ソードの10

真っ黒い空の下で男が一人うつぶせに倒れている。

男の背中には十本の剣が突き刺さっている。遠くの空は明け始めている。


<絵柄のイメージ>

男の無情な最期


<正位置の意味>

「敗北」「不運」計画の失敗、不本意な状況、裏切り、納得できない


<逆位置の意味>

「敗者復活」事態の好転、被害者妄想、再挑戦、希望の光、ここから先は浮き上がる



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



【王様と十本の剣 最終話】


 処刑の直前、王様はまたしても逃げ出しました。十人の兵士が取り押さえ、その場で十本の剣に貫かれました。


 薄れゆく意識の中で王様は思います。

 国を救う計画は失敗した。不本意な状況や裏切り、納得のいかないことばかりだった。運が悪かったのではない。隣国と戦争をする計画を立てた時点ですでに負けていたのだ。


 しかし戦わなくては乗っ取られていた。決断は仕方なかった。

 王様は自分の境遇を呪いました。やり直せるのなら、今度は上手くやって見せる。その機会が欲しい。


 王様は死にました。

 海は穏やかで、向こうの空は明るい光が差しています。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「最期は王様の自業自得だけど、こんなにはっきり書かなくても」


「綺麗に終わらせるより現実的だと思ったんだ」


 童話はもともとメッセージ性の高い物語だ。それを子供向けにアレンジしたのが、絵本のような内容。

 ソードのスートにはメルヘンの欠片もない。だったらリアルな結末にしようと考えて作ったのが今回のお話だ。


「それにしても、こんなにひどいカードの画ってある?」


 姉ちゃんはレバーを食べ終わった後の串をカードに向けた。十本も刺さってるんだから、鋭利な先端は間に合っている。


 タロットで唯一、直接的な死が描かれているインパクトは強い。

 ただ絵柄の意味は別のところにある。


「正位置は敗北や失敗を暗示する。ただ命に係わることじゃなくて、対象者が『こんなにつらい思いをしている』っていう反応を描いているんだって」


「気持ちの問題ってことね」


 やり過ぎだろ、もうこれはオレ悪くないよね、むしろ可哀そうだよね?

 ……という被害者態度が表現されているのだ。一本で充分なのに十本も刺されている姿は同情を禁じ得ない。優しくしてあげたほうがいいかも。


「逆位置は事態の好転だよ。気持ちはスッキリしないけど希望はあるって意味」


「静かな海と明るい空。大アルカナの『死神』と似てるかも」


「晴れ間が見えるから、状況は思ってるより悪くないんだ」


 強烈な絵柄とは裏腹に、案外と未来の見えるカードかもしれない。




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:ソードの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-sword


※)「王様と十本の剣」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓++ヨウコのタロット占い++ 小アルカナの意味早見表・ソード↓

http://www.3tail.net/tarot/card/sword.html

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