ワンドのペイジ

砂漠のような場所に立ち、右を向く青年。両手で木の棒を持つ。

灰色の帽子には羽飾り、黄色を基調とした服装には黒いトカゲの模様が散っている。


<正位置の意味>

「純粋」「情熱」忠実で謙虚な人物、伝令者、フレンドリー


<逆位置の意味>

「わがまま」「無粋」気の利かない人物、頼りない、礼儀知らず



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「今日からワンドのコートカード――宮廷人物の絵柄を勉強します」


 四枚の絵札を前に改まった言い方をしたのは、気合を入れるため。コートカードの解釈はちょっと難しいからだ。


 事前に話していたせいか、ホットドックをかじる姉ちゃんの表情も渋い。


「大アルカナの人物よりはさっぱりと描かれているし、今までのニューメラルカードよりも物語性は薄く感じるかも」


「通常の意味に加えて特定の人物を示す場合もあるから、解釈の幅が広いんだよな」


 コートカードに関しては、調べる文献で説明にばらつきが感じられた。つまり、これと決まった解釈があるわけじゃない。捉え方はさまざまだ。


「占う内容に応じて柔軟フレキシブルな読み取り方を求められるってことね」


 小アルカナは初心者向きじゃないって本に書いてあったけど……ここに理由の一つがあるのだろうか。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「今日はコートカードの一枚目。ペイジは騎士見習いって意味で、年齢としては未成人を表しているらしい。また成熟していないぶん、スートの性質をシンプルに示す」


「大人になるといろいろ混ざってくるから……純粋じゃなくなるのは仕方ない」


 姉ちゃんは何かを悟るようにずずずと烏龍茶を飲んだ。俺は汚れたくない。


「カードの意味自体は正位置なら決断、行動力、嬉しい知らせ、元気の出る出来事。逆位置なら自分勝手や意地っ張り、落ち込むような知らせを暗示する」


「火のイメージから想像しやすい結果ね」


 ワンドの基本は燃えるような活力。そのエネルギーが良い方に生かされるか、悪い方へ流れるかだ。


「で、人物像なら正位置は真っすぐでエネルギー溢れる人、逆位置なら目立ちたがり屋が想像される」


「占いにはどう反映されるの?」


「結果に絡んでくる登場人物を暗示しているんだって。それが誰かは占う相手とコミュニケーションを取りながら探っていくしかない」


 人物像と言うより内面——気持ちや性格を表すと言ったほうが正確か。そのあたりを知るためには相手の話を聞くこと。


 占いはカードだけでなく相手と意思疎通することも大切だ。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「人物像の暗示としてもうひとつ、ワンドのペイジは伝達者メッセンジャーを指し示す場合もある。内容が幸か不幸かは上下次第かな」


「考慮する部分が多くて大変。経験を積んでいくしかないわね」


 手法を模索しなければならないというのは、未熟なペイジらしい。


 特に他のカードとのつながりを読み解く必要があるかもしれない。単体ではなく連携による効果が重要……と言うとゲームの話みたいだけど、覚えやすい表現だ。

 



※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:ワンドの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-wand

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