ペンタクルの3

石造りの修道院で三名が輪を作っている。それぞれ前掛けをした者、聖職者風の者、全身を水玉模様の布で覆っている者。

建物の柱上部に装飾が施されており、五芒星を描いた円が三角形に置かれているように見える。


<絵柄のイメージ>

異なる職業の三名が、建物内で会話をしている


<正位置の意味>

「進歩」「熟練」時間をかけたことが実を結ぶ、技術で利益を得る


<逆位置の意味>

「未熟」「凡庸」経験不足、手抜き、そのレベルに達していない



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



【幸せの中で 第三話】


 おれは彫刻で飯を食っている。とは言っても取り立てて腕がいいわけじゃない。下っ端も下っ端、仕事といえば雑用ばかり。金を稼ぐには名を上げなければ。


 一念発起して腕を磨く。時間をかけて、基礎から一歩一歩着実に技術を磨くんだ。

 しばらくすると成果が見え始めた。熟練が実感できる。


 楽をして手を抜き、経験不足を受け入れていた愚かな俺はもういない。誰も未熟で凡庸とは言わなくなった。


 名前が知れた頃、修道院の建築を任される。

 これが完成すればおれの彫刻家としての評判はさらに上がるだろう。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「詐欺か略奪に走ると思っていたけど、案外と根は真面目な男なのね」


「だから悪いやつじゃないんだよ」


 俺は自分が褒められたような安心感を覚えた。姉ちゃんからもらったメロン味のチョコレートが一層甘く感じる。


「カードの三枚目は創造性を表すため、スートの性質が強く発揮される」


「今回の主人公に合致してるじゃない」


「正位置は専門性や熟練した技術から得られる利益や名声を暗示。時間をかけた物ごとが実を結ぶことも教えてくれる」


 目的に向かって努力する人には嬉しいカードだ。すでに高い位置で腕を磨く人にとっては、更なる向上を示す。レベルアップのチャンスと受け取っていい。


「逆位置は裏返して未熟や凡庸の暗示だね。自分を見直して基礎力の底上げに努めるもよし、新たなチャレンジのタイミングを見るもよし」


「経験が浅いことは悪いことじゃないわ。伸びしろがあるとプラスに捉える方が、周りも応援しがいがある。まあ、歳を重ねると難しい考え方だけどね」


 若さってほんと大事だわー、そういって姉ちゃんは肩を抑えて首を傾けた。一子相伝の中国拳法を喰らったような骨の音が響いて「あ゛あ゛ぁー……」とうめく。

 マッサージ店に行って若さを取り戻してほしい。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「補足だけど、カードに描かれている三人は彫刻家と修道士と建築家なんだって。それぞれが情熱・情緒・技術を表し、最高の傑作は三つの要素から成り立つことを暗示しているそうだよ」


 小説家という個人作業の道に進みたい俺としてはとしては、心・技・体の三要素ということで理解したい。


「真ん中が修道士で左の前掛けが彫刻家なのは分かるけど……全身水玉模様の人が建築家? この人に依頼して大丈夫?」


「俺も不思議だったけど……才能あるからこそ奇抜な格好をしているんじゃない?」


「私には芸術分かんないわ。理解できないもん」




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:ペンタクルの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-pentacle


※)「幸せの中で」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓++ヨウコのタロット占い++ 小アルカナの意味早見表・ペンタクル↓

http://www.3tail.net/tarot/card/coin.html

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