頂戴ね、母は愚かな生き物なのです」

「はい、お母様」

 王様は王妃が注目していないとなるとバラ色の吐息をつきました。

 シンデレラ姫に悪気があったとは思えない。そもそも「ガラスの靴の吐きすぎでさぞかしお悩みでしょうね」と水虫の薬を送りつけたこちらにこそあきらかに非がある。

 そう考えながら、姫の書いた書類をどうやってごまかすか、悩んでいました。王妃が騒ぐと王妃の実家も騒ぎ出します。王妃の実家は王家に匹敵する格式と、王家に遙かに勝る財力をもつ公爵家です。そしてお妃様は白雪姫を溺愛している。

 大臣に預けたが大臣のうっかりで姫の書類をなくしてしまった。

 ……ということにしよう。

 王様は憂いの籠もった目で大臣を見つめました。すると大臣は泣き笑いの顔で何回も頷きました。

 陛下。わたくしは我が国のため犠牲になってみせましょうぞ!

 その目はそう言っていました。王様は罪悪感で胸がいっぱいになります。大臣は王様がていよく幽閉されたときからの忠臣で、弟王子が「おっと手が滑った!」とわざとらしく王様を弓で狙ったとき、身をもって庇った人材でした。彼のお尻には今も名誉の負傷があるはずです。

 王様は「王妃と姫君以外の全てに恵まれた王」と密かに呼ばれていました。

 姫君は容姿端麗で礼儀作法にも非の打ち所がなかったのですが、どうも情緒欠陥というか、下々のものの間では「血の色は緑色」と評判をとるようなところがありました。とんでもない法律は彼女が「国民が気に入らないからわたくし意地悪します」という方向からうまれたものではなく、彼女が普通に作るとああいうことになってしまうのでした。

 少々欠陥があった方が可愛い、と節穴理論で今までだましだましやってきたが、しかし、もうどうにもならないのかもしれない。

 王様は遠くを見つめました。

 お妃様が猛獣、娘が冷血動物ではあまりにも救いがない。

 冷血動物だが、愛娘であることにはなんの変わりもない。愛していることに間違いはない。しかし、だが、やっぱり、一度に二人相手は荷が重すぎる。

 東の森には尼さんの集団が住む修道院がありました。王様は黙って考え込みます。お姫様は明らかに、変です。修道女の集団ならば姫を変えることができるかもしれない。慈愛の心と常識とを身につけさせてくれるかも知れない。

 ふんふんうなづきました。これは結構いい案かもしれぬぞ。

 そんなことを考えて甘い考えに浸る王様は、姫が「王権神授説をわたくし支持します」とか「十字軍って素晴らしいと思いますわ」とか言い出すなんてことはまったく考えもしないで一人ふんふんうなづきます。

「陛下、ようやく了解して下さったのですね、ああよかった。白雪、お喜びなさい」

「はい、お母様」

 王様はぎょっとして妻と娘を眺めました。大臣を見ると、あわわわわと汗をかいています。

「侵攻の件と法律施行の件、明瞭な返事を頂きましたわよ。今から議会に掛け合ってとっとと話をすすめてしまいますから、ご心配なく。あなたは温泉で神経痛でも癒していらっしゃって!」

「なっ、あっ、おっ」

 言葉にならない王様のうめきでした。

 そしてそれから姫が修行といってていよく東の森に行かされるまで、一月がかかりました。それというのもお妃様が渋ったためです。





 東の森は狼がでるといって有名な場所でしたが、なんといっても白雪姫は王族の一員でした。二つの馬車に三十人のおつきのものをしたがえ、一個中隊の騎士が周りを取り囲むという厳重な守られ方でした。

 しかし姫自身は非常に無表情に現状を受け入れたのですが、危機に陥っていました。下騎士の男が姫君をさらって逃げたのです。

 森の奥へ、奥へ。下騎士は馬の走らせ方はたくみであったらしく、また追いかける方もなかなか腰の入った追跡ができず、姫は誘拐されてしまいました。


 右を向いても左を向いても鬱蒼とした、木。下騎士はかかえていた姫をどさりと地面に下ろし、自分も馬から下りました。そこが待ち合わせ場所だったらしく、仲間らしい男たちが姿を現します。男たちは胡乱な表情で姫を見下ろし、取り囲みました。待て、と手をあげるのは下騎士です。

 姫は痛そうに手をさすりながら立ち上がりました。しみひとつない肌、白雪の名のゆえんとなる美しさを前にして下騎士は一瞬見とれましたが、すぐに我に返って剣を抜きました。

「言い訳くらいはきいてあげましょう、下郎たち」

 剣を見ても姫は顔の筋一本動かしません。七人の男たちはこの剛胆さに眉をひそめました。しかしいきりたつには姫の高貴さが彼らを圧倒していました。

「なにをおっしゃるか、白雪姫」

 人形のような彼女が口をきいたことにどぎまぎしながら下騎士は鈍い舌を動かしました。

「あなたには殺される義務がある。あなたがつくった法律でこの国はめちゃくちゃになった。俺の妹も飢えて死んだ。だがあなたは綺麗な服を着て、あなたの母君は毎日ドレスを作っているという! しかも毎日城でらんちき騒ぎだ。この暴虐、天が許しても国民が許さない! 死んでいただく!!」

