第4話 仕立て屋で

 シグルトに連れられてやってきたのは、王都でも有名な仕立て屋だった。主に王族や上流貴族を得意先とする、一般庶民にはいささか敷居の高い店だ。


 高級感あふれる落ち着いた内装の店内に入ると、初老の店の主人が待ち構えていた。


「お待ちしておりました、シグルト様」


 うやうやしく頭を下げて、出迎えてくれる。シグルトはこの店の常連だ。リシェルが日ごろ着ている服も、シグルトがすべてこの店で仕立ててくれたもの。


「例のもの、用意できていますか?」


「はい、ご案内致します。こちらへ」


 主人の案内で、二人は奥の個室へと通される。来客用のソファとテーブル、壁に巨大な鏡が設えてある。部屋の隅、鏡の横には大きな黒い布を被せた物体があった。その傍に立っていた店の制服を着た女性が来客に頭を下げる。


「さ、リシェル様。こちらへどうぞ」


「え? 私ですか?」


 リシェルは戸惑いながら、主人に言われるまま、黒い布を被せた物体の前に立った。主人が布に手をかけ、一気に引き剥がす。


 中から現れたのは、洋服掛けにずらりと並んだ、ドレスの数々。色とりどりのドレスは、どれも見るからに上質な素材の、若い女性向けのデザインのものばかり。


「こ、これは……?」


 状況が飲み込めず、リシェルは戸惑い師を振り返る。


「私からの成人祝いですよ」


 弟子の困惑顔とは対照的に、シグルトは満面の笑顔だ。


「な、なんでドレスなんですか?」


「来月、ちょうど君の誕生日の日に、リンベルト伯爵邸で夜会があります。それに出席するのにドレスがいるでしょう?」


「や、夜会?」


「成人したら夜会に出て社交界デビュー。一般常識です」


「それは貴族だけでしょう? 私なんかが出ていいんですか?」


「君は私の弟子ですよ。いいに決まってるでしょう」


 エテルネル法院の導師は、就任と同時に、国王から宮廷魔道士の称号を与えられる。それは世襲の許されない、一代限りのものだが、侯爵位と同等の高い地位だ。リシェルにはまったく実感がなかったが、導師の一番弟子である自分も、後継者として身分的には貴族と同じ扱いであるらしい。


「大丈夫。もちろん私も行きますから」


「でも、先生そういう夜会とか舞踏会とか、今まで誘われてもほとんど出てないじゃないですか。嫌いだと思ってました」


 立場上、シグルトはそういった貴族の集まりによく招待される。だが、華やかなことがあまり好きではないのか、どうしても出席しなければならないものを除いて、ほとんど出たことがない。


「嫌いですよ。でも君は出てみたいでしょう?」


「それは……」


 リシェルも年頃の女の子である。そういった華やかな世界に、まったく憧れがないと言えば嘘になる。どうやらシグルトは、たまに夜会に行く度、リシェルがその様子を事細かに知りたがる様子から、そんな乙女心を察していたらしい。


