ペンタクルの8

屋外でベンチのような椅子に座る一人の男。金づちと釘を持ち、サッカーボール大の金貨に五芒星の装飾を施す。

男の足元には同じ大きさの金貨が二枚、落ちている。

そばの木には五枚の金貨が縦に張りつけてある。


<絵柄のイメージ>

金貨に装飾を施す職人


<正位置の意味>

「鍛錬」「成長」目標への修練、基礎を固めている、努力の積み重ね


<逆位置の意味>

「形骸」見た目だけを繕い中身がない、形だけの作業、物事がおざなり



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



【幸せの中で 第八話】


 ある村で若い彫刻家に出会った。町へ行ったときに見た修道院のレリーフに触発されて、彫刻の道に進む決意をしたという。それは俺が昔彫ったものだった。


 若者はひたすら鍛錬を積んでいた。ひたすらに努力を重ね、基礎を固め、目標への修練に勤しんでいる。その姿に、ひたすら高みを目指していた頃を思い出す。


 自分の作品に中身がない、形だけのやっつけ仕事だと感じていたのは、おれが真に望むものをごまかしていたから。金への執着に取り憑かれていたから。


 一番欲しいものを見つけたいまなら、もっといい作品が生み出せる。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「時系列が逆なんだけどさ、八話は三話とつながりがあるんだ」


「ほーはの?」


 口にちくわパンをくわえている姉ちゃんに分かりやすく説明する。


「今日出てきた若い彫刻家が成長して、三枚目に描かれる修道院の建築に関わるの。でもそのまま書いたら理解しにくいから、ちょっと変えてみたよ」


 回想にしようかとも考えたけど上手くいかなかったので、主人公と若い彫刻家を別にしたわけだ。

 八枚目と三枚目は関連性があるので、どうにか繋げたかった。


「正位置が暗示するのは鍛錬。こつこつ努力すれば身になるよっていう成長を表す。基礎の積み重ねが大切なんだ」


「たしかペンタクルの三枚目も同じ意味じゃなかった?」


「三枚目は一人前になった後の熟練がメイン、八枚目は未熟者が基礎から積み上げていく進歩を重視しているんだよ」


 基礎課程の努力と実践課程での努力、といったところか。

 アクションゲーム序盤でうまく立ち回れるようになる上達と、クリア後に一秒でも早くボスを倒すための上達はレベルが違う。と俺なりに解釈した。


「逆位置は形だけの作業を表す。気持ちが入っていないから、知識や技術が身についていない暗示だね」


「テレビを観ながら勉強するのと一緒ね。ノートは埋まっていくけれど頭には残っていない」


 鍛錬は集中してこそ身につくものだ。




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:ペンタクルの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-pentacle


※)「幸せの中で」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓++ヨウコのタロット占い++ 小アルカナの意味早見表・ペンタクル↓

http://www.3tail.net/tarot/card/coin.html

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