第12話 理想と現実

 結局、全部で二十球ぐらいだったのだろうが、芯で捉えたのは一度も無かった。

この情けない結果に、かなり落ち込んだ。こんなはずではなかった。毎日の素振りを一度も欠かしていないし、スウィングが様になっていると自分では思っていた。やはり何も無い空間をバットで切るのと、ボールにバットを当てるのとでは全然違うということなのだろう。

 機械ではあるが、投げられた球を打つのは今日が初めてだった。三年生が在籍していた時は二、三年だけが練習を行い、一年は球拾いだった。三年が引退し、一年も練習に参加することになったが、まだトスバッティングしかやらせてもらっていない。だからこの無残な結果も仕方ないのだろうが、そうも言っていられない。来年こそはレギュラーになると、前村と約束したからだ。

 バットを元の場所へ戻し深呼吸する。落ち込むのは止めよう。できないなら練習するしかない。早くに、バッティングセンターという施設があるのを知れたのは大きい。毎日通って練習しよう。

 次第にやる気が出てきた。もう一度やろうと思い、勢いよく部屋を出ようとすると、目の前のベンチに座っていた前村と目が合った。俺の不甲斐ない姿を見ていたのだろうか。急に恥ずかしくなった。

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