「それに、大人になった君と一曲踊るのは私の夢だったんですよ」


 シグルトは楽しそうに笑った。


「さあ、好きなのを選んで下さい。あ、もちろん選んだ一着だけでなく、全部君のですけどね」


「全部!?」


 ずらりと並んだドレスは、おそらく一着でも相当な値段であろうことは、この仕立屋でいつも服をあつらえてもらっているリシェルにもわかる。


「とりあえず今度の夜会で着るのを選んでしまいましょう。ドレスに合わせて、靴とか装飾品も買いに行かなきゃいけないし……あ、これとかどうです?」


 シグルトは白いドレスの一着を手に取った。宝石と思しき輝きが全体に上品に散りばめられている。話が勝手に進んでいくことに焦りを覚えて、リシェルは叫んだ。


「成人祝いだからってこんなにたくさん頂けません!」


「なんでです?」


 シグルトは弟子の様子にきょとんとしている。


「大人になれば、こういうドレスが必要になることが多くなりますよ。たくさんあった方がいいと思ったんですが……」


「だ、だってこんなに高価なもの……」


「ああ、そういう心配なら、大丈夫です。私は普段は好んで質素な暮らしをしているだけで、お金なら掃いて捨てる程ありますから」


 庶民が聞いたら、背後から殴り殺されても仕方ないような台詞をしれっと言う。


「そうかもしれませんけど……」


「リシェル。遠慮することはありませんよ。これは日ごろ頑張ってくれている君への、私の感謝の気持ちなんですから。さ、着てみて下さい」


 シグルトは嬉々として、手に持ったドレスを差し出してくる。無邪気ともいえるその笑顔に、リシェルはもう何も言えなくなった。


「お着替え、お手伝い致します」


 リシェルが折れるのを待っていたかのように、すかさず女性店員が、リシェルを半ば強引に鏡の前に立たせ、その周りにさっとカーテンを引いた。





 



 試着が終わったのは、もう大分日が傾きかけた頃だった。店の窓から橙色の日が差し込んでいる。


 こんなに時間がかかったのは、十数着はあったドレスを、全部試着するはめになったからだ。


 リシェルが着替える度、シグルトは「かわいい!」と大喜びし、他のも着て見せて欲しいと次から次へドレスを差し出してきた。


 散々試着したあげく、結局最後に選んだのは、最初にシグルトが選んだ白いドレスだった。上機嫌のシグルトはこの後装飾品も選びに行こうとしたが、リシェルが必死で止めたため、それはまた後日、ということになった。


 いたく満足気なシグルトに対し、着せ替え人形よろしく、何着もの試着をこなしたリシェルは、さすがにぐったりして、師の後に続き、店の出口へと向かった。


「お、シグルトじゃないか!」


 店の外へ出ようとした時、横手から声がした。


 見れば、シグルトと同じ、濃紺地に銀の装飾が施されたローブをまとった、赤毛の男が歩み寄ってくる。大柄でがっしりした体形と、色黒の肌が精悍せいかんさを感じさせ、歴戦の戦士を思わせる。ローブをまとっていなければ、魔道士にはとても見えない。

 

「おや、ブランじゃないですか」


「リシェルも一緒か」


「こんばんは、ブラン様」


 男に微笑みかけられ、リシェルは慌ててぺこりと頭を下げた。


 この魔道士らしからぬ大男はエテルネル法院六導師の一人、ブランだ。六導師の中で最も人望が厚く、リシェルにもとても気さくに接してくれる。人当りが良さそうに見えて、実際にはあまり他人と個人的な交流を持とうとしないシグルトの、数少ない友人でもある。


「お前らも買い物か?」


「ええ。あなたも?」


「ああ。弟子が来月成人するんで、ローブを新調してやろうと思ってな」


 ブランはそう言って、背後を振り返る。その視線の先にいる人物を見て、リシェルは思わず身を固くした。


 しかし、その人物――パリスはリシェルには一瞥いちべつもくれず、シグルトに深く一礼する。


「お久しぶりです。シグルト様」


 パリスの表情は明るく輝いており、昼間リシェルに見せた底意地の悪さなど微塵みじんもなかった。


 シグルトは横で固まっているリシェルをちらりと見やってから、笑顔を作り、パリスに答える。


「やあ、パリス君。そういえば君も来月成人だったね。私の弟子もなんだよ。奇遇だね」


「……シグルト様の弟子、ですか」

 

 そこで初めて、パリスがリシェルに目を向けた。その青い目の奥にある強い敵意から逃れようと、リシェルはうつむく。

 

「そうか、リシェルもだったな。パリスとはさしずめ職場の同期ってことになるのか。仲良くしてやってくれよ」


(無理です、ブラン様!)