「わたくしを殺せば国が滅びますよ」

 あくまでも淡々として話す姫の言葉に真実の匂いを感じて下騎士はなんだと? と問い返しました。姫はやはり無表情でした。

「保険ギルド、というものがあります。去年お父様に働きかけて、わたくしに国家予算の半分の保険金をかけていただきました。保険ギルドはギルド同盟に入っていますから、払いきれない保険金が発生した場合はギルド同盟全体から保険金を払うことになるのです。掛け率のこと、ききたいですか?」

「は……」

 姫は続けて言いました。

「ギルド同盟が滅べば国の経済はがたがた。隣の国のシンデレラ様はとっても義侠心に富んだ方ですから、すぐに救いの手を伸ばして下さるでしょうね。たぶん、国土吸収合併という形で」

「は……」

「わたくしのお母様がぱーぷーであることは百も承知です。ですからわたくし彼女の女官に金をつかませて、ドレスを作り替えさせておりますの。飾りを変えれば同じドレスとは気づかないようなお方ですもの。そこらへんがお茶目で好きなのですけれど。彼女のドレス代には大した予算はかけておりません。

 それよりもなぜあなたは我が父のことを問題提起なさらないの?」

「は……」

「お父様は気が弱くてお優しいお方。貴族にいいようにあしらわれて、お飾りの、王座を温める文鎮だとよばれておりますのよ。お母様の海外派兵趣味はともかく貴族たちの利権あさりの方が問題ではなくて。教会の十分の一税とか、ご存じ。荘園での税率がいくらだか、ご存じ。わたくしがあのような法律を作ったのはこの国を一度潰すことが目的でしたの。絞られるだけ絞られて活気のない国民など、肥え太った貴族同様に害毒です。

 お前たちの家族が死んだのは王家のせいですか? 王家が課しているのはたった一割の税ですよ。それを七割八割にまで引き上げているのは貴族や聖職者どもではなくて。敵はだれなのか見極める目を持たず、獣のように女一人をさらい、血祭りに上げて溜飲を下げて、それで何が変わるというのです。お前たちの知性をたたえて馬鹿、馬鹿、馬鹿とまつりあげてあげましょう」

「は……」

 男たちは脱力しました。少なくとも、この姫を殺すことはできないと悟りました。なにか祟りそうな気がしましたし、姫の言葉を完全に理解できないまでも、そうなのかもしれない……と、暗示にかかったからです。

「仕方がないのでわたくしがお前たちの仕事を手伝ってやることにいたしましょう」

「は……」

「革命です。ちょうど七人いるから『七人の小人たち』党を結成することにいたしましょう。冗談のようですが、本気です。わたくしは真面目に国家転覆を謀ろうと思います。がんばりますよ、みなのもの」

 まったく情熱を感じさせない口調ではありましたが、本気であることは間違いありませんでした。下騎士はだらりと剣を落として姫を見つめ、口を開けたままの仲間を見つめました。

「はぁぁ……」

 男たちは七人の小人にされてしまいました。



 


「キィィッ、あなた、あなた、白雪はまだ見つからないのですか! 可哀相な白雪、お前は今一体どこでなにをしているというのでしょう。神よ」

「ううむ……」

「それに加えて、七人の小人党とかいう馬鹿ものどもが今日も納税馬車をおそったというではありませんか! 治安の乱れは国家の乱れ! ですからわたくしの王妃軍を盗賊狩りにつかわせてくれと申し上げておりますのに、この、根性なし!」

「ううむ……その、王妃、白雪はどうしても見つからぬのだ……わしは今姫の捜索以外のことに気を取られたくないのだよ……おお、姫、そなたは今いずこ」

 王様は姫の肖像画を抱えてめそめそしていました。

 いかにもだらしない、たよりない、甲斐性なしの姿にお妃様は王様の手をひょいとつかんで書類に拇印でサインをさせました。

 それは全権委任状でした。

 王妃はそれを盾に王妃軍を動かすことを議会に承諾させました。あとは七人の小人党の撲滅です。

 七人の小人党はふつうの盗賊集団ではなく、王家や貴族の馬車を襲って得た金を全て貧しいものたちに分け与えていました。リーダーは国で一番小さな男といいます。お妃様は親指をぎりりとかんでお気に入りの女官や、貴族の取り巻き、武官たちに尋ねます。

「お前たち、私が間違っていると思うかい」

「いいえとんでもない、殿下」

「あなたはこの世で一番正しくていらっしゃいます」

「あたかも真実の女神の如くに」

「ほほほほ、そうでしょうそうでしょう。議会のやつらめ、軍を動かすと金がかかるなんて言って、そんなこと言ってる場合なの!? 盗賊どもにいいように遊ばれて、この国はまったく、私がいないとどうなることやら」

