カップのペイジ

海のそばで一人の男性が右手に持ったさかずきを見つめている。

水色の服に描かれるのは金魚の模様。

杯の中には魚が一匹入っていて、中から顔を出して男性の顔をみつめる。

背景は海。


<正位置の意味>

心が優しい、想像力が豊か、万人に好かれる、勉強熱心


<逆位置の意味>

怠け者、甘えん坊、弱気で損をする



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「カップのペイジは勉強家で頭の切れも鋭い人物を象徴している。ほかには……ちょっと現実離れした一面があるかな」


「なんか分かるかも。頭の良い人って独特な考え方が多い気がする」


 俺みたいな凡人には理解できないくらい、考えを巡らせているのかもしれない。


「逆位置になると感情的で自分に甘い奴になる。主張も整合性がなかったり、原因は自分なのに周りが悪いと決めて落ち込んだりする」


「子供みたい。本当に子供なら別として見た目は大人、頭脳は子供だったら周囲はなかなか迷惑でしょうね」


「俺のバイト先にも該当する人がいるけど、周りの扱いは慣れたもんだよ」


「まあそうなるわね。そっち側にはなりたくないって思うわ」


 逆位置のような状態にはならないように。強いいましめを感じる暗示だ。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「ところで気になってるんだけど」


 焼売シュウマイ弁当を食べ終わった姉ちゃんが絵柄を指さす。

 杯の中に小さな魚がいてペイジと顔を突き合わせている。可愛い。


「魚のコンニチワには何の意味があるの? お茶目に走ったの?」


「些細な遊び心が後世まで残っていると知ったら、製作者はどう思うんだろ……」


 もちろん説明はある。

 あるにはあるが。


「えっとね。魚はペイジの心を実体化させたものだって」


「どういうこと?」


「魚は感受性や心の特別な能力――第六感を象徴するみたい。ペイジの持つ心の在り方や想像力が、魚という形で投影されているそうなんだけど……」


「心や想像力の豊かさを鏡みたいに映しているのかしら」


 魚自体は水に関係する生き物だし、杯のスートに描かれるのは理解できる。属性の象徴だ。

 タロットの絵柄は天使や悪魔など、見えないモノや現実にないものも多く描かれている。重要なのは「描かれた意味」であって存在を具体的に定義する必要はないのかもしれない。


 俺も姉ちゃんも、凡人離れした世界の見方を身に着けつつあるのかも。




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:カップの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-cup

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