 能天気なブランの言葉に、心の中で全力で拒否する。ちらりと見れば、パリスもうとましげに師を見ている。彼も同じ思いなのだろう。


 ブランは弟子同士の気まずい空気には気付いていないようだが、さすがに二人の弟子が何も答えないので、


「ん? どうした?」


 怪訝けげんそうな顔をしている。と、助け舟が入った。


「ああ、リシェル、馬車を待たせているんだった。君は先に乗ってなさい。私はブランともう少し話したら行きますから」


 シグルトの言葉にほっとして、リシェルは一礼すると逃げるように店を出た。

 その後ろ姿を目で追いながら、ブランが感慨深げに言う。


「リシェル、改めて見ると大きくなったな。この間までほんの子供だったはずのに、すっかり娘らしくなって……女の子の成長ってすごいな。驚かされるよ」


「そうでしょう? 日を追うごとに綺麗に大人っぽくなっていくものだから、もう毎日ドキドキしっぱなしですよ」


 シグルトの冗談めかした言葉に、ブランは苦笑した。


「それは結構だが、リシェルももう大人なんだから、子供の頃からの調子で悪ふざけして嫌われるなよ」


「悪ふざけ?」


「何かとベタベタ触ったり、抱きついたり、眠ってる間に自分の寝台に運んで一緒に寝たり、だよ。今やったら本当に犯罪だぞ」


 傍で聞いていたパリスの顔が引きった。


「……悪ふざけではないんですが。でも、さすがに今は我慢してますよ。彼女も年頃だし、嫌われたくないですからね」


「賢明な判断だ。ところで、リシェルにもローブ新調してやりに来たのか? 来月から導師会議、出席させるのか?」


 ブランの言葉に、パリスの表情が強張こわばる。

 シグルトは少し困ったように眉を下げ、苦笑いを浮かべて言った。


「ええ、まあ……彼女が望むなら」


「シグルト様! 本気ですか!?」


 パリスが不意に声を上げた。


「彼女は魔法を使えないのでしょう? なのに、導師会議に出させるおつもりなのですか?」


「魔法が使えないと、導師会議に出ててはいけないのですか? そんな規則ありましたっけ?」


 とぼけた風のシグルトに逆に問われ、パリスの眉間にしわが寄る。


「当たり前じゃないですか! 導師会議とは、国中の魔道士たちの頂点に立つ、選ばれし者の神聖な会議なんですよ! そんな場所に、魔法の使えない人間が居ていいはずがない!」


「おい、パリス」


 ブランがたしなめるように呼び掛けるが、パリスの眼中にはシグルトしかいなかった。不満と怒りが煮えたぎって、あふれるのを止められない。


「シグルト様、どうしてです? 僕が弟子にして欲しいと頼んだ時、もう弟子がいるから、そう仰った。どんな天才かと思ったら、あれが弟子ですか? あんな初歩の魔法すら使えない、才能のない奴が? あんなのより、僕の方がずっと優秀だし、ずっと努力してきた。なのに、どうして僕を弟子にして下さらなかったのですか!?」


 シグルトは黙って、観察するようにかつての弟子志願者を見ている。反応のなさにもどかしさを感じ、もっと想いを伝えようと、パリスは言葉を重ねた。

 

「僕はずっとあなたに憧れて、頑張ってきたんです! あなたの弟子になりたくて! どんなに苦しい修行にも耐えてきた。 一度でいい! 僕の魔法を見て下さい。 そしたらお考えもきっと変わります! 今の僕なら、あのアーシェにだって――――」


