ペンタクルの7

両手で長い棒を支えにして立つ男が一人。そばの茂みを見下ろす。

茂みにはサッカーボール大の金貨が六枚ぶら下がっている。

男の足元には同じ大きさの金貨が一枚落ちている。


<絵柄のイメージ>

みのった果実のようにぶら下がる金貨を眺める男


<正位置の意味>

「不安」物足りない、結果に不服、理想と現実を比較する


<逆位置の意味>

「不満」計算違い、こんなはずではなかった、努力が報われない



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



【幸せの中で 第七話】


 おれは初心に返って仕事に向かった。小さな仕事にも全力を尽くす。

 結果、再び忙しい毎日を取り戻すことができた。金にも困らなくなった……だが。


 何かが物足りない。

 手は抜いていないのに、完成した作品を見ると満足がいかない。イメージと実際の完成品にはどこかズレがある。


 客は喜ぶが、おれの心の中に不満が蓄積していく。こんなはずじゃない、俺はもっといい作品を作ろうとしたんだ。これで満足されては、努力が報われない。


 更なる技術と自分に足りないものを求め、おれは旅に出ることにした。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「ずっと思ってたんだけど、カードに描かれている金貨おおきすぎない?」


「ついに触れるんだね、その違和感に」


「サッカーボール大の金貨ってそれもう金貨じゃなし」


 姉ちゃんはみたらしのタレが黄金色に輝くいももちにかじりつく。断面から覗く濃厚なチーズを眺めていると一個くれた。うん、美味しい。


 ワンドもカップもソードも、一般的な範囲の用途で描かれていた。

 だがペンタクルだけは違って、装飾やらお手玉として扱われている。


「今回の絵柄に関しては果物みたいに実ってるしね。これって比喩なの?」


「労働によって得られる成長を表現しているみたい」


 それは金銭そのものだったり、人間関係だったり、スキルアップだったり。本人の努力を実りという形で描いている。


 いい流れなので流れでカードの説明に入ろう。


「七枚目のカードは不安や不満を暗示する。男の表情が曇っているのは結果に満足していない、進捗を心配しているんだね」


 理想と現実が異なっていたり、自分の行動を振り返り「これで良かったのか」と値踏みしているのである。


「こんなはずじゃなかったのに、ってことかしら。完璧主義者……あるいは責任感が強いのかしら」


「しっかり者なんだよ」


「そうかしら? 成果物を眺めていても意味がないわ。学んだことを生かして次に進まないと」


 過ぎたことに気をかけても仕方がない。それよりも新しいものを作る方が実りが多いってことだ。




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:ペンタクルの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-pentacle


※)「幸せの中で」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓++ヨウコのタロット占い++ 小アルカナの意味早見表・ペンタクル↓

http://www.3tail.net/tarot/card/coin.html

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