ソードの8

灰色の空の下、白い布で全身を巻かれた人物が立っている。手を後ろに回し、顔の上半分にも目隠しがされている。

ぬかるんだ地面には八本の剣が突き刺さっている。


<絵柄のイメージ>

拘束され動けない人物。逃げることもままならない


<正位置の意味>

「束縛」「制限」活動停止、閉塞感、自分で自分を縛っている


<逆位置の意味>

「不安」「困難」束縛からの解放、意見がはっきりしてくる、干渉されなくなる



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



【王様と十本の剣 第八話】


 王様は敵の包囲網を破ることが出来ず、占領された自国の中で身を潜めました。

 広場では王様の妻が縛られて、突き刺さる剣の中心に立っています。


 きわめて閉塞感のある空間で、束縛された妻は逃げることもしません。自分の意思で立っているようにも見えます。


 ゆるく縛られた紐から抜け出さないのは、逃げた後の不安や困難を考えてのことでしょうか。それとも、すべてを諦めているからでしょうか。


 広場の妻に思いを巡らせる王様もまた、自由には動けません。

 二人とも状況は一緒です。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「何をしたらこんな状況に放り込まれるのかしら」


 他人事全開のコメントを出した口に、サイコロステーキが吸い込まれる。姉ちゃんは毎晩どこで夜食を買ってくるのだろう。


「もしくは社会風刺とか。労働者は会社という刃物で囲まれたような場所にいる。逃げようと思えば逃げ出せるけど、生活を考えると不自由でもその場にいるべき」


「なんて的確な例え……」


 絵柄にぴったりの例えが飛び出し、俺は何も言えなくなってしまった。できれば勉強してから言ってほしかった。

 これが現代の社会人を表しているとすれば、この世には救いがなさすぎる。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「見た通りカードが暗示するのは拘束。ただしずっとではなく一時的な状態らしい」


 描かれた女性をよく見れば足は縛られていない。剣はびっしりと地面に刺さっているようで、よく見れば隙間がある。逃げようと思えば逃げられる状況だ。


「縛られた人物が逃げないのは、自分自身が状況にこだわっているからなんだ。地面の泥は屈辱や恥を暗示していて、ここで逃げ出すと恥ずかしい理由があるみたい」


「プライドが高いのか、責任を感じる役職なのか……逃げるを恥と感じる気持ちは、分からなくもないけどね」


「逆位置になっても大きな変化はなく、身動きが取りにくい状態だよ」


 いっそ無理に動かず、機をうかがうべき状態なのかも。


「でも逃げられるなら逃げちゃえばいいのに。その場にいてつらいなら、離れるしかないでしょ。状況が変えられないなら」


 って、第三者だから言えるのよね……。


 姉ちゃんはぼそっとつぶやいて、サイコロステーキを噛みしめていた。




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:ソードの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-sword


※)「王様と十本の剣」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓++ヨウコのタロット占い++ 小アルカナの意味早見表・ソード↓

http://www.3tail.net/tarot/card/sword.html

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