第17話 沈むイージス艦

  振り向いた二人の視界では映画のような戦闘が行われていた。


  イベント会場で破壊の限りを尽くしていたシルバーバックに対して、港に停泊していたイージス艦が砲撃を加えている。


  ユウタがその光景にあっけにとられていると、左手をフワリに引っ張られた。


「今のうちに行こう」


  フワリはユウタと違って、戦闘が行われている方を一度も見ず、出口に向かって歩き出す。




  シュウゴの命令通り、近くで認識した人間を次々と襲い、展示されていた兵器を破壊し続けていたシルバーバックは背後からの突然の衝撃を受けてバランスを崩す。


  長い両手で地面をついて姿勢を直すと、攻撃してきたのは港に停泊していたイージス艦だった。


 その時、自分を作った創造主シュウゴから新たな命令が与えられた。


『シルバーバック。あの船を沈めろ』


  短い命令だが、シルバーバックはすぐさま理解する。


 両手足で舗装された地面を陥没させ、破片を吹き飛ばしながら、イージス艦に肉薄する。


  イージス艦は主砲のレールラピッドカノンを速射したまま、動こうとしない。


  しかし、このままではまずいと思ったのか、速射しながら動き出すがもう遅かった。


  レールラピッドカノンの砲撃で胴体に火花を散らしながら、六十メートルの体躯を誇るシルバーバックはそれこそ生き物のようにジャンプし、イージス艦の後部甲板に降り立つ。


  着地の衝撃でイージス艦の前部が一瞬宙に浮いた。


  レールラピッドカノンを速射しようとするが、それより早くシルバーバックに掴まれてしまい、引きちぎられた砲塔は海に放り捨てられてしまった。


  シルバーバックはそれだけでは飽き足らず、甲板にある垂直ミサイル発射システムのハッチをぶち破って右手を突っ込み、三本の爪トライクローで装填されていたプラズマミサイルを鷲掴みにする。


  それを引き抜くと、船長以下乗組員がいる艦橋に容赦なく叩きつけた。


  プラズマの青い火球に包み込まれた艦橋は一泊置いて爆発し、イージス艦の船体は真ん中から二つに折れて、船員共々沈んでいく。


  プラズマの爆風を受けてもシルバーバックは無傷で、船が沈む前に陸地にジャンプすると、更なる獲物を探し求めて歩きだす。


 その進行方向にはユウタとフワリがいた。 

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