ワンドのナイト

騎乗し左側へ向かう甲冑の男。左手で手綱を持ち、右手で木の棒を掲げる。

鎧の上には敗れたシャツを着ている。黄色を基調とし、尻尾を加えていないトカゲが描かれている。

背後には砂の大地。馬は燃えるような火の色の毛。


<正位置の意味>

「情熱」「好奇心」「快活」様々なものに興味を示す、移転や移動


<逆位置の意味>

「衝動的」「嫉妬」偏見の目で物事を捉える、思い通りにならない苛立ち



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



 市販のシュウマイをもそもそと食べる姉ちゃんを前に、今日もカードの勉強を始める。まずは通常の意味から説明していこう。


「正位置なら移転や移動、あとは日常における重要な出来事の暗示かな。もちろん良い意味で」


 大きなエネルギーを使うような行動を示すことが多いようだ。


「逆位置は強引とか、都合の良い様に力づくで動かすとか」


「周囲の意図より自分の都合を優先して協調性皆無。集団では嫌われるタイプね」


 スタンドプレイで重戦車のごとく突き進む人についていくのは、頼もしい一方で疲れる場合もある。せめてこちらの歩幅も把握して欲しい。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「昨日のペイジも同じ柄の服を着てたけど、なにがプリントされてるの?」


「これはトカゲだよ。サラマンダーっていう火をつかさどる精霊なんだ」


 ファンタジーではお馴染みの四大精霊のひとつ。大体は炎に身を包むイラストで描かれるが、このタロットでは真っ黒こげに丸まったトカゲにしか見えない。


「実はペイジとナイトじゃトカゲ柄が違うんだけど、分かる?」


 二枚のカードを姉ちゃんの前に並べる。


「……一緒にしか見えないけど」


「ペイジのサラマンダーは尻尾が口にくわえていて、ナイトは届いていないんだ」


「…………そーぉ?」


 疑う気持ちは分かる。俺も見比べて「そうでもないけど」と思った。


「一応、尻尾をくわえていないサラマンダーは不完全や未熟さを象徴するんだ。だからワンドのナイトは勢いこそあるものの、しっかりとした計画性に欠けるって意味になる」


「うーん、未熟なペイジが不完全なら分かるけど……」


「ペイジのサラマンダーは『完璧な純粋さ』を表現しているんだ。対象が違う」


「ややこしいわね。深く考えないで、そういうものだって捉えておくわ」


 正直この話は分かりにくい。しかしコートカードはサラマンダーが多く描かれているため、今後のカード説明のためにも触れておいた。続きは最後のカードで話そう。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「ナイトにも人物としての意味があるの?」


「うん。ナイトは成人したばかりで行動力のある若者を示す。そこにワンドの性質『火』が加わるので、情熱と行動力を合わせた意味を持つんだ」


 騎士らしく馬に乗っているので、行動力と結び付けやすい絵柄だ。


「会社でいえば新入社員の位置かな。最近はどうも冷めた子が多いのよね。せめて挨拶くらい愛想よくしてほしいわ、まったく」


「それはよく分からないけど……熱量がネガティブに働くと自己中心的や自分勝手な人物の暗示になる。これが逆位置の読み取り方」


「通常の意味がそのまま人物像の性格に当てはまるのね。正位置のナイトは可愛がるけど、逆位置のナイトは同じ店で働きたくない。やっぱり若い子は元気が一番よ」


 おばちゃんみたいなこと言ってると思ったけど、口に出したら首を絞められるので秘めておこう。


 行動力を発揮する際は周りにも気を配れ。そんな解釈も込められている気がした。




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:ワンドの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-wand

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