「パリス!」


 ブランが大声でさえぎった。

 本気の怒気を含んだ声に、パリスははっと気づくが、遅かった。


 シグルトの目を見て、息をのむ。

 冷たく、暗い、光の見えない紫の瞳が、自分を見ていた。

 ぞくりと背筋が凍りつく。


 シグルトの前で“彼女”の名を出すことがタブーであることは、法院内では暗黙の了解だったが、まさかこれ程までに怒りを買うとは思っていなかった。


 何か言わねばと思うが、喉まで凍りついてしまったのか、声が出ない。


「シグルト、すまない」


 弟子の代わりに、ブランが頭を下げた。氷が溶けるように、シグルトが表情を緩める。


「何を謝っているんです? 君の弟子が私の可愛い弟子を散々にこき下ろしたことですか?」


「それもあるが……とにかくすまん。本当にすまん。でも、こいつは本当にお前の弟子になるのが夢で……それでちょっと言い過ぎたんだ」


 ブランは必死で弟子を擁護ようごしようとする。


「男に慕われても別に嬉しくありませんね」


 シグルトは軽く肩をすくめて、パリスを見た。 


「パリス君。君は一つ大きな思い違いをしています」


 表情こそ穏やかだが、目の奥は暗く冷え切ったままだ。


「君は自分の方が優秀だと思っているようですが、君よりリシェルの方がはるかに強い」

 

 思いがけない言葉に、パリスは目を見開いた。その意味が理解できない。

 だが、シグルトに説明する気はないようだ。


「私はリシェル以外を弟子にする気はありません。もし仮に君が、“彼女”――私の前の弟子をしのぐ天才だったとしてもね。――まあ、そんなことありえませんが」


 言って、口元に薄く笑いを浮かべた。いつもの穏やかな笑みではない。パリスへ向けられた、冷たい嘲笑ちょうしょう

 シグルトは、すっと店の窓の外へと視線を移す。


「私にとって、あの子は――」


 店の窓からは、リシェルが馬車に繋がれた馬の首を優しくでているのが見えた。

 シグルトの瞳から冷たさが消え、柔らかな微笑みがその顔に浮かぶ。


「――何よりも大切な、特別な存在なんです」


 シグルトはそれだけを言うと、もうパリスに一瞥いちべつもくれることなく、店を出て行く。

 パリスはその後ろ姿を呆然と見送った。店の扉が、がしゃん、と重く鈍い音を立てて閉まる。

 ブランがなぐさめるように、パリスの肩にそっと手を置いた。


「お前もいい加減諦めろ。お前は俺が立派に鍛えてやるから」


 しかし、パリスは師の言葉など聞いていなかった。

 

(あのカラス娘が僕より強い?)


 ありえないことだった。

 シグルトの前の弟子――シグルトすら越える天才と噂された“彼女”が自分より強い、というのならばわかる。


 だが、あのカラス娘――あんな初歩の治癒魔法さえ使えない奴が?

 幼い頃から神童だと持てはやされ、魔術学院を首席で卒業し、今最も将来を期待される魔道士である僕より? 


 特別な存在なんです――――


 シグルトの言葉が、ぐるぐると頭の中を巡る。


 それは、本来自分がかけられるべき言葉のはずだ。

 そのために、一番を目指してきた。

 そのために、血が吐く程の努力をしてきた。

 そのために、すべてに耐えてきた。

 なのに――


 窓の外で、シグルトがリシェルに笑いかけながら、頭を撫でてやっているのが見えた。

 

(なんであいつなんだ?)


 胸の辺りを循環する血液が、急にどろどろと固まり、重みを増した気がした。同時に、もやもやとした不快な感情がせり上がってくる。


 生まれて初めて抱く感情だった。

 常に他者の羨望の的として生きてきた彼は、それを“嫉妬”と呼ぶことを知らない。

 

(あいつさえ、いなければ――)


 パリスは肩に置かれた師の手を振り払うようにして、何も言わずに店の奥へと消えた。

 置き去りにされたブランはその様子に、怒るでもなく、深いため息をつく。


「俺の周りはほんと、扱いにくい奴が多いな……」







 王都でも有名な仕立て屋。その前に、黒塗りの馬車が一台止まっている。


 馬車の前には、薄灰色のローブを着た少女が一人、立っていた。この国では珍しい、長い艶やかな黒髪が目を引く。遠目からでもはっきりわかる、整った顔立ちの美少女だ。馬車に繋がれた馬の首を撫でてやりながら、御者と談笑している。時折、ぱっちりとした大きな瞳で、様子を伺うように店の扉をちらちらと見やっていた。


