第6話 山中の戦い3
と、まあ意気込んでは見たけど、、、
ぶっちゃけ別に気合い入れて戦う様な強敵じゃないんだよな〜
マッスルウルフって、、、
なんせ筋力が高いだけの狼だからな、ちょっと二足歩行できる知能があるからって苦戦する方が難しい様な相手だ。
だから魔術も魔法も使わず倒そうって決めたんだけど、、、
「はぁ、失敗したな〜」
僕は振り返りざまため息混じりにつぶやく。
その眼前には手足を切り落とされて胴を上下で二分され頭部を四分割されて絶命するマッスルウルフが、、、
あまりに楽勝で語るのも馬鹿馬鹿しい、そんな戦いだった。
まあ語るんだけどね?
僕は一瞬でマッスルウルフの懐に飛んだんだよ。
ほら、言ったろ?
切断能力の応用って奴。
アレで距離を詰めた僕は一太刀目、硬さを見る程度の軽い斬撃を両手に放った。
本来はこんなチンケな技で腕なんか落ちない。
相当な業物使うか馬鹿げた技術がないと。
そう思ってたのに、、、
現実には豆腐よりもスンナリ切り落とせてしまった。
それを逆に驚きつつも次の太刀はすでに両足を狙い済ましてた。
手グセみたいな物は試し精神の攻撃だった。
流れる様な斬撃は足を切り裂いた勢いでマッスルウルフの胴を上下で切ってしまった。
その間0・03秒。
相手の実力を測るためだけの斬撃でマッスルウルフは致命傷、息も絶え絶えだった。
そんなマッスルウルフに同情でもしたか、僕は一思いに頭部を切ってスッキリ殺してやった。
予想外にも程がある、期待外れにも程がある、、、
こんなのにビビリ散らしてた二人に目を向けると、それまで気付かなかった事実が分かった。
「おい、大丈夫か?」
僕が特に心配してないけど聞く。
と、女の方は這いずるように近寄りながら立ち上がると僕の方にヨタヨタ歩いてくる。
恐怖で足腰に力が入らないんだろうな?
まあ知らないけど。
「あ、あの、助けていただき有難うございます!」
僕の前にたどり着いた女は息も絶え絶えに言うと苦しそうな笑みを向けて膝から崩れた。
色々限界なんだろう、僕は「おうっ」と軽く手をあげて返すと立ち去ろうとして、、、
休養を思い出し足を止めた。
「ああ、そうそう。 そこに転がってるの護衛対象なんだろ? 腰抜かしてないで安否でも確認したらどうだ?」
僕は地に額をつけて転がってる男二人のうち明らかに豪奢な鎧を着て実用面と芸術面に飛んだ剣を携える男を指差しながら腰を抜かしたまま真っ青になってる男に言った。
数秒、意味を理解してなかった様子だったけどハッと気付いたように倒れる男を見て四足歩行で寄って行った。
「村井っ! しっかりしろよっ! お前勇者なんだろうが!」
勇者、、、?
村井って名前といい勇者といい、コイツら異世界人か、、、?
、、、ま、僕には関係ないか。
僕は切り替えると連中に背を向けて刀を杖に戻し山下りを続け、ようとして四人を振り返った。
「なあ、お前らどうやってここまで来た?」
そう、僕は不思議に感じていた。
本当はずっと最初から、こんなマッスルウルフ程度も倒せない連中がどうやって山を登れたのか、、、
つまりは、、、
「あ、はい、私達ですか? 私達は車で、、、」
「車⁉︎ やっぱりか! じゃあヤッパリお前ら帰りも車だよな!」
「え、はい、まあ、、、?」
「そうかそうか、うん。 アレだな、棚ぼたって奴だな。 うん、、、」
「あの、いったい、、、?」
「よしっ! 交換条件だ!」
「はい、、?」
「そこで倒れてる二人助けてやる代わりに街まで送ってくれよ! 良いだろ?」
「そ、ソレは大丈夫ですけど、、」
「決まりな! 約束違うなよな!」
僕は少し浮かれながら言うと杖を起点に魔法陣を構築して地面を叩いた。
すると魔法陣が消えて地面が光始める。
その光が広がり四人を囲むほどに広がると、次の瞬間何もなかったように二人の男は起き上がった。
魔術師見習いの冒険記 福田点字 @tomotyoko
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