ミッドナイト・タロットーク

ペンタクルの2

カードの中央に男性が一人。表情は浮かない。

赤を基調とした服装で、長くて真っ赤な帽子をかぶる。背景には波立つ海。

広げた両手にはそれぞれサッカーボール大のペンタクルを持つ。

ペンタクルには緑の紐が引っ掛けてあり、中央で一回ねじれて「∞」の形を描く。

＜絵柄のイメージ＞

曲芸師がおどけてボールを操っている

＜正位置の意味＞

「器用」「両立」「柔軟」高い適応能力、臨機応変に対応する

＜逆位置の意味＞

「適当」「悪化」変化についていけない、二つを同時に処理できない、自転車操業

　☆　　☆　　☆　　☆　　☆

【幸せの中で　第二話】

　広場で大道芸人がパフォーマンスをしていた。

　陽気なもんだ。好きなことで稼げればさぞ幸せだろう。

　生活に興味があったので話を聞くと、他にも仕事をしているらしい。

　器用に両立させているものだ。物事の適応能力が高いのだろう。

　かと思いきや、どっちつかずの自転車操業らしい。

　忙しいうえに生活は悪化の一途。よくみれば男の顔は疲弊していた。

　仕事を増やして実入りを良くするのは得策じゃあない。

　やはりひとつの道で安定を目指すべきか。

　☆　　☆　　☆　　☆　　☆

「ダブルワークはつらいわ。やらない方がいい」

　姉ちゃんは焼きそばをずるずるとすすり、カップに入ったスープを煽る。

「収入は増えるけど肉体的にも精神的にも負担が大きい。職場が離れていれば移動に時間もかかるし、予定が入ったときのシフト調整も面倒。若くて体力に自信があっても、ひとつの仕事で勤務時間を増やした方がコスパがいいと思う。可能ならね」

「掛け持ちで仕事したことあるの？」

「私はないけど、掛け持ちしてるバイトの子がいてね。元気に振る舞っていたんだけど、ある日いきなり倒れたの。診断の結果、過労だった」

　なにそれちょっと怖い。二足のわらじは上手く履かないと生活を圧迫するってことか。なんにしても、二刀流を夢見るのはゲームの中だけにしておいた方がいい。

　☆　　☆　　☆　　☆　　☆

　人生のアドバイスを心に刻みつつ、カードの勉強をしよう。

「正位置は両立とか、柔軟な対応という暗示だよ」

「二つのコインでジャグリングしているような仕草が器用に見えるわ」

　でも絵柄には真の意味が隠されている。

　俺は描かれた男の表情を指さした。

「この男の顔をよく見て」

「あんまり楽しそうじゃないわね。面倒な仕事を押しつけられた時の私みたいな顔してるわ」

「そんな客観的に分析できるんだ……これはコインを操っているんじゃなくて、持て余している画なんだ。どっちつかずの状況で選べない、という読み取りができる」

　男はコインを使いこなせず、心中穏やかでない。

「背景に描かれている荒れた海も感情を表現している。ふたつ、あるいはいくつかの選択肢のどれを選ぶか迷い、落ち着かないことを暗示しているんだって。これが逆位置の意味」

「迷っているから事態は変わらない……やっぱり結果を出すには行動あるのみね」

※）タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ：ペンタクルの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-pentacle

※）「幸せの中で」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓＋＋ヨウコのタロット占い＋＋　小アルカナの意味早見表・ペンタクル↓

http://www.3tail.net/tarot/card/coin.html