ミッドナイト・タロットーク

ペンタクルの6

中央に男が一人立っている。左手に釣り天秤を持つ。

カードの左右には布をまとう者が二人、男に向かってひざまずいている。

男は左側でひざまづく者に金貨のようなものを与える。

男の周囲にはサッカーボール大の金貨が六枚浮かんでいる。

＜絵柄のイメージ＞

身なりのよい男が貧しい者に金を与えている

＜正位置の意味＞

「公平」「対等」労力に見合った成果、尽くした分は見返りがある、ボランティア

＜逆位置の意味＞

「不当」釣り合っていない、割に合わない、一方的に与えている

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【幸せの中で　第六話】

　広場に身なりの良い男がいた。男は貧しい者に施しを与えている。おれもパンと暖かいスープを貰った。

　同じ人間なら公平であり対等であるべきだ。無償の行為は巡り巡って自分に戻る。

　自分の金を分け与えるのか聞いたら、男はこんな風に答えた。

　そんな馬鹿なことがあるか。どう考えても割に合わない。

　男は一方的に与えているだけで、あとで釣り合う保証なんて誰もしていない。

　失うだけと分かっていて、自分が稼いだものをどうして他人に与えられる？

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「ボランティアっぽいことしつつ、見返りを期待しているところが人間味あるわ」

「姉ちゃんはこういうタイプ嫌い？」

「いいんじゃない？　やらない善よりやる偽善でしょ」

　胡麻ドレッシングをかけたラーメンサラダをじゅるるとすする。

「何を言おうが実行してるなら文句言われる筋合いはないし、身を切って人を助けるなら立派なものよ。ついでに私にも恵んでほしいわ」

「姉ちゃんは仕事して稼いでるじゃんか」

「くれるなら関係ないわ。もらえるものはもらっておく、基本よき・ほ・ん」

　何の基本かさっぱり分からないけど、人間味があふれているとは姉ちゃんみたいな人のことだろう。

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「六枚目のカードは公平や公正を表す。具体的には、がんばった分だけ戻りがあるということ」

「努力が報われるってこと？」

「そうだね。でもペンタクルが暗示するのは物質面の充実であって、心の充実ではないってこと」

「利益は得られるけど気持ちには不満が残る……達成感や満足感がついてこないのはちょっと嫌かも。同じことをするときに腰が重くなりそう」

　がんばった成果が形に現れたら、気持ちもついてきそうなものだけど……腑に落ちない結果という暗示は、いまいちポジティブに感じられない。

「逆位置はそのまま裏返して割に合わない、見合わない対価という意味になる」

「骨折り損のくたびれ儲けなんて絶対にやりたくない。労働の対価に報酬はあって然るべきよ。だからサービス残業とかこの世から消滅してほしいわマジで……」

　そういいつつ毎日深夜に返ってくる姉ちゃん。行為と心情が結びつかないのも人間味なのかもしれない。お疲れさま。

※）タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ：ペンタクルの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-pentacle

※）「幸せの中で」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓＋＋ヨウコのタロット占い＋＋　小アルカナの意味早見表・ペンタクル↓

http://www.3tail.net/tarot/card/coin.html