ペンタクルのキング
カード中央で男が一人、正面を向いて玉座に座っている。まとったローブには葉やツタが描かれ、周囲の草木と同化して見える。左足でワニを踏む。
右手には杖を持ち、左手にはサッカーボール大の金貨を一枚抱え持つ。
玉座の背もたれや腕かけ部分には牡牛のデザインが施されている。
<正位置の意味>
十分な経済力を持つ人、伝統を重んじる人、温厚、慎重、堅実
<逆位置の意味>
頑固な人、ケチな人、媚びる人、お金で解決する、虎の威を借る狐
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ペンタクルのキングはストレートに富を持つ人物を暗示する」
「これ以上ない魅力的なカードね。財力ほど有無を言わせないステータスはないわ」
うにといくらが乗ったどんぶりを楽しみつつ、姉ちゃんがうっとりと王様を眺めている。半額シールが貼っていても普通の弁当と同じ値段。豪勢だ。
「もし恋愛関係の占いで引き当てれば、玉の輿決定じゃない。勝ち確定ね!」
「誰に対しての勝利なのさ……?」
堅実さや優しさなど高い人間性も暗示するが、金持ちの一言にはすべてが霞む。やはり財力は重要なパラメーターなんだな。
ともかく、お金に関してはよい方向に転がるカードだ
「正位置でこれだけいい意味だと、逆位置の反動が怖いわね」
「ひっくり返ると頑固でケチ。無駄なお金は使いたくないけれど、人にお金は使わせたい。そのうえ自分の意見は正しいと言い張る人物像を表す」
「最悪でしょ。でもお金は持ってるってこと?」
「財力がある場合は、金の力でなんでも解決させようと考える」
ドラマにしか出てこないタイプだ。現実で会ったことないけど、きっといるんだろうな。
「この王様の足元、何か踏んづけてない?」
「それはワニだよ。自分より格下の存在を踏み台にして、成り上がってきたことの暗示らしい」
「感じ悪っ」
正位置が最高なら逆位置は最低だ。
「人間関係の占いで逆位置を引いたら、注意深く読み解いた方がいいかも」
「場合によってはすぐに縁を切った方がいい相手かもしれないわ。金の切れ目が縁の切れ目っていうし」
出方によっては金銭トラブル回避に役立ってくれそうなカードかもしれない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ついに終わった……」
小アルカナ五十六枚。約二か月、毎日続けてきた勉強がすべて終了した。
「お疲れさま。大したものよ」
「姉ちゃんもずっとつき合ってくれてありがとう」
「私はご飯を食べてるついでに聞いていただけよ。あんたこそ、ひとつの分野を学んだって胸を張れるじゃないの。これで小説が書けるってことでしょ」
「そうだね。でも最後にやることがあるんだ」
俺はテーブルの上にカードの山を置く。小アルカナに大アルカナ二十二枚を合わせた計七十八枚の厚みをひさびさに見た。
時間を重ねた今なら、絵柄すべての意味が分かる。
「締めくくりとして全部のカードを使った、フルデッキの占いをやって勉強を終わりにするよ」
約三か月に及ぶ勉強の集大成だ。
※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ
↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:ペンタクルの絵柄紹介↓
https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-pentacle
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