ワンドのスート
ワンドのエース
空に浮かぶ雲から右手が突き出す。
その手には直線状に伸びた木の枝が握られている。
<カードのポイント>
『1』は根源・可能性・統率を示す。ワンドのエースは火の性質を純粋に表現する
<正位置の意味>
「創造」「夢」目標へ向けてのスタート、熱意に満ちているなど
<逆位置の意味>
「弱気」「衰退」「自己中心的」スタートの出遅れ、困難な道筋、冷める情熱など
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「まずは火の
「エースってアルファベットの一文字目『A』のことで、始まりを指すって聞いたことあるわ。タロットも同じなのね」
雑学を披露しつつ、姉ちゃんは砂糖を多めに入れたプレーンヨーグルトを食べる。
そんなこと調べもしなかったので、ひとつ賢くなった。
「エースはスートの純粋なエネルギーを暗示するんだ。火の性質をつかさどるワンドはスタートや誕生という意味以外に、熱意とか力強さを示す」
「情熱の炎って言葉もあるし、覚えやすいわ」
「ネガティブな意味になると気持ちが冷めるって感じだね。大アルカナでいうと太陽の逆位置の意味に近いかな。それの軽いバージョン」
エースはシンプルな意味で覚えやすくもある。解釈は難しくないだろう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「大アルカナと比べると、ずいぶんシンプルな絵柄だけど」
姉ちゃんは途中まで食べ進めたヨーグルトに、小さじ一杯の砂糖を足した。
「特徴が少ないと記憶に残りにくいかも。覚えるためのプラスワンが欲しいわ」
「ふっふっふ……ご安心ください。そんなニーズにお応えすべく、ちゃんと用意してきましたよ。小アルカナのみの企画を」
俺は姉ちゃんに渡したペラ紙の資料とは別に、もう一枚差し出した。
「大アルカナは愚者が数字順に絵柄の出来事に遭遇していく物語だったよね。同じようにスートにも物語を作った人がいる」
ネットでいろいろなタロット占いサイトを巡っていたときに知ったことだ。
カードの製作者が作った物語ではないが、興味深いお話だった。
「いいわね。漠然と意味を頭に入れていくよりも覚えやすそう」
「そのストーリーを参考にしつつ、カードの意味を踏まえた物語を書いてみた。ニューメラルカードのみの全十話構成だけど、合わせて読んでみて」
原作ありの物語というわけだ。設定を盛りこんでボリュームアップしたので、オリジナルとは結構かけ離れたが……重要なのは意味を覚えることだ。
俺の執筆スキルのレベルアップにもなるし、まさに一石二鳥の企画といえる。
「そういえばあんたの書いた話を読むのって初めてね。ちょっと興味湧くかも」
「俺も誰かに読んでもらうの初めてだからドキドキする」
姉ちゃんはワンドの物語に目を通す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【商人シーマの大陸繁盛記 第一話】
商人シーマの夢は大陸一の店を持つこと。
商魂を燃やし、商売のために西へ東へ歩き回る。
今日は山を越える。
心ばかりの護身用にと拾った木の枝は手になじむ。握ると前向きな気持ちがわく。
幼き頃から抱いた情熱の火が揺らぐことはない。しかし先の道のりは困難で、気持ちが折れるかもしれない。出鼻をくじかれるかもしれない。不安と希望は表裏一体。
まずは山の向こうにある城下町を目指そう。そこで新たな商売を始めるのだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「各話は『絵柄の特徴』『正位置の意味』『逆位置の意味』を含めた、短いストーリーでつづっていく予定だから。で、内容はどう?」
「私は文系じゃないからよく分からないけど、読みにくくはなかったわ」
「そっか。それならよかった」
盛り込む情報は決まっているし、余計なことを書けば意味がぼやけて散らかる。
こんなルールで話を書くのは初めてだから難しかったけど、楽しくもあった。
「気になるとしたら……なんで主人公はシーマって名前にしたの?」
「ビジネスで成り上がっていくと言えば島耕作じゃん」
一人の男がビッグビジネスを掴んで成り上がる、といえば思いつくのは有名なサラリーマンだ。
姉ちゃんの感想は悪くない。この調子でストーリー書いていこう。
※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ
↓ブログ「やっぱりたけのこぐらし」小アルカナ:ワンドの絵柄紹介↓
https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-wand
※)「商人シーマの大陸繁盛記」の参考にさせていただいたサイトはこちら
↓++ヨウコのタロット占い++ 小アルカナの意味早見表・ワンド↓
http://www.3tail.net/tarot/card/wand.html
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