 少女は、物陰から自分に向けられている視線にはまったく気付いていない。

 店から少し離れた路地の裏。二人の男が少女を見つめていた。


 一人は薄汚れたローブに身を包み、深くかぶったフードで顔を隠した、魔道士風の男。もう一人は、身なりのよい、腰に剣を下げた、若い騎士だ。


「……あの娘だ」

 

 ローブの男が、騎士にささやいた。


「どうだ? わかるか?」


「……間違いない」


 騎士は、黒い瞳に少女をとらええながら、きっぱりと答えた。


「会うのは六年ぶりだろう? 断言できるのか?」


 魔道士風の男は、疑わしげに問う。


「俺があいつを見間違うはずがない。ただ……」


 騎士は断じたが、微かに戸惑いを見せた。 


「……目の色が変わっている……ように見えるな。ここからだと、はっきりわからないが……」


「俺の仮説が正しければ、まあそういうことも有りうるな」


 ローブの男が納得したように頷いた。フードからこぼれる、男にしては長めの髪が揺れる。その色は、濃い緑色だった。


 やがて店から、濃紺のローブをまとった若い男が出てきた。白銀の髪が夕陽を受けて、橙色に染まっている。


「……シグルトだ」


 ローブの男がつぶやく。


「……! あいつだ……!」


 冷静に話していた騎士の声音が変わった。

 黒い瞳が獲物を見つけた時の、飢えた獣のように、ぎらぎらと輝く。 


「やはりそうか」


 ローブの男の声は、どこか満足げだ。

 黒髪の少女は、店から出てきた男に駆け寄った。二人で何かを話し、笑い合う。男は、優しく微笑んで、少女の頭を撫でた。傍から見ていると、まるで仲の良い恋人同士のようにも見える。


 騎士は、奥歯をぎりっと噛み締め、二人に向かって一歩踏み出そうとした。それをローブの男が腕をつかんで引き止める。


「おい、もう行くぞ。シグルトは鋭い。気づかれる」


 騎士に促すと、薄汚れたローブを翻し、男は路地の奥の闇へと消えた。騎士は足こそ止めたが、なおも店の前の二人を凝視し続ける。


 少女がシグルトに背を押されて、馬車へ乗り込んでいる。触れられることに何の抵抗も覚えていない。信頼しきっている様子が伺える。


 少女を見つめる騎士の黒い瞳が切なげに揺れた。


「……エリック!」


 路地の奥から苛立った声が呼び掛ける。

 ようやく騎士は、きびすを返した。

 路地裏へと足を踏み出すが、一瞬だけ店の方を振り返る。

 紫の瞳が、こちらを見ていた。




 

 この子はもう手遅れです。諦めなさい――――





 六年前の記憶が蘇る。

 地にいつくばった無力な自分を、あのは冷たく見下していた。

 そして――全てを奪っていった。


 騎士は、ローブの男を追って奥へと駆け出した。彼の黒髪が、路地の闇と溶けあって、見えなくなった。

 

 




「先生? どうしたんですか?」


 馬車に乗ろうとして、動きの止まったシグルトに、リシェルが怪訝けげんそうに声をかけた。見れば、反対の道路の方をじっと見ている。


「……いえ、なんでもありません。知り合いがいたような気がしたんですが……気のせいでしょう」


 シグルトは微笑んで見せた。


「先生、早く乗って下さい。雲行きが怪しいから、急いで帰りましょう」


 弟子の言葉に、シグルトは空を仰いだ。

 西の方から、どんよりと曇った、灰色の雲が迫りつつあった。さっきまで晴れていたはずの空に、眉をひそめる。


「……ひと雨きそうですね」


 呟くと、弟子と共に馬車に乗り込んだ。


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