カップの9

カード中央に一人の男。腕を組み椅子に座っている。

背後には曲線を描く壁。その上には九つのさかずきが並ぶ。


<絵柄のイメージ>

壁を背に座る男、顔は自信にあふれている


<正位置の意味>

「満足」「成功」「充足」棚からぼた餅、不戦勝、降って沸いた幸運、願望の成就


<逆位置の意味>

「傲慢」「楽観」目論見が外れる、健康を損なう、宝の持ち腐れ



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



【Calm water surface 第九話】


 妻の父親に呼びだされ二人で会うことになった。結婚生活の現状は耳に入っているだろう。ぼくは覚悟を決めた。


 家を継いでほしい。義父はぼくに頭を下げた。

 寝耳に水の話だ。妻の実家はとても大きな寺で、収入面や安定を考えると満足の内容を得られた。


 怒られるというぼくの予想は外れた。妻もまた、どうすれば以前の関係に戻れるか悩んでいたらしい。同じ悩みを抱える者同士、ちゃんと向き合って話し合えばきっと解決できる。


 翌日、ぼくは会社に辞表を提出した。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「しつもーん」


 姉ちゃんがハムカツを刺したフォークを掲げた。


「どうしてお坊さん?」


「それは……展開が思いつかなくて」


 カップの物語で一番悩んだ部分でもある。どうすれば九話が急転直下の内容になるのか。日々悩んでいたところ、バイト先で一緒に働いている人の実家が寺だと話していたことにピンと来て、今回の流れに決めたのだ。


 説明すると、姉ちゃんはハムカツをそのまま口に持っていきシャクリと噛む。


「住職って儲かるの?」


「俺も詳しくは知らないけどさ、場所によりけりだって言ってた」


「お寺でもあるのね、そういうの」


 話を聞いた人はゆくゆく継ぐと話してくれた。普通に会社員やるよりはマシと考えているらしい。


「住職って自営業に当たるのかしら。大変だろうけど、会社の煩わしさがないのはうらやましい」


 そんなに社会人って……会社って嫌なところなのか。やはり俗世から離れた仕事が精神衛生につながるみたいだ。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「今回の絵柄は特に説明もいらないかな。おじさんの味のある満足げなドヤ顔と、後ろにずらりと並んだ杯が満ち足りた状態を表している」


 背景も黄色いし、幸福を招きそうな雰囲気が満載だ。


「逆位置は楽観視に対する警告。きっと上手くいく、なんて思っていると当てが外れるから気を引き締めるべし」


 どちらの意味も分かりやすいカードではある。


「ただし重点を置いているのが『心の満足』であって『金銭的な満足』ではないことには注意だよ。物質に満足したから心が満たされるって流れもあるけど、カップが教えてくれるのは心の状態。金銭的・物質的な暗示はペンタクルがつかさどる」


「お金と心の満足は別だしね」


 最後のひと口まで欠けたハムカツを見つめながら、姉ちゃんがぼそりとつぶやく。


「お金があっても使う時間がなければ意味がないの。財布にお金がたくさん入っていても、深夜に開いている店はコンビニと二十四時間営業の飲食店くらい。いくらだせば休みが買えるのかしら」


 切ない……バイト先の人にはお寺を継ぐことに賛成ですと伝えておこう。




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:カップの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-cup


※)「Calm water surface」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓++ヨウコのタロット占い++ 小アルカナの意味早見表・カップ↓

http://www.3tail.net/tarot/card/cup.html

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