第8話 アリシアの秘密

「お前、ドルイド一族の──」


「はい。いままで隠してきてすみませんでした──」


「噂には聞いていたが……」


 ドルイド一族。その一族は過去に、人身御供ひとみごくう、例えば人間の生け贄を使い火炙ひあぶりの儀式をして未来を占う等と様々な魔術や儀式を行い、人々からみ嫌われて今ではひっそりと森の奥で暮らしている。一族の者は生まれた時、手首に魔法で一生消えることのない刻印こくいんほどこされるという。


「嫌いになりましたか?」


 不安そうな顔をするアリシアに、アレンは笑いかける。


「そんなことないさ。今でもドルイドの事を嫌ってるのなんて、教会とか一部の貴族だけだろ。それに、お前がドルイドだったおかげで、俺も助かったしな」


 お前じゃなくてアリシアです、と頬を膨らます彼女の頭を、そうだったなと笑いながら撫でるアレン。


「そういえばアリシア、俺の腕輪知らないか」


「腕輪……あっ」


 慌ててポケットの中に手を入れる。指先に堅い何かが触れた。良かった、流されていなかったようだ。


「これですか? すみません、寝ている時に痛そうだったから。大事な物なんですか?」


 差し出された腕輪を受け取ると、アレンは答えた。


「こいつは昔俺が旅してた頃、ある魔術師の婆さんを助けた時に貰ったんだ。ドラゴンの力を封じ込めてある、らしい。これを付けるとその力を振るうことが出来るっていう代物だ。完全なパワーじゃないけどな」


「あっ」


 その瞬間アリシアは気付いた。どうしてアレンが急に弱くなったのか。


「じゃあ全て私のせいじゃないですか!」


 自分を責めるアリシアに、そんな事ないとアレン。


「アリシアは善意からの行動を取ったんだ。何も悪くないさ」


 へらへらと笑うアレンに、アリシアは少し安心する。


「さてと、あいつをさっさと倒してナーサリアに帰るぞ」


「でも、武器も防具もありませ──」


 アリシアの言葉を遮るように。


「グオォォォォォォォォ‼‼」


 雄叫びが、響いた。

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