ワンドの2

城壁のような場所から、遠くの街並みや海を眺める一人の男。カードに背を向ける。

男を挟むように二本の木の棒が立っていて、男は左手で棒を掴んでいる。右手には水晶玉ほどの地球を持つ。

城壁の一部には白いユリと赤いバラがプロペラのように交差する画が書かれている。


<絵柄のイメージ>

高所から風景を一望する。表情は見えないので何を思うかは予想するしかない。


<正位置の意味>

「富・財産」「権力」「昇進」夢と現実のバランスが良い、金・地位・不動産の獲得


<逆位置の意味>

「自信喪失」「孤独」「不安」今後の不安や焦り、理想と現実のギャップ



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



【商人シーマの大陸繁盛記 第二話】


 城の胸壁に立つシーマは比類なき商才で大成功し、一国の経済を手中に収めた。実質的には支配したといっても過言ではない。


 責任はつきまとうが富も権力も手に入れた。振り返れば夢に突き進んだ道が続いている。


 自信を失うこともあった。現実の壁に苦悩した。今後を考えれば不安は尽きない。

 信頼できるパートナーがいれば別かもしれないが……シーマは孤独だ。


 過去を振り返り、未来に背を向けてばかりではいけない。

 心中に新たな野望が灯りつつあった。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「展開が早すぎない?」


 イチゴの挟まったフルーツサンドを食べていた姉ちゃんの手が止まる。連載二話目にして衝撃展開だったらしい。嬉しい反応だ。


「このペースでいけば、次は大陸一の商人ね」


「シーマの能力は小さな店に収まるものじゃなかったんだ。これからどうするのか……それは明日のお楽しみ」


 先に言うとこの作品は異世界転生モノではない。シーマには素質があっただけ。


 もし流行りに乗っていたら『神様にチート能力プラスで商人として国を手に入れた俺が今度は世界を手に入れる!』なんてタイトルだろうか。売っていても買わない。

 

 個人的にファンタジーを書くなら純粋な世界観が好きだ。もちろんジャンルを否定するわけじゃなく、個人の嗜好しこうとして。


「どうやって大成功したかのプロセスが気になるけど……目的はカードの意味を覚えることだし、超展開は置いとくわ」


 助かるよ姉ちゃん。

 成功までの道筋はまったく考えていない。場面を切り取って話を考えるのも初めてなので、それはそれで貴重な経験になっている。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「絵柄の補足に移るよ」


 カードの理解には欠かせない絵柄の読み解き。物語以上に大切なことだ。


「シーマが左を向いているのは、過去を振り返っているから」


「左は過去や精神の世界、右は未来に通じる――大アルカナで学んだ知識が使えるなら、城壁の凸凹部分に描かれた赤いバラは情熱の象徴ね」


「その通り。白いユリは純粋さを示す」


 対称的な色の花は『法王』に描かれた二人の僧侶の衣服に通じる部分がある。


 ちなみに城壁の最上部に設けられた凸凹部分を『胸壁きょうへき』と呼ぶらしい。兵士はここで飛んでくる弓矢から身を守りながら戦うんだとか。勉強になった。


「男が右手に持つ地球儀は支配の象徴。左手の棒は支えていないと倒れるところから、財産は気を付けて管理しないと崩れることの暗示だと思う」


「持ち物は多くなるほど、大きくなるほど管理が大変だからね。それが一国ならなおさら、ってことか」


 背中が物語る哀愁も大きな持ち物ゆえだろう。

 果たしてシーマの望みは叶ったのか、明日の物語を読んでもらうのが楽しみだ。




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:ワンドの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-wand


※)「商人シーマの大陸繁盛記」の参考にさせていただいたサイトはこちら

↓++ヨウコのタロット占い++ 小アルカナの意味早見表・ワンド↓

http://www.3tail.net/tarot/card/wand.html

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る