第二章 小アルカナ編

第9話 小アルカナの基礎知識を勉強しよう 前編【スートについて】

 大アルカナの意味を勉強し、道具も揃えて実際に占いもやってみた。


 あれから一週間。深夜のリビングには俺と仕事帰りの姉ちゃん、食卓テーブルの中央にはタロットカード。久しぶりの光景が広がる。


「今月から小アルカナの勉強を始めたいと思いますっ!」


「少しでいいから分けてほしいわ、その元気」


 姉ちゃんはコンビニのグラタンをふーふーしながら口に運ぶ。相変わらず仕事は大変そうだ。社会人は毎日約二十時間の勤務をいられるのかと思うと、やっぱり就職なんてしたくない。


 そのためにも、大学卒業までにライトノベル作家としてデビューしなければ。


 次に応募する作品で賞を獲るため、設定の核となるタロットカードの勉強は手を抜けない。「専門性」は面白い作品に共通する要素のひとつ、ラノベの書き方的な本に載っていた。タロットの知識を自分の作品の柱にするんだ。


 目の前には五十六枚を重ねたタロットカードの山札。コンプリートの道はまだまだ遠い。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「多いわね。でも大アルカナ二十二枚分の知識があるんだし、基本は一緒でしょ」


「応用はできるけど、小アルカナだけの要素も結構多いんだ」


 グループ分けがはっきりしていて、独自の言葉も多い。頭を切り替えて覚える方がいいかもしれない。


 まずは用語の説明だ。


「小アルカナは『スート』という四つのグループに分かれている」


 それぞれのスートの象徴マークが描かれたカードを並べる。


「スートは各十四枚で構成されていて、一から十まで数を割り振られた『ニューメラルカード』と、四枚の『コートカード』で構成される」


 見本として一種類のスートを数字の順番に置いていく。


「これが四セットで合計五十六枚。これが小アルカナの内訳なんだ」


「なんかトランプに似てるわね」


「トランプを元に作られたのがタロットだと言われてる」


 一説によれば十五世紀、それまであった遊戯用の札プレイング・カードに二十二枚の場面札(これをトライアンフ、トリオンフィ、トランプと呼ぶらしい)を加えたデッキがタロットの原型になっているとか。


 四つのマークに十枚の数字札と、人物の絵札。枚数に差はあるがほとんど一緒だ。


「トランプはゲームをするための札だけど、小アルカナはすべてのカードに違う意味がある。似ているようで別物って思った方がいいかな」


「ウインナーとソーセージ、バターとマーガリン、もりそばとざるそばの関係ね」


「う……うん? そうかな……?」


 そばつゆにつけて食べる様式が「もりそば」ざるに持って出すのが「ざるそば」。

 ついでに、そばつゆと合わせて出てくるのが「かけそば」と聞いたことがある。


 だからもりそばとざるそばは一緒だ……関係ないしどうでもいいな!


 気がついたら姉ちゃんは笑ってた。弟をもてあそぶとはひどい姉だ。



 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



「何から勉強するの?」


「まずはスートの意味から。一番大きなくくりだし」


 というわけで四つグループについて説明していこう。


【ワンド】

 木の棒や杖のこと。ワンドのカードには切り落とした細長い木の棒が描かれている。燃えやすいためか、地水火風の四大元素で「火」を象徴するスートだ。


 このグループは人間の根源的な意志の力=生命のエネルギー、想像力、向上心なんかを象徴している。明るく積極的で、活発な状況を表すことが多いらしい。

 


【カップ】

 現代で使われているコーヒーカップのようなものではなく、さかずきのようなものだ。大アルカナには何度も登場している。四大元素の「水」を象徴する。


 水は流動的でうつろい、変化に富む物質。それは人の感情に似ているがゆえ、カードの内容もまた心の機微きびに関する部分が多い。ワンドとは逆に受動的だ。



【ソード】

 四大元素の「風」をつかさどる剣はかっこいいの一言に尽きる。武器として用いられる象徴からか対立や勝敗、怒りや悲しみに関する事がらが多い。


 原材からの加工物ということで、ワンドとは逆に知性と結びつけられる。自然物から何かを作り出すのは人類の叡智えいちというわけだ。



【ペンタクル】

 本来は五芒星を印した護符や紋章のことだけど、金色の円形に描かれたそれは金貨にしか見えない。四大元素では「地」にあたる。地に足をつけて生きるならお金は大事だ。


 見た通り金銭に関わることが多い。経済面や仕事、物の価値など実利的・物質的な意味を示す。一方で魔術的な記号として、自然の特別な力を象徴する場合もある。



「……って感じ。四大元素は属性エレメントとも呼ばれてる。火なら燃える感情、水なら癒しみたいに、それぞれの自然現象から連想される要素をイメージして」


「あんたが好きそうな言葉ね」


「うん好き。めっちゃテンション上がる」


 ファンタジー設定と四つの属性は切っても切り離せない基本設定。

 俺が小アルカナもしっかり勉強せねば! と熱を入れる動機でもある。


「スートがどんなくくりかを知っておくだけでも、カードの意味はだいぶ理解しやすくなると思うよ」


 この基礎知識をベースに、それぞれのスートを学んでいこう。




※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ

ブログ「やっぱりたけのこぐらし」

小アルカナ:ワンドの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-wand


小アルカナ:カップの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-cup


小アルカナ:ソードの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-sword


小アルカナ:ペンタクルの絵柄紹介↓

https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-pentacle

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