ミッドナイト・タロットーク

ペンタクルの9

ブドウが実る庭の中に立つ女性が一人。すその長いローブをまとう。

グローブをつけた左手には、一羽の鷹（たか）が留まっている。

女性を囲う草木にはサッカーボール大の金貨が九枚ぶら下がっている

＜絵柄のイメージ＞

庭園で優雅に過ごす女性の姿

＜正位置の意味＞

「成功」「成就」対価を支払い夢を叶える、手練手管で頑張っている

＜逆位置の意味＞

「浪費」「不信」目的のために手段を選ばない、やり過ぎている

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【幸せの中で　第九話】

　大金持ちの家で細工を彫っていたとき、一人娘が声をかけてきた。世にも美しい。

　おれは一目ぼれして交際を申し入れたが断わられた。だが諦められない。

　仕事一筋で恋愛経験のない俺は、あの手この手で気を引いた。恋を成就させるためなら相応の対価も惜しまない。昔のおれじゃ考えられない金の使い方だ。

　周りからは「無駄な浪費だ」「見境がない」「やり過ぎだ」と言われ続け不信を覚えた。身分や頭の出来なんて承知の上だ。それでも振り向かせたい。

　数か月後、ついに彼女は俺の申し出を受けた。人生でもっとも大きな成功だ。

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「タロットカードの制作者によると、九枚目に出てくる女性は領主の娘で、広い領地の庭に作られたぶどう畑に立っているところらしい」

「でしょうねー、金持ちオーラ出てるもん」

　やさぐれたように姉ちゃんは鮭とばをかじる。お酒のおつまみが夜食になるのだろうか。ちなみにアルコールは飲んでいない。

「しかも鷹まで飼ってさ、富裕層の趣味は庶民と違うわ。でもこの鷹、顔が赤く見えるけど酔ってるの？」

「鷹が酔うって聞いたことないけど……これは袋を被せているんだ。知性や思考力を表す鷹に袋を被せることで、能力のコントロールを表しているんだって」

　ちなみに鳥は鷹ではなく隼（はやぶさ）だという説もあるが、正直どっちでもいいかな。

　この女性はお金があって頭も良いということだ。マンガのキャラか。

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「正位置は成功や望みの成就を暗示するんだけど、無償で手に入るわけじゃない。しかも頭脳を駆使したうえでの願望大成」

「条件が多いわね」

「あの手この手を使って望みを叶える、それがペンタクルの九枚目なんだよ」

　繰り返しになるが、ペンタクルのスートは物質面においての暗示。願いが叶ったからと言って、心も満足しているかどうかは別問題になる。ちなみに心の満足はカップの九枚目が担当だ。

「確かに願っていればそのうち叶うなんて、絵本の世界だけよね。願いを叶えるなら相応の努力をしないと。対価として差し出すのは時間かしら」

「それが一般的だよね。でも逆位置だと、手段を選ばずに願いを叶えようとしている暗示になる」

　悪役のやり方だ。そしてなりふり構わず行動した末に身を滅ぼす。伝統の流れ。

「どちらの向きも気力は十分だから、やり過ぎないようにセーブしながら物事に当たれってことだね」

　逆位置も目的達成を第一に考えるなら、あながち悪いカードじゃない。

※）タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ：ペンタクルの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-pentacle

※）「幸せの中で」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓＋＋ヨウコのタロット占い＋＋　小アルカナの意味早見表・ペンタクル↓

http://www.3tail.net/tarot/card/coin.html