第5話 山中の戦い2
狼を目にして対に種族を理解した。
発表の前に簡単な見た目の説明を挟むけど、狼は二足歩行の癖に地面からの距離で3メートルは有りそうな巨体だ。
毛皮はモサモサなのに内側の筋肉が浮き上がるほどにムキムキの狼。
まず間違いなく獣魔だろうな~ってレベルの大きさだね~
あ、獣魔ってのは地球の変動直後に現れたダンジョンの産物だ。
ダンジョン内に充満する魔力の塊だから獣魔は厳密に言うと生物じゃない。
ダンジョンってのは様々な呪語の刻まれた石板を最奥に置き、各所要所に獣魔を設置した地下迷宮の総称だ。
ダンジョンの出現が最初に見つかり、魔法が最初に授けられたのは同時期で3万年前と言われている。
魔法もダンジョン出現と同時に授けられたのは理解してもらえたかと思う。
が、魔法の授け親は誰なのかと言うと既に分かっている。
それは言葉の神『レコーディア』と呼ばれる呪印の開発者だ。
呪印ってのが体に刻まれた呪語の原初と言われ、レコーディアが神に成り上がる以前に実験として開発した石板だ。
研究用として捕まえた人間に石板を縫い合わせ、体と一体化させたのが始まりと言われている。
その種類が異様に多いもんだから世界中に流派として其々の魔法が広まっている。
切断もその1つ、と言いたいところだが既に違う。
ジジイが悔しそうに話してたんだけど、切断の流派は一人の男に壊滅させられたらしい。
ジジイがまだジジイになる前の話らしいから2500年以上も前の話らしいけど。
……話が反れたから修正するけど狼の正体、だっけ?
正解はマッスルウルフってゆう筋力の異常に強い狼の獣魔だ。
ネーミングセンスが感じられないけど、まあ第一発見者によってはそのままなセンス皆無の名前もチョイチョイある。
この獣魔もそれだな。
そんで、コイツに遠距離の攻撃手段は無い。
何故なら筋肉の発展した狼、それだけの特徴しかないからだ。
風圧で二次的な被害は起こせても元々が遠距離用として存在する技は無い。
少なくとも俺が知ってるマッスルウルフはな。
だったら遠距離からの攻撃で良いじゃんとか思うだろうか?
そんなのは……
「面白くないよなぁ!!」
俺は杖を地面に突き立てて叫び、同時に大量の魔力を送って杖の形状を変えた。
ここで少しジジイの魔力を思い出して貰えると嬉しいんだが、ジジイは魔法の発動に刃物が必要だ。
でも、魔術用の等身大な杖1つでも十分なのに追加で刃物を大量に持ち歩くのも邪魔臭かった。
ではどうしたか……
要するに、この杖は鞄と同じなのだ。
魔術の刻まれた道具、だからこそ可能なのだ。
「お前の土俵で戦おうか! 犬こうよぉ~!」
俺の手には、杖が形状変化して作り上げた強靭で損傷箇所を瞬時に復元する二本の日本刀が握られている。
日本刀、地球の規模拡張以前に存在した、つまり魔術の出現と同時期に消滅した日本とゆう国で使われたとされる刃の切れ味だけ見れば最高の剣だ。
俺は大小二刀の剣を長い方右で握り、構えた。
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