「まったくです、殿下」

「お妃様のお言葉を聞いているとわたくし自分がなんて愚かなんだろうと思い知らされますわ」

「わたくし泣いております。それもこれもあなたの正しさ故でございます」

「ほほほほ、そうでしょうそうでしょう」

 お妃様は高笑いして彼らの言葉を聞きました。そして軍の用意をすすめます。

 今やたくさんの同志を率いている七人の小人党を集めて一網打尽にする計画でした。その作戦は大臣が考えたもので、大変うまくいきました。七人の小人党は王妃軍に取り囲まれ、あわをくって突破しようとしますが、次々にたおされていきます。

 林檎を囓りながら戦場見物、いえ現場視察に来ていたお妃様はたいそう楽しげに歓声をおくりました。やれそこだ、ああおしい、ああ早くその小さな男を取り囲んで。矢で射抜いておしまい。

 取り巻きたちも手を叩いて応援します。

 七人の小人党のリーダーは取り囲まれ、そして騎士の剣が彼女の顔を覆っていた布を切り裂きました。

 あらわれたのは、黒炭のような髪、血のように赤い唇、雪のように白い肌。

「……ああっ!?」

 お妃様は声をあげて立ち上がりました。騎士の剣が白雪姫を切り伏せようとするのを止めようと、手に持った物を投げました。

 それは林檎でした。

 か弱いお妃様の力でしたが、見事な剛速球。林檎は弧を描いて、いやむしろ空を切り裂く直線で飛んでいき、騎士の肩をかすめ、姫に激突しました。

 かぽーん、と。

 林檎は見事に姫の口の中に入り込みました。姫は口をふさがれ息をすることができません。そして倒れました。

 そのとき彼らにはまったく予想外の事態が起こりました。突然目の前に外国の兵が現れたのです。それは隣の、シンデレラ姫の国の兵でした。

 王妃軍は隣国の兵にしっちゃかめっちゃかに敗北しました。

 ぐったりとした白雪姫の身体を抱えて必死で逃げたのは、あの日姫を誘拐した下騎士です。彼は七人の小人党を結成することになった日からずっと姫のそばにいました。そして知ります。姫の美貌、そして、おかしな思考回路、独裁者にぴったりな資質。魅力。案外な食欲(七人分の夕食を平らげたことがありました)。大きな声。おしゃれに対する無頓着さ(彼のベルトを締めてやると騒ぎ、絞めすぎて気絶させたことがありました)。母親譲りであるらしい怪力(女の子の髪を研いでやるといって銀の櫛をつきさし、流血の惨事になったことがありました)。どこを探しても誉めるべきところは美貌しか見つからない。その知性だけはずばぬけているけれど、凡人には彼女の思考についていくことができない。変わり者だ。だけど、下騎士は、唇を噛みます。

 こんな個性の強い女にあったあとでは、どんな女も物足りないんだ!! と。


 逃げて逃げて、彼は疲れ果てました。そして姫を抱えていた腕から力が抜けて、どさりと彼女を落としてしまいました。馬は結構高いのです。びっくりして助けようとしたところ、彼自身も身体を傾けすぎました。

 ごすっっ!! と鈍重な音を立てて彼は姫の腹に頭から落ちました。

 がふっっ!! と血を吐くようなうめき声で姫は、口にはまっていた林檎を吐き出しました。

「姫ぇ……!」

「なにをしているのです、お前」

 突然ぐちゃぐちゃな涙顔を前にして姫は身を退きました。

「命が、ううっ、あぁ、良かった……姫、私はあなたにハマり、いや、愛していることに気がつきました」

「それよりも戦争はどうなったのです」

「……え、えーと、なんだか隣国が攻めてきたみたいで……」

「ふぅん、そうですか。きっと王妃軍が動いたとわたくしが書状を送ったので、様子見に来たのでしょうね。隣国には特に侵攻の意志はないようですが、うちは危険視されていますから。まぁ、七人の小人党再結成に向けてがんばらねばなりませんね。

 さて、下郎。わたくしもあなたのことを面白く感じています。別にこれからもそばにいても構いませんよ」

「ひっ、姫!!」

 それは変わり者の姫君の遠回り過ぎて永遠に核心に触れないような告白の言葉でありました。下騎士は名前すら覚えてもらっていないことに一抹の哀しみを感じつつ、姫君の手に接吻しました。

 ですから、

「姫君ともあろうものが林檎丸飲みしたってか」

「そのあとキスで吐き出したってか」

「どんなキスだ」

などというツッコミが後国民の間で広まったことは、間違いでした。接吻は手に、しかも林檎吐き出し事件のあとだったのですから。

 白雪姫はその後王家に帰ることになりました。そして最後の女王として、君臨することになります。


 そしてお妃様はシンデレラの国に連れてこられました。

「ガラスの靴はお気に召さないようですから、この、真っ赤なゲタをどうぞ……? お気にめさないかもしれませんけど、とっても良くお似合いですわ」

と、滞在中、白雪姫が迎えに来るまでの間、呪いのように赤い異国の靴を履かされて笑われていたとのことです。それでも取り巻きたちは

「お妃様はとってもお美しい」

と鉄の忠誠心で言い続けたとか。





Fin

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