Ⅹ 運命の輪【WHEEL of FORTUNE】
――Ⅹ 運命の輪【
カード中央に円盤。中央には記号と矢印、円周にはラテン語とヘブライ文字が交互に書かれている。輪の外周にはスフィンクス、蛇、冥界の神とされるアヌビスがいる。
四隅にはそれぞれ動物が描かれており、右上に天使、左上に
<絵柄のイメージ>
開店する輪を中心に様々な動物が運命を
<正位置の意味>
報酬・チャンスなどの『幸運』、変化・転換期・出会いなどの『運命』
<逆位置の意味>
アクシデント・情勢悪化などの『不幸』、延期・遅延・妨害などの『想定外』
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ずいぶんと賑やかなカードね」
姉ちゃんは幕ノ内弁当のプラスチック蓋をとり、いただきますと手を合わせる。
「今までは多くて三体だから、登場キャラ七体はボリューミィだよな」
見ようによってはアニメのキービジュアルだ。ジャンルは異種族バトルファンタジーで間違いない。
「今までで一番イメージの湧かないカードね」
「意味としてはシンプルだから、カードを覚えるのは楽だと思う」
ただし絵柄の解読は複雑だ。そのために大事なのは各キャラクターを掘り下げること。今回はゲーム的要素が多いので、姉ちゃんには上手く説明しないと。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「まずは中心の『運命の輪』を見ていくよ。円周の八方向に書かれている文字、まずはラテン語……英語だけを時計回りに拾って読むと」
「
「そう。そしてタロットの語源ともされる。意味は『道』」
難しいのは読み方の分からない文字だ。
「残っているのはヘブライ文字っていう古い言葉。特にこの四つは
「ふーん……内側の記号みたいなのも古代文字なの?」
「こっちは錬金術の記号なんだって」
記号が表すのは硫黄、水銀、塩。これは錬金術における需要な
ここは隠者=ヘルメス・トリスメギストス説の流れを知っていると理解しやすい。
「つまり運命の輪は世界を司る神様を示す。それが世界の中心となり、あらゆる道を指し示す
「社会の歯車は人間だけど、世界の歯車は神様。お互い大変よね」
神様に同情してる……? 自分と同列に捉える姉ちゃんはなかなかの大物だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「じゃあキャラクター紹介に移るよ。七体もいるからテンポよく行こう」
まず輪の周囲にいる三体。
右下の可愛い顔をした蛇は、ギリシャ神話に出てくるテュポーン。不死の邪神らしいが、そんな面影は一切ない。にょろにょろ系ゆるキャラ担当で人気がありそう。
蛇は『魔術師』や『恋人』にも登場している。死と再生の象徴だ。
左下にいる犬っぽい顔をした人型は冥界の神アヌビス。エジプト神話に登場し、ピラミッドの壁画などに描かれている有名神。その名の通り地獄を司る。
そして頂点にいるのは神殿や墓所を守るスフィンクス。説明は不要だろう。
「この三体は肉体が朽ちてまた生まれ変わるという、輪廻転生のローテーションを示しているらしい。人生とか時間とか、変化はあれど本質は普遍で規則正しい流れの表れだと思う」
次はすみっこに暮らしている四体。左上から時計回りに天使、鷲、獅子、牡牛だ。
それぞれが風・水・火・土の四大元素や、新約聖書の四福音書の著者を表現しているともいわれる。彼らの翼は神様の使いであることを示しているらしい。
「どうして本を読んでいるの? 揃って村上春樹にハマっているとか」
「みんなハルキストにしないでよ。でも調べていておもしろ可愛い解釈があったよ。みんな勉強中だから本を読んでいるっていう」
勤勉な上にほほえましい。みんな仲良しさんのズッ友なのか。
「そうだとして、どういう解釈になるの?」
「俺が思うに運の良し悪しなんて波があるし、結局は自力をつけて生きていかなきゃダメだよね……なんていう暗示かなって」
「福沢諭吉も『学問ノススメ』で似たようなこと言ってたし、運に頼らず生きるのは大事よね」
困ったときの神頼みじゃ必ずしも救われない。自分を救うために頼るのは、いつだって自分自身だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『運命の輪』のカードまとめ。
正位置で引くと、ツイてるねノッてるね状態。流れを掴んで事を上手く運ぼう。
逆位置で引くと、運のよさ下落状態。レアアイテム狙いはやめとけタイミングだ。
「正位置は幸運、逆位置は不運。本当にシンプルね」
「補足すると正位置でもフィーバータイムは続かない。好機の終わりどころを見極めることが必要。逆位置だとしても不幸もずっとは続かない。必ず上がるときはやってくるので、それまで無理せず確実な行動を心がけること」
「どっちにしろ変化のタイミングは逃さないことが大切ね」
永遠に続くことなどない。そんな真理を表しているのかもしれない。
※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ。
ブログ「やっぱりたけのこぐらし」:大アルカナの絵柄紹介↓
https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-big
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