カップの6

子供が二人、向かい合う。奥には壁が黄金色の家が建っている。

大きな子供が小さな子供にさかずきを渡している。器の中には白い花。

同じく白い花の入った杯が二人の手前に四つ、後ろの台座に一つ置いてある。

左奥には灰色の鎧を着た兵士が一人、奥に向かって歩く。


<絵柄のイメージ>

子供がもう一人の子供に花を贈っている


<正位置の意味>

「思い出」「暖かな絆」過去の記憶が今の糧になる、温故知新、原点に立ち返る


<逆位置の意味>

「固執」「遺産」捨てられないこだわりが失敗の原因、身近な人とのトラブル



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



【Calm water surface 第六話】


 ぼくと妻は距離を置くことにした。妻は実家に戻り、ぼくも休みを利用して久々に帰省した。


 今も残る自分の部屋が懐かしい。地元の友達にあって昔話に花を咲かせた。母親の手料理は暖かくて美味しかった。


 小学校の卒業アルバムを読んだ。文集には「ひとにやさしいおとなになる」と書いていた。書いたことすら覚えていない。純粋な気持ちはいつ忘れてしまったのだろう。過去の誓いを捨てずに持っていたら、今のぼくに変化はあったのだろうか。


 昔を思い返しながら、先のことを考える。どこに進めばいいのだろう。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「別居ってもう修復しない気がするんだけど」


「復縁するケースもあるみたいだし、暖かく見守ってあげてよ」


 ストーリーを考えておいてなんだけど、俺も疑問に思ったのでネットで情報を集めた。ない……とは言い切れないようだ。大人のドラマを作るのは難しい。


「これが仕事上の対人関係だと厄介よね」


 姉ちゃんがプラ製スプーンでカレーのルーをくるくる混ぜる。漂ってくる香りはスパイシーだ。


「同じ職場なら嫌でも顔を合わせるし、会話しなきゃ仕事になんないから。客商売もそう。こっちが避けたくても相手しなきゃいけないし。笑顔で」


「今までそういうことがあったの?」


「そうならないように上手くやってるのよ。でもぶん殴りたいやつは星の数ほどいるわ。代わりに倉庫の段ボールぶん殴ってる」


 すまし顔でからいカレーをぱくり。外からは見えないけど姉ちゃんは鉄の胃袋を持っている。だから夜中に揚げ物や刺激物を食べても平気なんだ――と勝手に思ってる。


 鉄製の内臓を持っていた方が、生きていくのに都合がいいようだ。

 まったくもって世知辛い。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「このカードにおけるカップは『懐かしい記憶』を表現しているらしい」


 人間関係の厳しさはさておいて、カードの説明に移る。


「子供は未来の象徴。それらを絵柄に当てはめると、過去が思い出を未来に手渡している。『楽しかった記憶を糧に未来を生きて』というメッセージになるんだって」


「思い出って大体美化されるしね。花が美しい過去を表すのはぴったりだと思う」


「背景の古い建物が黄金色なのは、過去を価値あるものとする表現。左端に小さく見える灰色の鎧の兵士は、現状の自分を良く思っていない象徴らしい」


「大人が灰色って……残念だけどしっくりくるわ」


 本当は現在を黄金色にしたいけど、それなかなか難しい。




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:カップの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-cup


※)「Calm water surface」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓++ヨウコのタロット占い++ 小アルカナの意味早見表・カップ↓

http://www.3tail.net/tarot/card/cup.html

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