Ⅱ 女教皇【THE HIGH PRIESTESS】
――Ⅱ 女教皇【
左側に「B」と書かれた真っ黒な柱、右側に「J」と書かれた白い柱。
中央に白い服を纏う女性が座っている。手には「TORA」と書かれた巻物を持つ。
足元には月のオブジェ。女性の背後にはザクロの絵柄が書かれたタペストリー。
微かに見える背景は湖と空の地平線が広がっている。
<絵柄のイメージ>
神聖、神秘、純潔、バランス、秘密など。2は「対」を表す
<正位置の意味>
平常心、客観性、優しさなど『心の豊かさ』、清純など『清らかさ』、洞察力、理解力、普遍性など『公平・公正』
<逆位置の意味>
激情、無神経、わがまま、神経質、ヒステリーなど『心の不安定』、プライドなど
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「はい姉ちゃん、今日勉強するカードと
「まめねえ……これは何て読むの。おんなきょうこう? じょきょうこう?」
「
女教皇は教会で高い位に就く女性。ヴェールで顔や身体を隠しているのも習わしだろう。その立ち位置から神聖、純潔など精神の清らかさを示している。
「そうそう、タロットカードの解釈のひとつに『人物の並びは愚者が出会う順番』って説があった」
「愚者って特別なカードなのね。昨日の魔術師はともかく、女教皇は身分の低い者が簡単に謁見できる存在じゃないと思うけど」
「この時代、住む世界の違う人を肉眼で見る機会なんて、街を練り歩くパレードのときくらいかもな」
ラノベなら、そのへんから主人公が運命の渦に巻き込まれていくのが『王道』だ。
人物のモチーフは諸説ある。
まずは伝説の女教皇ヨハンナ。俺の好きなゲーム『ペルソナ5』に登場する新島真のペルソナと同じ。
なぜ伝説なのかと言えば、カトリックに女教皇が認められていないため。実在するのか真偽のほどは定かではないらしい。
エジプトでは純愛の女神イシスをモデルにしている、なんて話もある。
いずれにせよレア度SSSの人物には違いない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「目を引くのは両側の柱ね」
「黒い柱の『B』は
公平・公正の意味はここから読み取れる。二つの柱は読解者によって意味が様々だった。追及するとキリがないので割愛。
「そして光を表とすれば闇は裏。これは『二面性』というキーワードを表している」
「この女も表向きは清廉潔白だけど、裏では悪事に手を染めているのかしら。コンプライアンス重視のフリして、従業員にはサービス残業ジャブジャブさせてます的な。とんでもないトップね」
それは姉ちゃんの会社だろ……この人は社長じゃなくて教皇だから。
「裏の顔はともかく、他にも意味を示唆する部分がある」
例えば背景を隠すように垂れさがる幕は、普段見えない「隠された領域」を示す。
足元に置かれた三日月は変化や不安定を示し、衣服の裾の波も同じ意味を持つ。
ここから女教皇のカードには『秘密』という意味が読み取れる。
「この女社長も苦労してるのかもね」
姉ちゃんがかじっていたチョコレートバーを飲み込んで漏らす。
「誠実さだけで世の中渡っていくのも難しいし、ずる賢いばっかりでも信用なくなるし……バランス保つって難しいのよね。些細なことで崩れる不安定っていうの? 絶妙な緊張感がストレスの元凶よ」
姉ちゃんの経験則か、社会人特有の悩みか……女教皇にも見えない苦労があるのかもしれない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「持ってる紙に書かれてる英語……
「そう。法律の書かれた巻物なんだって」
TORAが示すのは英知や学びの大切さ。転じて、勉学に
また神秘的な振る舞いで知性を持つ姿勢が、予言を授ける人や相談者も意味する。
「偉くなっても勉強し続けることが大切ってことだ」
「頼られる存在になると『知らない』って言いにくくなるしね。キャリア詰むほど
しんどいなそれ。勉強は大切だけど、偉い立場の椅子は座り心地が悪そうだ。ちょっと尊敬するよ女教皇様。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『女教皇のカード』まとめ。
正位置で引くと、安定感のある行動が吉。直感や洞察力に冴えている。
逆位置で引くと、心の不安定。精神の乱れが自身の立場を危うくする。
「ってことでしょ」
俺が説明する前にまとめる姉ちゃん。
「並べると気分屋に見えるけど、極端な心の在り方を意識して振る舞うとすれば、表と裏を使いこなす感情の持ち主……女社長、恐るべしね」
「なんでそこまで」
「ディスカッションしながら勉強すれば私も知識を得るわよ。それにカードを読み解くのはちょっと気分転換になる」
言いながらチョコバー(三本目)の封を切る。
勉強し終わったら姉ちゃんの方が詳しくなってたりして……。
※)タロットの絵柄を確認したい方はこちらをご覧くださいませ。
ブログ「やっぱりたけのこぐらし」:大アルカナの絵柄紹介↓
https://takenokogurashi.com/tarot-arcana-big
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